AVIATION ASSETS

陸上航空の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

2017年度陸軍航空事故発生状況

准将 デービッド・J・フランシス

FY17 State of Army Aviation Safety

陸軍航空は、ますます過酷かつ敵対的となる環境の中、およそ17年間にわたって、世界中の地域に継続的に派遣されながら厳しい訓練を続けてきた。各級指揮官、操縦士、整備員および支援要員は、この過去に例を見ないOPTEMPO(operational tempo, 国外展開頻度)を、あたりまえのものと感じるようになってきているが、ここに至るまでには、安全や即応性に関わるさまざまな問題を克服し続けてきたのである。米陸軍戦闘即応センター(U.S. Army Combat Readiness Center)は、中・長期の事故発生の傾向に関する理解を深めるため、2008年度以降の航空安全を巡る状況について包括的な見直しを行いつつ、2017年度陸軍安全プログラムの年次評価を行った。

幸いなことに、不朽の自由作戦およびイラクの自由作戦の間に急増したクラスA事故や死亡事故の発生件数は、今日、かつてないほどの低いレベルに抑えられている。2008年度から20017年度までの間、クラスAの有人機事故の100,000時間あたりの発生件数(事故発生率)は1.33であったが、直近の5ヵ年度間(2013年度から20017年度)には1.14まで低下し、2016年度および2017年度においては1.0以下となった。
しかしながら、20017年度における全航空事故の80%は、ヒューマンエラーによるものであり、依然として有人機事故の最大の原因要素であり続けている。このヒューマンエラーの中には、自信過剰、自己満足、クルー・コーディネーションの不適切、任務計画の不適切、および定められた手順の不履行などが含まれている。

有人機

2017年度、陸軍全体においては、76件のクラスAからCの有人機事故が発生し、そのうちの9件がクラスA事故で10名が死亡し、事故発生率は0.99であった。これに対し、2016年度には、クラスAからCの事故が73件発生し、そのうち8件がクラスA事故で8名が死亡し、事故発生率は0.87であった。4件のUH-60事故および1件のAH-64事故により、10名が死亡している。クラスA事故のうち、6件は夜間に発生し、3件は昼間に発生している。また、6件は国内において発生し、3件は海外派遣中に発生している。さらに、6件はヒューマン・エラーが直接的な原因であった。2017年度の有人機の事故発生率は、対前年比では若干の増加があったものの、ほぼ過去最低であり、事故要因に新たなものは見られなかった。
クラスBの有人機事故は、2016年度よりもわずかに減少し(12件から11件)、10件が飛行中に発生し、1件が地上において発生した。そのうちの3件が夜間に発生し、8件が昼間に発生した。クラスCの事故は56件発生し(45件が飛行中、3件が飛行関連、および8件が地上)、45件が昼間に、11件が夜間に発生している。原因要素としては、32件がヒューマン・エラー、3件が環境、21件が原因不明などであった。
図1は、2008年度から2017年度のクラスAからCの有人機に関する事故発生率を示している。図2から図4は、過去5年間の機種別の事故発生率を示している。

AH-64:2017年度に陸軍全体で2件のクラスA、3件のクラスB、および7件のクラスC事故が発生し、クラスAの100,000飛行時間あたりの事故発生件数(事故発生率)は1.44で、クラスAからCの事故発生率は7.19であった。過去5年間のクラスAの事故発生率は2.09であり、クラスAからCは6.67であった(図2)。

UH-60:2017年度に陸軍全体で7件のクラスA事故、4件のクラスB事故、および30件のクラスC事故が発生し、クラスAの事故発生率は2.00であり、クラスAからCは9.44であった。過去5年間のクラスA事故発生率は1.32であり、クラスAからCは6.78であった(図3)。

CH-47:2017年度に陸軍全体で0件のクラスA事故が発生し、クラスAの事故発生率は0.00であった。しかし、2017年度には、2件のクラスBと5件のクラスC事故が発生し、クラスAからCの事故発生率は9.15であった。また、過去5年間のクラスAの事故発生率は1.03であり、クラスAからCの事故発生率は8.21であった(図4)。

全機種を通じて、2017年度のクラスAおよびクラスBの有人機事故のうち4件がDVE(degraded visual environments, 悪視程環境)において発生した。

2002年以降、UH-60およびCH-47のクラスAおよびB事故の原因の30パーセント以上をDVEが占めている。過去5年間において、DVEによるクラスA事故が10件発生し、24名の隊員が死亡した。過去5年間の事故のうち59パーセントには、ブランアウトが関連しており、2017年度においても3件の事故がそれに関連して発生している。また、低照度/低コントラスト環境によるDVEに関連したクラスA事故も1件発生しており、搭乗員が空間識失調に陥って墜落し、5名が死亡している。

ヒューマン・エラーのひとつであるクルー・コーディネーションの不適切は、2017年度のクラスA事故の約32パーセントに関連している。クルー・コーディネーションが原因のクラスA事故は、3件であり、搭乗員間のコミュニケーションや重要な情報の伝達の不適切などによるものであった。

無人機

2017年度のクラスAからCの無人機事故は、35パーセント増加し、前年度の55件よりも多い74件の事故が発生した。クラスAの事故発生率は、12.41であった。2017年度、MQ-1Cグレイ・イーグルのクラスA事故は49パーセント減少したが、RQ-7BシャドゥのクラスBからCの発生率は、主として器材上の不具合の発生により、過去2年間で49パーセント増加した。2008年度から2017年度までの10年間に、陸軍全体で627件のクラスAからCの無人機事故が発生しており、MQ-1およびMQ-5(クラスA事故に該当する可能性のある機体価格を超える機体)のクラスAの事故発生率は10.17であった。過去10年間のMQ-1、MQ-5およびMQ-7を合わせたクラスAからCの事故発生率は、35.25であった。

