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第160特殊作戦航空連隊(ナイト・ストーカーズ)の墜落機回収・修理訓練

戦場で実績のある手法の紹介

陸軍少佐 ブランドンW.パリッシュ

地上部隊の回転翼機への依存度がますます高まる中、アフガニスタンの作戦地域における墜落機回収をより確実に実施するため、航空機回収担当部隊の改革の必要性が高まっています。
 航空機の回収作業には、本来、何日間も周到に準備をした上で実施すべきですが、敵情によっては、速やかに回収又は破壊しなければならない場合があります。
 特殊器材を用いた墜落機の回収に重点を置いた訓練を行なっている墜落機修理回復チーム(Downed Aircraft Repair and Recovery Team, DARRT)の存在がなければ、多くの墜落機が回収されずに破壊されてしまっていたことでしょう。2010年5月から2011年12月までの間、第160特殊作戦航空連隊(空挺)第2大隊は、戦闘中に墜落した6機のMH-47Gチヌークを回収するため、DARRTを派遣し、すべての任務を完遂してきました。
 回収された航空機の損傷の程度は様々ですが、機体自体は大きな損傷を免れたものの4つの降着装置を全て喪失したものや、横転して機体のほぼ全体が破壊したものもありました。回収した航空機を全て完全な飛行可能状態に修復できたのは、特殊器材を装備したDARRTが積み重ねてきた訓練の成果であると言えます。

実地訓練

墜落機の回収に広く利用可能な移動式クレーンであるスパイダー・クレーン

回収作業後に実施しているAARでは、今後も任務を完遂してゆくために必要なのは、現在実施している訓練及び特殊器材の維持・整備の継続であるとの結論を得ています。
 第160特殊作戦航空連隊第2大隊D中隊は、毎期ごとに想定に基づいたDARRT訓練を企画・実施しています。
 この訓練は、下士官主導で実施されるものであり、陸軍戦士訓練(Army Warrior Training, AWT)の実施に併せて、過去の実際の墜落機の回収作業から得られた教訓を反映したDARRTの戦術、技術及び手順を修得及び実践させることを目的としています。
 この訓練の主体となる課目は、DARRTの隊員を現地に派遣するという想定に基づき、機体墜落位置までの経路上でAWTに適した状況を付与しながら機動を実施させるものです。
 訓練地域に到着し、破損状況を模擬した航空機又はモックアップを確認したDARRT隊員は、破損状況を診断するとともに、回収に必要な人員・器材の増援について戦術運用センターに連絡します。次に、特殊なDARRT工具セットを使用した回収、野外応急整備要領を用いた細部損傷の発見・修理等を実施します。更に、付与された墜落機の状況に関わらず、全参加者が特殊なDARRT工具セットを取り扱えるように演練します。
 これらの訓練を通じて、スパイダー・クレーン、スチール社製バトルダメージ修復(Battle Damage Assessment and Repair, BDAR)チェーンソー、レスキューテック社製エアバック・システム等のナイト・ストーカーズDARRT工具セットに含まれる特殊・改良型装備品の取扱に関し、状況下又は状況外での各個訓練を実施して、すべての兵士がこれらを取り扱えるようになっています。

