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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

2005年度米陸軍航空事故発生状況の概要

チャリシー・ライル
米陸軍コンバット・レディネス・センター


米陸軍は、今年度も引き続きOEF(Operations Enduring Freedom、不屈の自由作戦)及びOIF(Operations Iraqi Freedom、イラクの自由作戦)等の危険性の高い任務を遂行してきた。このような中、航空機同士の空中衝突及びIIMC(Inadvertent Instrument Meteorological Conditions, 予期していなかった天候急変等による計器飛行状態)への対応不適切に起因する航空事故については、引き続き発生しているものの、ブラウン・アウトに関連する航空事故は、紛争開始当時と比較して劇的に減少した。このことは、操縦士等の戦場経験の増加と安全確保のための各種統制の成果の表れであると考えられる。

陸軍航空全体としては、2005年度にクラスAからCに属する事故が123件発生し、これらにより2億ドルを超える損失があった。これらの事故のうち、OEF及びOIFで発生した事故は、39パーセントであった。クラスAの航空事故は、2004年度より7件増加の31件であり、兵士の死亡者数は12名から35名に増加し、約3倍となった。これらの死亡者のうち63パーセントは、多数の人員を空輸中のチヌークとブラックホークがIIMCへの対応の不適切が原因の2件の事故で発生した。また、単位飛行時間当たりのクラスA事故の発生率も若干増加した(2004年度は2.2件/10万飛行時間であったが、2005年度は2.8件/10万飛行時間であった)。
 2005年度のクラスAの事故のおよそ半分と死亡者の半分以上(65パーセント)は、OEF及びOIFで発生したものである。これらには、2件の空中衝突、1件のワイヤー・ストライク、1件の不必要な攻撃的機動による地面への激突、1件のIIMCに関連する事故及び1件のブラウン・アウトによる事故が含まれている。

各機種の事故発生件数

グラフは、各機種毎の事故の程度区分別の発生件数を示している。以下、これらの事故のうち、主要なものについて説明する。


AH-64アパッチ(28パーセント)

アパッチは、全機種の中でクラスA事故が1番多く、クラスAからCの総事故件数は2番目に多かった。これらの中には、アパッチが他の運行中の航空機の上に着陸するという事故が2件含まれている。
 また、不適切なクルー・コーディネーションによる事故も2件発生している。そのうちの1件は、操縦士が2人とも操縦しておらず、また、もう1件は、2人の操縦士がそれぞれ反対方向に操縦桿を動かそうとしていた。
 あるクラスA事故は、低高度、高密度、重荷重の状態において、バンク角を過度に設定したために発生した。また、別のクラスA事故は、前席に位置した操縦士の安全ベルトのバックル固定不良により、急旋回の終末に、前席の操縦士の身体が前方に投げ出され、操縦をしていた後席の操縦士がサイクリックを後方へ操作することができず、森林に墜落したものであった。
 もう1件のクラスAの事故は、連続射撃を終了し、離脱中のAH-64Dで発生した。後席で操縦をしていた操縦士は、旋回中の緊要な時期に、武装システムをセーフティー状態に切り替えようとして操縦席内部に注意を向けてしまった。この操縦士の習性が本事故の一つの要因となった可能性が考えられる。その操縦士は、AH-64Dに機種転換する前は、AH-64Aに搭乗していた。A型の場合、武装システムの切り替えスイッチが後席にしか装備されていなかったため、D型においても自分が切り替えなければならないと勘違いしてしまった可能性がある。また、この他にも、2つの要因が考えられる。まず第1に、地形の見え方が不明瞭であったこと及び地形の識別が不十分であったことにより、接近する地形に対する認識が不十分であった可能性がある。第2に、事故発生前の連続攻撃においては、遅い速度で飛行しながらロケットと30mmガンを発射しているが、事故が発生した最後の攻撃では、かなり速い速度において、同数の弾薬を発射しようとしていた。このことが、緊急事態の回避に必要な時間と空間を小さくしてしまったと考えられる。
このほか、30mmガンの不具合に関連した3件のクラスCの事故が発生している。そのうちの少なくとも2件は、弾薬のロットに関する不具合が報告されている。

UH/MH-60 ブラックホーク(30パーセント)