MQ-1Cグレイ・イーグル:2017年度に15件のクラスAからCの事故が発生した(図5)。その内訳は、クラスAが9件、クラスBが2件およびCが4件であった。クラスAの事故発生率は、10.03であり、2016年度から49パーセント減少している。53パーセントの事故にヒューマン・エラーが関連しており、器材上の不具合によるものが41パーセント、環境要因によるものが7パーセント、原因不明などが7パーセントであった。

RQ-7Bシャドゥ(機体価格がクラスA事故に該当せず):2017年度に陸軍全体で15件のクラスBと37件のクラスC事故が発生した。

これらの事故の約71パーセントは、器材上の不具合に起因するものであり、19パーセントがヒューマン・エラー、2パーセントが環境要因、8パーセントが原因不明などであった。図6は、飛行時間とクラスBからCの事故発生率を示している。エアロスタット:2017年度に6件のクラスA事故と1件のクラスC事故が発生している。主だった原因要素は、環境要因(強風など)であると考えられている。

無人機事故における主要な原因要素ではないが、ヒューマン・エラーも、多くの無人機の損失をもたらしている。この要素には、適切な手順に従わなかったもの、整備上のエラーおよび監督不適切などが含まれている。ヒューマン・エラーを防止するための最善の方策は、手順とチェックリストを適切に使用して任務を遂行し、練成訓練を充実させ、適格性を有する監督者を育成することである。

継続的な取り組み

米陸軍航空センター(U.S. Army Aviation Center of Excellence)は、標準的な航空用戦術SOP(standard operating procedures, 作戦規定)を作り上げ、航空科職種における共通的な運用手順を確立しようとしている。
運用におけるリスク・マネジメントを含んだ、運用手順における緊要な要素の標準化は、部隊間の相互運用性を向上させ、地上部隊に対する支援を充実させ、任務の計画および実行に伴うリスクを軽減することであろう。

米陸軍戦闘即応センターは、プログラム・エクゼクティブ・オフィサー(航空)(Program Executive Office-Aviation )との連携を維持しつつ、現在、試験中の新しい航空データ活用能力プログラム(Aviation Data Exploitation Capability Program)に関し、SAP-A(Safety Awareness Program-Aviation, 安全認識プログラム(航空))への協力を続けている。

安全性を向上させるための事前危険報告プログラムであるSAP-Aは、危険な行為を自発的に報告させるため、多くの航空会社が採用している類似のシステムをモデルにした匿名の自己報告プログラムである。この匿名の報告を把握した指揮官は、そのデータを安全意識の高揚と危険性の高い行為の防止に役立てることができる。SAP-Aは、2018年度の装備化を目標として整備が進められている。

不朽の関心事項:地上および課業外

飛行任務が本質的に危険性を有しているものであるために、航空科部隊の指揮官は、生来的に航空に関するリスク・マネジメントに集中しがちである。しかしながら、車両操縦などにおける地上での事故の危険性を無視することはできない。課業内外に関わらず、車両事故は、陸軍全体の事故における最大の死亡原因であり、航空科部隊は他の地上部隊と比べて運用する車両も多いのである。指揮官にとって、車両操縦訓練は、非常に大きな利益をもたらすものであり、課業中の車両運用だけではなく、私有車やオートバイも重視する必要がある。

結 論

2017年度の事故発生状況は、リスク・マネジメントに関する指揮官や兵士たちの努力を反映したものであるが、事故における主要な原因要素であるヒューマン・エラーの根絶に向けて更なる挑戦を続けなければならない。

即応態勢を充実し、事故をさらに減少させるため、指揮官たちに次の事項を強調したい。

計画段階においては、適格な任務担当将校を選定し、活用するとともに、経験に応じた搭乗員の選定および配置を行うなど、任務承認およびリスク・マネジメント手順の実行に意を払うことが大きな配当金をもたらす。飛行任務の実施においては、最近の事故および不安全から得られた教訓をクルー・コーディネーションの訓練に活かすことと、DVEにおける飛行手順を予行することの2点は、大きな利益をもたらすものとして焦点をあてるべき事項である。特に、車両操縦手の訓練に重点を置くことは、指揮官にとって、地上での作戦間におけるリスクを低減するための最善の戦略である。

Readiness through Safety!(即応の基本は、安全の確保!)

准将デービッド・J・フランシスは、陸軍安全部長であり、アラバマ州フォート・ラッカーに所在する米陸軍戦闘即応/安全センターの司令官である。

訳者注:米国の会計年度の開始は10月、終了は9月であり、終了時の年で呼ばれます。また、米国陸軍の航空事故の区分は、概ね次のとおりです(AR 385-10、2013年11月改正)。
クラスA- 200万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスB- 50万ドル以上200万ドル未満の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病、又は3人以上の入院を伴う事故
クラスC- 5万ドル以上50万ドル未満の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスD- 2千ドル以上5万ドル未満の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病等を伴う事故
クラスE- 2千ドル未満の損害を伴う事故
クラスF- 回避不可能なエンジン内外の異物によるエンジン(APUを除く)の損傷

出典:ARMY AVIATION, March 31, 2018, Army Aviation Association of America

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    匿名の報告を行うためのツールの導入や車両操縦の重視は、大事な観点だと思いました。