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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

ブラックホークの事故発生状況

陸軍中佐 マイク・ヒギンボサム
米陸軍コンバット・レディネス・センター フューチャー・オペレーション航空部長
email: michael.d.higginbotham.mil@mail.mil

今月号の「フライトファックス」では、引き続き過去5年間の事故発生状況を確認したいと思います。今月は、UH-60の事故発生状況です。米陸軍の航空機において過去に発生した事故の傾向を把握することは、機種に関わらず、リスクを評価し、対策を検討する上で重要なことであると考えています。
 評価標準化部(Directorate of Evaluation and Standardization, DES)は、メインテナンス・オフィサーに対する部内教育を実施し、グランド・タクシー間の事故に関する討議を行って、UH-60の安全確保について検討するとともに、冬季の到来にともない、降雪環境下での飛行に関する過去の記事の見直しを行ないました。今回の記事には、その成果を反映させていますのでご確認ください。
 それでは、良い休暇をお過ごしください。来月まで、飛行安全の確保とリスク・レベルの管理が適切に行われることを祈っています。

UH-60シリーズにおいては、2010年度から2014年度までの5年間(飛行時間212万時間以上)で163件のクラスAからCの航空事故が発生している。このうち、クラスAの事故は24件、クラスBは22件、およびクラスCは117件であり、航空機の損傷や人員の負傷で137百万ドルの損害をもたらした。また、33名の人命が失われた。
10万飛行時間あたりのクラスA事故の発生率は、1.04だった。クラスA事故の最大の要因はヒューマン・エラーで、これによる事故は22件(92%)であり、器材上の要因によるものは1件(4%)、環境要因によるものも1件(4%)であった。これらの事故の内2件は、飛行に関連する事故(航空機から降り立った人員がブレードに接触したもの及び飛散した木片が兵士に当たったもの)であった。発生頻度の高いタイプの事故の概要は、次のとおりである。

悪視程環境(DVE)

22件のクラスA事故のうち8件(36%)は、悪視程環境 (Degraded Visual Environment, DVE)に関連した事故であり、18名が死亡した。

事例1 管制塔との接触

地面効果外ホバリングからNVGを使用した離陸を実施中、ダストの中から上昇しながら前進したところ、ローター回転数が低下し始めた。高度を維持できなくなった事故機は、ダストの中を前進しながら降下し、管制塔に激突して墜落した。9名の兵士が重傷を負い、1名が死亡した。機体は破壊した。

事例2 空間識失調

地上1,200フィートを単縦陣編隊でNVGを使用しながら飛行中、右旋回中に機体姿勢を把握できなくなった。航空機は回復不可能な姿勢となり、逆さまに地面に激突し、5人の搭乗員全員が死亡した。機体は破壊した。当時の状況は、灯火が全くなく、地形の見え方も不明瞭であった。

事例3 空間識失調

NVGを使用した緊急患者後送任務を遂行するため、僚機として飛行中、操縦中の操縦士が姿勢感覚を喪失し回復できない状態となった。離陸直後から無意識に徐々に左旋回に入り始め、じ後、次第に急激な旋回に入り、約110度の左バンク状態となって、回復操作が困難な高度まで機首下げ状態で急降下した。航空機は地面に激突し、4名の搭乗員全員が死亡した。機体は破壊した。事故当時は、灯火が全くなく、地形の見え方も不明瞭な視界制限状態であった。

事例4 分岐点への進入

灯火がなく、地形の見え方が不明瞭な状態において、NGVを用いた攻撃任務を実施中、地上270フィートの高度から、1,000フィート/分を超える降下率で約10秒間降下した。地面に激突した機体は完全に破壊し、4名が死亡、11名が負傷した。コックピットの計器を十分に確認していなかったため、機体が降下していることを認識できなかった。

事例5 砂漠でのアプローチ

月齢ゼロで人工的照明がない状態で、舗装されていない砂漠の着陸地点にNVGを使用したVMCアプローチを行っていたところ、地面に激突、横転した。尾輪が地面に接触し、横向きの力が作用して、右ランディング・ギア・ストラット及びドラッグ・ブレースが機体から破断した。機体は破壊し、1名の兵士が死亡、4名が軽傷を負った。着陸地点に注意を集中していたため、機体の降下率、地面への接近及び横滑りを適切に把握できなかった。