ブラックホークは、全機種の中でクラスAからCの事故の総発生件数が最も多く、クラスAの事故についても2番目に多かった。クラスAの事故のうち2件については、IIMCに関連した事故であり、7人が死亡した。どちらの場合も、天候が悪化しつつあるにも関わらず飛行を継続し、IIMC状態に陥るまで適切な対応を怠ったものであった。もう1件のクラスAの事故は、着陸直前にホワイト・アウト状態となって方向感覚を失い、森林に突っ込んでしまったものである。また、別の1件のクラスA事故は、イラク国内でブラウン・アウトに巻き込まれ、ハード・ランディングとなって、航空機が横転してしまったものであった。
また、昼間において、タクシー中のUH-60が、駐機中の他の航空機のローター・ブレードにメイン・ローター・ブレードを接触させるというクラスB及びCの事故も3件発生している。
 また、ハード・ランディングにより航空機を損傷した事故も7件発生している。このうちの1件においては、砂塵の発生しやすい環境における着陸要領についての操縦士の認識に誤りがあった。その操縦士は、「planting the aircraft(航空機を植え込む)」又は「sticking the aircraft to the ground(航空機を地面に突き刺す)」と表現されるような着陸をしていた。しかし、たとえ砂塵が発生しやすい場合であっても地盤が硬い場合には、コレクティブを急激に下げるとメイン・ローター・ブレードが垂れ下がってテール・ブームに接触する可能性があり、このことが本事故の原因であったと推定される。
 さらに、2件のワイヤー・ストライクの事故が発生した。2件とも夜間の低高度飛行中に航空機が無線タワーと電線に接触したものであり、1件は地面に墜落したクラスAの事故、もう1件はメイン・ローター・ブレードのみを損傷したクラスCの事故であった。

CH/MH-47 チヌーク(13パーセント)

CH/MH-47においては、4件のクラスAの事故が発生し、19人という全機種の中で最多の死者が発生した。これらの死亡者は、1人を除いてIIMCに関連する事故によるものであり、砂嵐に遭遇した後も飛行を継続し、航空機をコントロールできなくなって墜落したものであった。
 残る1人の死者は、航空機関連事故で発生した。チヌークが、兵員を卸下するため切り立った峡谷の底にある狭い道路に着陸した。航空機から降りた兵士等は、航空機の後方で、航空機が離陸するのを待っていた。その時、一人のアフガニスタン人の通訳が、右側の斜面を登り始め、後方のメイン・ローター・ブレードで叩かれて死亡した。
 その他の事故としては、グランド・タクシー中に降着装置に不具合が発生した事例が2件、着陸進入中に操縦席のドアーが脱落した事例が1件発生している。

OH-58D カイオワ・ウォーリア (11パーセント)

カイオワ・ウォーリアにおいては、4件のクラスAの事故が発生し、4名が死亡したが、他の新しいタイプの航空機と比較して、クラスAからCの事故の総発生件数が最も少なかった。
 カイオワ・ウォーリアの事故のうちの1件はワイヤー・ストライクによるものであり、2名が死亡し、航空機は破壊した。当該機は、イラクにおいて、道路わきの爆発物により車両被害が発生した日の夜に、車列縦隊の護衛任務を実施していた。このため、操縦士が2名とも道路わきの爆発物を探すのに気をとられ、飛行経路上のワイヤーに気付かなかったものと推定される。
また、2機のカイオワ・ウォーリアが空中衝突し、2名が死亡し、2機とも破壊するという事故も発生した。夜間にAN/AVS-6(V)型NVG(Night Vision Goggle, 暗視眼鏡)を使用し、編隊で地形に沿った飛行をしながら地域偵察を実施していたところ、僚機を操縦していた操縦士が長機を見失ってしまった。その後、僚機のメイン・ローター・ブレードが長機のバーチカル・フィン及びテール・ローターに接触し、双方の航空機はコントロールを失い、地面に激突した。僚機の操縦士は、「Ground Light Misinterpretation(地上光による誤認)」と呼ばれる錯覚に陥り、長機のポジション・ライトを地上の明かりと誤認したものと推定される。なお、僚機から長機に対し、長機を見失っていることを連絡する無線通信は実施されていなかった。
 また、不適切なクルー・コーディネーションが要因の事故も発生している。昼間の戦闘偵察任務において、搭乗員が操作していた12.7mm重機関銃に不具合が発生した。このため、操縦士が2人とも、武装システムの故障探求のため操縦席内部に注意を集中してしまい、航空機が降下していることに気付くのが遅れ、地面に接触した。
 さらに、オートローテーションの訓練中に、ハード・ランディングによるクラスAの損傷及びオーバー・トルクによるクラスCの損傷が発生した。このうち、ハード・ランディングについては、教官操縦士のパワー・リカバリーの遅れが原因であった。
これ以外にも、スロットルを手動で操作中のエンジン・オーバースピードが3件、ホット・スタートが1件あり、クラスCの損傷が発生している。

