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テクニカルトーク:ブラックホーク用改善型テールローター

軍属 ケビン・リーブス

The Improved Black Hawk Tail-Rotor
The Improved Black Hawk Tail Rotor

時刻は0300。貴官は、偵察に任ずる小部隊を潜入させるため、山岳地帯のLZ(landing zone, 降着地域)に低空で進入している。夏の高温環境の中、大きな全備重量(gross weight, GW)で高高度を飛行しなければならない。
LZの特性上、進入方向が制約されているため、右後方からの風が卓越している。コレクティブを引いたとき、ペダルを目一杯に踏み込んでも、機体のヨーイングが止まらなくなる。このため、さらに燃料を消費するまで、着陸を延期することになる。
テールローター・マージンの不足は、高温かつ高高度における任務に、このような影響を及ぼすのである。
YT-706やITE(Improved Turbine Engine, 改善型タービン・エンジン)などの、出力が増加した新型エンジンを搭載したブラックホークは、高温かつ高高度での性能が目覚ましく向上するものと見込まれるが、その一方で、航空機の全備重量の増加と高密度高度(density altitude, DA)における運用の増加により、従来のテールローター設計がもたらす空気力学的な制約が顕著化すると考えられる。
テールローター・オーソリティーの不足という実運用上の問題点に対しては、いくつかの技術的解決案が考えられるが、最も有望なものは、テールローター効率の向上である。
ロッキード・マーチンの傘下にあるシコルスキー社は、陸軍のH-60ヘリコプター用のIBTR(Improved Black Hawk Tail Rotor, ブラックホーク用改善型テールローター)の設計を受注した。それは、S-76Dに用いられている翼形をUH-60Mの既存のテールローター・スパーに適用することにより、テールローター性能の向上を図ろうとするものである。IBTRは、既存のブラックホーク用テールローターの翼形に、より先進的な翼形を付け加えた形状をしている。
また、新たな翼形に加えて、スパン中央付近からチップにかけてのコード寸法の増加により、プレード表面積が増加している。
シコルスキー社は、CRADA(Cooperative Research And Development Agreement, 共同研究開発協定)に基づき、ARMDEC(Aviation & Missile Research, Development & Engineering Center, 航空・ミサイル研究開発技術センター)のAATD(Aviation Applied Technology Directorate, 航空応用技術管理部)と協力し、この新しい設計コンセプトを確立した。TAPO(Technology Applications Programs Office, 技術利用プログラム・オフィス)は、アラバマ州レッドストーン工廠におけるIBTR試験飛行の実施に必要な、計測機器を搭載したMH-60Mを提供した。
RTC(Redstone Test Center, レッドストーン試験センター)のAFTD(Aviation Flight Test Directorate, 航空試験飛行部局)は、経験豊富なテスト・パイロットを差し出した。また、LMC(Lockheed Martin Corporation, ロッキード・マーチン社)は、試験飛行計画の作成および整備の支援を行った。AEDは、この試験プログラムを所掌する耐空性承認機関として、飛行試験要求事項の明確化、技術データの提出、および試験飛行の実施に必要なAWR(airworthiness release, 耐空性改善通報)の認可を行った。なお、このAWRは、その対象を研究開発プログラムに限定しており、IBTRを完全に認定するものではない。AEDは、提出された技術データを審査し、毎週行われる試験飛行のためのTIM(technical interchange meeting, 技術交流会議)に参加した。
それらの技術データは、すべて、限定的な試験飛行用AWRに示された基準を満足するものであった。
2017年8月に開始された飛行試験は、地上試運転、テールローターのリギング、IBTRの地上バランシングおよび計器確認および整備確認飛行で構成されていた。その後、MH-60Mの飛行エンベロープの余裕、低速度飛行時の操縦感覚、ホバリング限界などの試験項目が追加されたIBTR試験は、2017年11月に終了した。
AEDおよびTAPOは、現在、試験飛行報告の評価を実施中である。IBTRのテールローター・リギング・アングルに関しては、テールローター効率を向上させるため、さらなる調整が行われる予定である。IBTRをMH-60Mで用いることによる構造的な問題や異状は、確認されなかった。ただし、テールローター・ドライブシャフトは、機動の状況によっては、安全率を考慮した試験飛行限界に達する場合があった。
IBTRの全般的評価は良好であったが、妥当性を判断するためには、夏のコロラド州レッドビルやアラモーサでの最大運用全備重量試験など、高高度、高高温および重荷重状態でのIBTR飛行試験の追加実施が必要であろう。
多くの陸軍航空の任務において、より高い高度および温度における最大全備重量での運用が必要となる中、IBTRは、すべてのH-60航空機に恩恵をもたらす潜在的能力を有している。
今後は、試験結果の評価を継続し、IBTRの完全な評価プログラムを開始するかどうかを決定する予定である。
PMO(Program Management Office, プログラム・マネージャー・オフィス)は、AED設計試験チームと協力し、IBTRの装備化に向けた、より大規模な評価プログラムを開始すべきかどうかについて査定することになるであろう。
ケビン・リーブスは、アラバマ州レッドストーン工廠にある米陸軍航空およびミサイル研究、開発及び工学センターの航空設計部局SOAD(特殊作戦航空部)において、MH-60プログラムの耐空性に関する技術的支援を行っている航空宇宙システム技術者である。

出典:ARMY AVIATION, June 2018, Army Aviation Association of America

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    今後は、「出典」に原文へのリンクを追加するようにしたいと思います。