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整備実施規定に基づく整備とUH-72

上級准尉5 ジョセフ・T・ウィットマー
第28指揮統制航空大隊航空安全将校

UH-72の州兵部隊への配備に伴い、従来の陸軍の整備要領と民間機のスタイルとの違いに慣れつつあります。米陸軍の整備にはテクニカル・マニュアル(TM)を使用するのに対し、民間機には航空機整備マニュアル(AMM)を使用しています。UH-72においても、我々が装備している他の新しい航空機と同じく、機体及びエンジンの設計に関わる軽易な不具合が発見されることがあります。また、マニュアルの記述要領の違いが整備員に混乱をもたらす場合もあります。
 部隊の航空安全将校である私は、搭乗員及び整備員と共に安全確保に努力しなければならないと考えています。テスト・パイロットでない私は、FAAの耐空証明を有する航空機の整備実施要領と他の航空機との違いを認識するのに、長い時間を要してしまいました。
 現在も、今までとは違った新しい航空機整備マニュアルの読み方を勉強しているところです。皆さんは、「マニュアルなんてどれも同じだ」と思うかもしれませんが、そうではないのです。
 我々の部隊で保有しているUH-72ラコタにおいて、単純に思える整備作業で不安全を発生させてしまいました。そこから、学んだことを皆さんに紹介したいと思います。
 朝礼後すぐに、コーヒーを手に持ちながら格納庫の中を歩いていた私は、昨夜の夜間飛行中にフィラー・キャップが落下したUH-72Aの中間ギアボックスを見るように頼まれました。フィラー・キャップを点検した私は、完全な学習モードに入りました。UH-72のキャップは、我々が慣れ親しんでいるUH-60、CH-47及びAH-64のそれとは、全く異なっていたのです。UH-60の教官操縦士であり、安全幹部だった私は、「ギアボックスの給油は、どのくらいの頻度でどのように行わなければならないのか?」という質問を受けたことが何度かあります。UH-72は、UH-60とは違って定期的な給油が不要であり、更に、うかつなことに他の陸軍機では要求されていない特別な要求事項があることを認識していませんでした。給油のためにキャップを外すたびに、フィラー・キャップの末端にある小さなOリングを交換することが要求されていたのです。
 UH-72部隊の教官パイロット兼航空安全幹部であるブレイク上級准尉は、この要求事項について細部を確認し、整備員に再教育してくれました。我々は、整備マニュアル(AMM 65-32-00、3-2)を再確認し、給油時の作業手順としてOリングの取外及び新品の取付が要求されていることを確認しました。通常、この種の不具合は、不安全調査報告書を提出し、再教育を実施するだけで終了するものです。しかし、私は、この明確に要求されている単純な手順が「なぜ」抜けてしまったのかを知りたいと思ったのです。それは単純な個人の失敗だったのでしょうか?それとも、もっと深い何かがあったのでしょうか? 私は、私達の部隊の整備員とUH-72Aを装備している他の部隊の整備員とのミーティングを開き、キャップを取り外すたびにOリングを交換しなければならないという要求事項を知っているかどうか確認しました。驚いたことに、私達の部隊と同じように、この要求事項を知らない部隊があったのです。
 さて、この要求事項は、どのようにして見過ごされてしまったのでしょうか? この手順は、整備マニュアルに明確に記載されています。Oリングはすぐに受領できるようになっており、担当した整備員は完全な資格を有する航空整備員でした。頻繁に格納庫を歩きまわっている私は、整備員が航空機を整備している際には、いつも整備マニュアルが置かれているのを確認しています。しかし、複数の機種を担当している整備員にOリングの交換について質問してみると、大半の整備員の答えは、「Oリングに損傷がないか点検し、損傷がなければ、再使用する」というものでした。
 航空科部隊においては、常日頃から「整備実施規定に基づく整備」が教育されています。本事例は、その教育がとても重要なものであることを示す一例です。本件は、「ある部隊のある整備員に起こった1件の事例に過ぎない」と言いたいところですが、そうではありませんでした。何件かの電話確認やミーティングにより、本件は、我々の部隊だけの問題でなないことが明らかとなったのです。新しい機体や新しいマニュアルに慣熟するまでには、本件以外についても多くの発見があるはずです。従来の陸軍テクニカル・マニュアルから民間スタイルの航空整備マニュアルへの転換にしっかりと対応することが必要です。

出典:FLIGHTFAX, No.45 January 2015, U.S. Army Combat Readiness Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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