グランド・タクシー中の事故

グランド・タクシー中に4件のクラスA事故及び7件のクラスB事故が発生した。これは41件のクラスA及びB事故の27%を占めている。

事例1 グランド・タクシー

昼間にVMCで燃料補給点へ向かってグランド・タクシーを行っていたところ、メイン・ローター・ブレードが格納庫のドアに接触した。航空機は、さらに前進を続け、(格納庫の角に位置する)桁にも接触し、4枚のメイン・ローター・ブレードが破断して機体に重大な損傷をもたらすとともに、2棟の民間格納庫及び3機の民間機に損傷を与えた。チェックリストの読み上げとグランド・タクシー(機内と機外)に注意を分散していたため、危険な状況を認識できなかった。

事例2 グランド・タクシー

2機編隊がグランド・タクシーを実施中、1番機がメイン・ローター・システムを照明用ポールに接触させた。グラスファイバー製のポールは、粉砕・分断し、飛散した残骸が、2番機及び駐機中の固定翼機(1機の空軍練習機及び2機の小型民間ジェット)に損傷を与えた。さらに、飛散した破片により一般市民が負傷し、基地が運用停止状態となった。

事例3 グランド・タクシー

ランプをタクシー中、メイン・ローター・システムがコンクリート製のT型仮設塀に接触した。4枚のメイン・ローター・ブレード及びテール・ローターのリーディング・エッジが損傷し、飛散した破片によりスタビレーターが損傷した。さらに、駐機していたグレー・イーグル(無人偵察機)及びGDT(Ground Data Terminal, 地上データ端末)装置に巻き添え損害を生じさせた。

事例4 グランド・タクシー

2機編隊の1番機が競技場ライトで照明された路面標示があるタクシー・ウェイを夜間に誘導なしでグランド・タクシー中、停止していた2番機のメイン・ローター・ブレードにメイン・ローター・ブレードを接触させた。この接触により、2番機は左に約45度旋回し、そのテール・ローター・ブレードが1番機のメイン・ローター・ブレードに接触した。一連のブレード・ストライクにより、合計8枚のメイン・ローター・ブレードに重大な損傷が発生し、2番機の4枚のテール・ローター・ブレード及び1番機の2枚のテール・ローター・ブレードが損傷するとともに、飛散した破片により機体が損傷した。負傷者は、発生しなかった。1番機の操縦士は、搭乗員及び僚機に対し「2番機の側方(右後)にタクシーする。」という意図を伝達できておらず、かつ、停止している航空機に接近しすぎていることを認識できなかった。

パワー・マネジメント

パワー・マネジメントに関しては、5件のクラスA事故及び2件のクラスB事故が発生した。

事例1 パワー・マネジメント

空中機動を実施中、着陸直前に計器がTGTの上昇とNrのドループを表示していることに気づいた。航空機は急降下し、ハード・ランディングした。機体およびテール・ブームに重大な損傷が生じた。

事例2 高高度

昼間、平均海面高度14,200フィートのヘリ着陸点にVMCアプローチを実施中、機体の沈下を止めようとしてパワーを使用したが、メイン・ローター回転数が通常運用範囲以下にドループし、岩に覆われた山岳地帯に落着した。2名の搭乗員が軽傷を負い、損傷した航空機は、じ後、現地において破壊された。出力維持が困難な環境条件により、利用可能馬力が必要馬力を下回ったものと推定される。

事例3 パワー・マネジメント

山頂の着陸帯からNVGを使用してゴー・アラウンドしようとして離陸し始めたところ、サイクリックの前方向への操作及びコレクティブの引き上げを過度に行ったため、19度のノーズ・ダウン状態で降下し始めた。コレクティブ・パワーをさらに使用したことにより、ローター回転数が低下して航空機が降下し、岩石に覆われた地面に機首から激突した。機体は完全に破壊され、10名が死亡、2名が負傷した。

ブレード・ストライク

5件のクラスA及び7件のクラスBの物件へのブレードの衝突事故が発生した。

事例1 地形との衝突

演習場内の人工的に作ったピナクル(狭隘な山頂部)に隣接する未舗装の道路にNVGを使用して着陸進入中、メイン・ローター・ブレードが地上20フィートのピナクルの斜面に接触した。操縦士は、機体を前進させながら道路に着陸し、エンジンを停止した。4本すべてのメイン・ローター・ブレード、バーチカル・スタビライザー及びテールパイロンが損傷し、テール・ドライブ・シャフトにも損傷が生じた。負傷者は、なかった。

事例2 人員に対するブレード・ストライク

ピナクル(狭隘な山頂部)へのシングル・ホィール・ランディングを実施し、搭乗人員を卸下したところ、地元の通訳要員がヘルメットをメイン・ローターに接触させ、重傷を負った。4本すべてのメイン・ローター・ブレードに軽微な損傷が発生した。

