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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

カウボーイを探し出せ

グレイ・D・ブラマン
アラバマ州ハンツビルCAS社

元事故調査担当者である私は、通称「カウボーイ」と呼ばれる危険なパイロットが周りにいないか、常に気をつけている。カウボーイであるかどうかは、年齢や性別、人種、階級、地位では判別できない。カウボーイは、あなたの部隊にもいるかも知れないし、指揮官や運用幹部、教官操縦士(instructor pilot, IP)、航空安全幹部(aviation safety officer, ASO)等の重要な職務についているかも知れない。あなたの組織の中で最も優れた士官かも知れないし、最も劣った士官かも知れない。非常に目立つ人物かもしれないし、控えめな人物かも知れない。いずれにせよ、カウボーイ達は、規則や教範どおりに行動するのが嫌いであり、規則等に従わなければならない理由が解っていない。彼らは、何か問題が発生した場合の自己防衛が過剰であり、常に自分の行為を正当化しようとする。また、飛行前ブリーフィング時の注意喚起にも耳を貸さない。彼らが飛行中に好んで使う言葉は、「どうだ、これを見ろ!」である。
 私はかつて、AH-64で発生したある航空事故の航空事故調査委員会の一員であった。我々は、事故現場に到着後まもなく、当該機に搭載されていたビデオ・テープ・レコーダからビデオ・テープを入手できた。そのテープを見たとき、我々が調査しようとしている対象がカウボーイであることが解った。その飛行は、事故が発生するのが当たり前のようなものであった。もはや、「事故が発生するかどうか」ではなく、「いつ事故が発生するか」が問題になるような飛行だったのである。
 彼らの任務は、操縦士トレーニング・マニュアル(aircrew training manual, ATM)に準拠した単機・昼間の訓練飛行を実施することであった。飛行訓練課目には、戦闘状況下の高高度及び低高度の偵察、低空水平飛行、及びほふく飛行が含まれていた。彼らは、数個の訓練区域とその間の移動経路を使用して、これらの飛行訓練を実施するように指示されていた。飛行計画の作成に際しては、天候確認、航空機性能データの算定及び危険見積もりを実施した。また、飛行隊全体のブリーフィング(ミッション・ブリーフィング)及び各機毎のブルーフィング(クルー・ブリーフィング)を実施した。その後、操縦士は、フライト・プランを提出し、当該機の飛行前点検を完了した。
 離陸したのは、概ね14時頃であった。部隊の教官パイロット(unit instructor pilot)である機長が後方席に、副操縦士が前方席に搭乗していた。彼らは、低空水平及びほふく飛行を数回実施した。また、攻撃機動及び着陸地域の高高度並びに低高度偵察の要領を訓練した。彼らの訓練の模様は、航空機搭載のビデオ・テープ・レコーダに全て記録されていた。機長が航空機を操縦している時、両脇に木や電柱がある一般道の上を速度26ノット、対地高度3フィートで飛行している模様が残っていた。また、機長が目標方向への急旋回を行ったとき、副操縦士が「イーハァァ!!!」と叫んでいる場面もあった。
 彼らは、一般道に沿って飛行を継続し、ある降着地域に到着した。機長は、左に旋回し、機首方向を320度方向の木の茂みに向けた。茂みに接近した時、機長は、木と木の間に隙間を発見し、副操縦士に「あの間を通れると思うか?」と質問した。副操縦士は「無理です」と答えた。機長は、「できるに決まっているだろう。あんなに隙間があるんだぞ。俺を信じろ!」と言った。その直後の15時32分頃、No. 4メイン・ローター・ブレードが直径2インチの木の枝に衝突し、ブレードの先端から8インチが破断した。さらにNo. 2及び3のメイン・ローター・ブレードも衝突した。航空機には激しい振動が発生したものの、何とか開豁地に着陸できた。当該機が木に衝突したときの対地高度は16フィート、速度は76ノットであり、航空機が被った被害額は、100万ドルに達した。

このように、陸軍航空には、いまだに「カウボーイ」が生息しているのである。操縦教育基礎課程において、全てのカウボーイを発見・排除することは不可能であり、どうしてもすり抜けてしまう者がいる。我々は、プロの操縦士として、彼らを発見したならば必ず報告し、排除する義務がある。我々の任務は元々危険なものであるのに、カウボーイ達がさらに危険性を増大させているのである。我々は、彼らの振る舞いを黙って見逃すわけにはいかない。

ブラマン氏はCAS株式会社のシニア・システム・セーフティ・アナリストであり、アラバマ州ハンツビルに所在の多用途ヘリコプター・プロジェクト・マネジメント・オフィスで勤務している。Eメール・アドレスは、edward.mcintyre@us.army.mil。Braman氏は、本記事を執筆した当時、米国陸軍コンバット・レディネス・センターの事故調査係として勤務していた。
出典:FLIGHTFAX, November 2004, U.S. Army Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    あなたの周りに「カウボーイ」はいませんか?




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