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航空事故回顧:HH-60Mダスト・ランディング

HH-60M(訳者注:HHは、捜索・救難及び患者後送用ヘリコプタを示す。)がダスト・ランディング(砂塵環境下での着陸)を実施中、メイン・ローター・ブレードがテール・ローター・ドライブ・シャフトに接触し、損傷させた。離陸しようとしてコレクティブを引いた際にドライブ・シャフトが破断し、機体は制御できない時計方向の旋転に陥った。機体は、右旋転しながら地面に激突し、損傷したが負傷者はなかった。

飛行の状況

事故機が所属する部隊は、「ファースト・アップ」と呼ばれる患者後送任務の戦闘支援に従事していた。事故機の搭乗員は、任務部隊指揮官から待機間に練成訓練飛行を実施するようにブリーフィングを受け、承認されていた。計画されていた訓練飛行は、旅団長から既に承認されていた場周飛行、滑走着陸、VMC進入及びホバリングであった。
 0925(現地時間、以下同じ)、搭乗員は、作戦及び情報(O&I)更新ブリーフィング、当日分の訓練ブリーフィング及び任務申し受けブリーフィングが行われる定時情報共有ミーティング(Daily Synchronization Meeting)に参加した。任務申し送りブリーフィングには、航空任務ブリーフィング及び2機目の患者後送機の搭乗員との編隊ブリーフィングが含まれていた。1000に飛行前点検及び搭乗員任務ブリーフィングを実施し、搭乗員及び航空機の任務遂行態勢を完整した。気象は、270度の風6ノット、視程障害なし、雲量及び雲高は、FEW(ほとんどなし)25,000フィートであった。気温は20℃であり、露天温度は-9℃であった。高度計設定は、30.11インチであり、現地の気圧高度は、2204フィートであった。日没は1820、EENTは1913、月の輝面率(月の面積に占める光っている部分の面積の割合)は23%で高さは地平線から33度であった。
 1900、搭乗員は、航空機の位置に集合し、訓練飛行のための搭乗員ブリーフィングを実施した。1920、航空機は移動を開始し、エンジンのHITチェックを実施し、飛行管理システムに機体重量を入力した。当該機は、副操縦士の操縦により滑走路に移動し、場周飛行、VMC進入、滑走着陸、ホバリング、オートローテーション等の訓練を実施した。じ後、搭乗員は、機体を元の位置に復帰し、燃料補給を実施して、患者後送任務の即応態勢を整えた。燃料補給を終えてから、搭乗員はダスト・ランディング訓練の実施を決心した。訓練担当操縦士(機長)は、環境訓練実施予定地点に副操縦士が航空機を移動させている間にダスト・ランディングの各種手法について説明した。
副操縦士が操縦した最初の2回のVMC進入は、「ゴー・アラウンド」が指示された。1回目のゴー・アラウンドは、速度が遅すぎたためであり、2回目はフェンスの支柱とワイヤーが見えたからであった。3回目の進入は、やや前進しながら接地した。4回目の着陸は、接地の際に降下速度が高めだった。その着陸の最中に飛行指示器のコーション・ライトとマスター・コーションが点灯したため、機長(訓練担当操縦士)がリセットした。訓練操縦士は、副操縦士から操縦を交代し、搭乗員にもう一度反復訓練を実施することを伝えた。訓練操縦士が離陸しようとしてコレクティブを増加したところ、機体が制御できない時計方向の旋転に陥った。訓練担当操縦士は、直ちにテール・ローター不具合の発生を宣言し、コレクティブを下げた。航空機は右旋転しながら地面に激突して中破したが、負傷者はなかった。

搭乗員の経歴

左側座席に搭乗していた訓練担当操縦士(機長)は、2,700時間以上の総飛行時間を有しており、そのうちの2,100時間がUH-60A/L、75時間がUH-60Mによるもので、650時間のNVG飛行及び1,300時間の戦闘飛行の経験を有していた。副操縦士は、総飛行時間386時間、UH-60で470時間、UH-60Mで70時間飛行しており、75時間のNVG及び24時間の戦闘飛行の経験を有していた。

考 察

調査の結果、当該機は進入時、300フィート/分の着陸時制限降下率を超過していたと考えられる。その際、操縦していた操縦士は、航空機の降下速度を減じようとしてサイクリックを過剰に後方に引いてしまった。搭乗員の気付かないうちに2本のメイン・ローター・ブレードがテール・ローター・ドライブ・シャフトに接触し、メイン・ローター・ブレード・チップ・キャップ、中間ギアボックス・カバーおよびテール・ドライブ・シャフトのセクションⅢを損傷させた。引き続いて搭乗員が離陸しようとした際に、損傷していたドライブ・シャフトが破断したものと推定される。

出典:FLIGHTFAX, No.49 May 2015, U.S. Army Combat Readiness Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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