事例3 人員の卸下

作戦行動のため、NVGを使用した患者空輸を実施中、ヘリコプター着陸場(Helicopter Landing Zone, HLZ)に前輪のみのピナクル・ランディング(狭隘な山頂等の狭隘な着陸場への着陸)を行った後、搭乗救護員(フライト・メディック)がローター・ディスク・エリアに再進入して1枚のメイン・ローター・ブレードに新戦闘ヘルメット(Advanced Combat Helmet, ARH)を接触させ、死亡した。ローター・ディスクは、12時から2時の方向で非常に低くなっていた。搭乗救護員は、ローター・ディスク・エリアから一旦離脱し再進入する際、操縦士との確実な双方向の意思疎通を実施せず、操縦士の進入許可を受けずにローター・ディスク内に進入していた。

事例4 ブレード・ストライク-人員卸下時

傾斜のある地形に設定されたヘリコプター着陸場において、地元の通訳がローター回転中の航空機に搭乗する際に方向を見失って立ち上がり、回転中のロ-ター・ブレードの中に後ろ向きに進入した。

事例5 船上での運用

ファスト・ロープを使用した船舶への夜間侵入訓練を実施中、メイン・ローター・システムが船の排気筒に接触し、40フィート下の船のデッキに落着した。1名の搭乗員が死亡し、他の9名の人員が負傷するとともに、火災により機体の構造フレームが損傷した。

事例6 ドライブ・シャフトの衝突

進入末期に異常な振動が感じられたため、緊急停止を行ってから点検したところ、ドライブ・シャフトのNo.3セクションがメイン・ロ-ター・ブレードとの接触により喪失していた。

事例7 ワイヤー・ストライク

承認された訓練ルートにおいて低高度のNVG訓練を実施中、WSPS (Wire Strike Protection System, ワイヤー・ストライク・プロテクション・システム) を送電線に接触させた。航空機の損傷は軽微であったが、送電線への衝突により一帯が停電し、事故に関連する損害を生じさせた。

器材に起因する事故

事例 テール・ローター

NVGを使用した訓練飛行における進入中、地上80フィートにおいて、テール・ローター・ピッチ・チェンジ・シャフトに不具合が発生した。この不具合により、同シャフトとテール・ローター・サーボの接続が失われ、テール・ローターのピッチ角が中立になり、操縦系統の操作に反応しなくなった。航空機は制御できない右方向のヨーイングに入って地面に激突し、機体を破壊した。2名の搭乗員が重傷を負い、1名の搭乗員が死亡した。

その他

事例1 飛行関連事故

ホイスト訓練をビデオ及び写真で撮影していた兵士が死亡した。その兵士は、離陸中の航空機のダウン・ウォッシュで飛ばされた樹木の枝により頭部を叩かれたものと考えられる。

事例2 地上運転

試運転中、双方のパワー・コントロール・レバーをアイドル・デテントから前方に操作したところ、システムがロック・アウト・モードとなった。12秒以上にわたって120%のオーバー・スピード状態が発生した。

要 約

16件(67%)のクラスA事故が夜間のNVG飛行中に発生し、16件(67%)が「不朽の自由作戦」又は「イラクの自由作戦」において発生している。クラスB事故には、7件のグランド・タクシー中の事故、5件のブレード・ストライク、2件のパワー・マネジメント、2件の悪視程環境、2件のハード・ランディング、1件のワイヤー・ストライク、1件のNpオーバー・スピード及び2件の飛行関連事故(ミニ・ガン運用中の兵士の負傷及びダウン・ウォッシュによるUAVの着陸妨害)があった。
事故防止のためのより詳細な情報は、各部隊の安全将校がsafety.army.milのウェブサイトのリスク管理情報システムにアクセスすることで入手可能である。なお、本システムの利用には、利用者登録が必要である。

訳者注:米国陸軍の航空事故の区分(2013年11月改正)は、概ね次のとおりです(AR 385-10)。
クラスA- 200万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスB- 50万ドル以上200万ドル未満の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは公務上の疾病、又は3人以上の入院を伴う事故
クラスC- 5万ドル以上50万ドル未満の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは公務上の疾病を伴う事故
クラスD- 2万ドル以上5万ドル未満の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病等を伴う事故
クラスE aviation accident- 5千ドル以上2万ドル未満の損害を伴う事故
クラスF aviation incideent-回避困難なエンジン内外の異物によるエンジン(APUを除く)の損傷を伴う航空インシデント
出典:FLIGHTFAX, No.44 December 2014, U.S. Army Combat Readiness Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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