特殊装備品

泥濘化した地盤においても、墜落したMH-47を水平状態に持ち上げることが可能なレスキューテック社製エアバッグ

墜落したMH-47チヌークの回収においては、ヘリコプターを用いて吊り上げられるように重量を軽減する必要があります。しかしながら、敵の脅威下において墜落機の吊り上げ準備を行う場合、従来の手法には、効率が悪く時間がかかりすぎるという欠点がありました。
機体重量を軽減するためには、ローター・ブレード、トランスミッション、エンジンなどの主要構成品を機体が損傷しないように取り外すことが重要です。このためには、ヘリコプターで輸送することが可能で、起伏の多い地形においても運用可能で、かつ、墜落したチヌークの最上部まで届く、可搬式クレーンが必要となります。
 民生品であるスパイダー・クレーン(ユニック295ミニクローラー)は、MH-47GのダビットクレーンやCH-47のメンテナンスクレーンが、取り付けポイントの損傷等により使用できない場合でも使用可能です。空輸及び自走が可能なこのクレーンは、使用準備に5人がかりで45分を必要とするダビットクレーンに比べて、短時間で使用準備を完了できるという大きな利点を有しています。1人の兵士で5分以内に使用準備を完了し、運用を開始することが可能であり、準備に必要な隊力を軽減するとともに、敵の脅威にさらされる時間を削減できます。
 一方、スパイダー・クレーンは、作業範囲が小さいため、後部パイロンを取り外すことができないという欠点がありますが、実際の任務は、後部パイロンの取り外しを必要としない任務がほとんどなので、あまり問題とはなりません。
 時間短縮のためのもう一つの民生品活用の装備品として、ローター・ブレード、エンジン等の取り外しを迅速かつ効率的に行うことのできるBDARチェーンソー(スチール社製回転式のこぎり)があります。
 BDARチェーンソーとスパイダー・クレーンとを組み合わせて使用することにより、機体を損傷させずに、安全かつ効率的にローター・ブレードを切り離したり、エンジン・マウントを切断したりすることが可能となります。BDARチェーンソーは、比較的軽量な可搬式器材であり、訓練を適切に実施し、個人用保護具を使用すれば、安全を確保しつつ、効率的に作業を実施することが可能です。
 第160特殊作戦航空連隊(空挺)第2大隊がDARRTツールとして採用している3つ目の民生品は、レスキューテック社製NT8高圧エアバッグ・システムです。このエアバッグは、消防及び救急用途用の昇降装置として設計され、20万ポンド以上の重量物を持ち上げることが可能です。このため、機体のジャッキ・ポイントを支えて、損傷した機体を安定させたり、積み重ねて使用することにより損傷の確認又は修理のため機体を高く持ち上げたりすることができます。このシステムは、人力で運搬可能であり、一般的な窒素ボンベを用いることにより作動させることができます。

DARRT工具セットの主要構成品であるスケッド社製リッタ

 DARRTは、墜落機の回収における問題点を克服し、より積極的に任務を遂行するため、これらの民生品の活用に加えて、各種器材をその本来の目的以外の目的に使用しています。一例としては、スケッド社製リッターを起伏の多い地形において、工具及び器材を迅速に移動するために使用しています。
 ヘリコプターを用いたDARRTの派遣においては、DARRT工具セットを着陸地点から墜落現場まで運搬するため、起伏の激しい経路を何回も往復しなければならず、多くの時間と労力を要する場合がありました。スケッド社のリッター・システムに必要な器材を乗せ、引きずって運搬するようにすれば、器材を損傷することなく、少ない往復回数で運搬することが可能となります。
このリッター・システムは、他のDARRT工具セットと一緒に格納し、墜落事故が発生した場合に速やかに展開・使用できるように準備しています。2個セットのスケッド社製リッターを使用することにより、1個セットのエアバック・システム、2個の窒素ボンベ、BDARチェーンソー及びチヌーク・スリング・キットを運搬することができます。
 本来の目的以外の目的で器材を使用するもう一つの例としては、降着装置が失われた航空機を接地させるための台座としての、積み重ねたトラッド・ボックスで作成した応急機体支持器材があります。
 従来は、マットレスや合板を使用して、着陸装置が破損または欠損している航空機を接地させるための台座を作成していました。しかし、前方運用基地においても容易に入手可能なトラッド・ボックスを使用することにより、常に同じ要領で、短時間で台座を作成し、航空機の重量を支えることができるようになりました。
 トラッド・ボックスを10段に積み重ね、その上にダンボール箱を折りたたんだ状態で置けば、後方降着装置の代わりとすることができます。同じように15段にすると、前方降着装置の代わりとすることができます。積み重ねたトラッド・ボックスを5000ポンド用荷締めバンドで固縛すれば、チヌークの重量を安全に支えることが可能です。
 戦闘状況下で墜落機の回収を過去2年間にわたって成功させてきた決定的な要因は、技術の革新、特殊な器材及び 第160特殊作戦航空連隊第2大隊D中隊が重視して実施してきた訓練の成果であると言えます。
これまでに回収された航空機がすべて完全修復され、任務に使用されていることは、ナイト・ストーカーズの技術革新と創意がもたらした成果です。今後も、ナイト・ストーカーズは、例え戦闘中であっても、引き続き開発、調達、訓練及び運用に全力を尽くしてゆくことでしょう。

 Night Stalkers Don’t Quit!(ナイト・ストーカーズは諦めない!)

陸軍少佐ブランドン・パリッシュは、ケンタッキー州フォート・キャンプベル所在の第160特殊作戦航空連隊(空挺)第2大隊D中隊の指揮官です。

出典:ARMY AVIATION, June 2012, Army Aviation Association of America

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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