固定翼機(10パーセント)

固定翼機の事故は12件(すべてクラスB又はC)発生し、そのうちの2件は器材上の不具合が原因であった。器材上の事故が発生したのは、C-12であり、降着装置及びエンジンの不具合に起因するものであった。また、固定翼機の事故の3分の2はC-12で発生しており、これらには、1件のエンジン・オーバースピード及び3件の落雷が含まれている。なお、落雷は、固定翼機の事故原因の4分の1を占めている。

結論及び提言

2005年度の少なくとも4件の事故は、飛行中の規律違反に起因するものであった。特に、1件の事故の背景には、規定に対する故意の違反があった。
 死亡事故が増加する傾向にある中、2005年度は25人が死亡し、これらの死亡事故の内の1件は戦場において発生した。戦場においては、多くの任務が夜間に実施され、また地形がしばしば不明瞭で見誤り易く、雲がなくても計器飛行状態になってしまう場合があるため、計器飛行手順に熟達することが必要である。
 また、しばしば航空事故の原因となっているのは、不適切なクルー・コーディネーションである。類似事故の防止のためには、クルー・コーディネーションの効果的な訓練と、及び全搭乗員の危険状態を察知しようとする意識が重要である。機付長だけが、不安全状態の兆候を認識できる場合も考えられるのである。さらに、特にワークロードが高くなる場面における、クルー・コーディネーションのうち主要なものについては、事前に調整を完了し、あらかじめ飛行計画に含めておかなければならない。
 さらに、NVGだけではなく、ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)を活用する必要がある。視程が制限されている場合は、HUDにより得られる情報が、状況認識の向上に非常に有益となる。このため、操縦士等は、HUDシステムの操作要領について、効果的な訓練を実施しておかなければならない。
 最後に、コンバット・レディネス・センター(Combat Readiness Center, CRC)は、戦場及び米国内における指揮官及び兵士の危険要因の分析を援助するソフトウェアを多数開発している。これらのソフトウェアには、Preliminary Loss Reports(損害発生速報)、Risk Management Information System(危機管理情報システム)、Army Readiness Assessment Program(米陸軍即応評価プログラム)等があり、CRCのウェブ・サイト(https://crc.army.mil.)から入手可能である。2006年度も航空事故減少を目指そう。「OWN the edge!(優位性を獲得せよ!)」
 編集者注: これらの統計資料は、2005年11月8日現在のCRCデータベースに基づくものである。今後の報告により、統計資料及び結論が変更される可能性がある。

ライル氏は、米国陸軍コンバット・レディネス・センターのエンジニアリング・リサーチ・サイコロジストであり、連絡先は、DSN 558-2091 (334-255-2091)又はe-mail Charisse.lyle@us.army.milである。
訳者注: 米国の会計年度の始期は10月、終期は9月である。また、米国陸軍の航空事故は、概ね以下のとおり区分されている。
クラスA- 100万ドル以上の損害、航空機の破壊、遺失若しくは放棄、死亡、又は完全な身体障害に至る傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスB- 20万ドル以上100万ドル以下の損害、部分的な身体障害に至る傷害若しくは疾病、又は5人以上の入院を伴う事故
クラスC- 1万ドル以上20万ドル以下の損害又は1日以上の休養を要する傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスD- 2,000ドル以上1万ドル以下の損害、又は職務に影響を及ぼす傷害若しくは疾病を伴う事故
クラスE- クラスDに至らない航空インシデント
出典:FLIGHTFAX, November 2005, U.S. Army Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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