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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

3秒間が引き起こした惨事

航空機の操縦には、各種状況の継続的な把握が欠かせません,しかしながら、航空機内外の様々な事象、活動、人員、物件等により、操縦士が操縦に集中できないことがありますこ例えば、管制無線への応答、物の移動、操縦装置の調整、目標の照準等は、優先順位が低い事柄であるにもかかわらず、操縦士の操縦を疎かにする原因となりますムこのような環境において、各種状況を継続的に把握するためには、継続的な見張り及び良好なコックピット・チームワークが重要となるのです。
 ある穏やかな晴天の日、そのAH-64Dのクルーは、いつもどおりの単純かつ簡単な飛行任務を実施していた。その飛行任務とは、戦闘地境への展開準備訓練の一環として実施される昼間射撃訓練であった。当該飛行任務の実施に先立ち、当該機の操縦士は、3伽mチェン・ガンと空対地ロケット・システムの機能点検を完了した。
 武装システムの状態確認を完了後、ほぼ同一の要領による射撃訓練を3回実施した。1回目は射場に習熟するため、射撃を伴わない訓練を実施し、残りの2回は実弾射撃を含めた訓練を実施した。各射撃訓練の開始時、当該機は、目標に対し軸線をずらして射場に進入した。後席に搭乗していた機長は、射撃開始線を通過する直前にサイクリック・スティックを引き、高度を獲得しつつ速度を減じるとともに、目標の方向に機首を向けた。射手の副操縦士は、目標地域に進入後、目標をTADS(target acquisition and designation system, 目標補足/照準装置)で捕捉し、ロケットを2連射した。また、攻撃の最後には、機長が離脱のための旋回を実施している間、航空機を防護するため、30mガンの10発連射を3回実施して、目標地味を制圧した。
 3回目の最終射撃訓練において、機長はサイクリック・スティックを引く際に、速度をあまり減少させず、それまでよりも高速で目標に接近した。このため、射撃を実施し、武装システムをセーフティ状態にして、離脱のための旋回を開始するまでの時間が短くなった。射撃終了後、当該機は、速度104ノット(前2回の訓練における旋回時の速度は、それぞれ77ノット及び〇〇ノットであった。)、対地高度370フィートで右に離脱旋回を開始し、7秒後に当該機が地面に激突するまでの間、旋回を継続していた。

何が起こったのか?

ミッション・データ・レコーダから得られた情報から、次の事項が明らかになった。旋回を開始してから最初の2秒間、機長は、旋回方向である右方向に頭を向けていた。しかしながら、次の3秒間、機長は武装システムのスイッチを確認・操作するため、頭を左方向に向けていた。いずれの操縦士も飛行状態をモニターしていない状態で、当該機はバンク角を30度から㊥度に増加させつつ、毎分2,500フィートの降下率で15度のダイブ降下状態になった。墜落の2秒前に機長は頭を旋回方向である右方向に戻し、副操縦士に対して「You are safe.」(訳者注:武装システムをセーフティ状態にすることが完了したことを意味する。)」と発唱した。墜落の1秒前に、音声警報システムが1舶フィート(最低の警報高度であり、あらかじめ操縦士によりセットされていた)以下に降下したことを感知し、「ALTITUDE LOW!(高度低し!)」と警告を発した。
 残念ながら、その警告は遅すぎた。なぜならば、その時点での降下率香城に毎分3,900フィートに達していたのである。機長は、地面に激突する直前にサイクリック・スティックを後方に引いたが、コレクティブ・ピッチ・レバーを引いて機体の降下を食い止めることはできなかった。
 事故調査委員会は、機長がコレクティブ・ピッチ・レバーを操作できなかった理由について、機長の左手が、武装システムのスイッチからコレクティブ・ピッチ・レバーに戻っていなかったのではないかと推定している。当該機は、
機首を下げ、26度右に傾いた状態のまま、速度〇〇ノットで地面に激突した。副操縦士は死亡し、機長は重傷を負い、当該機は完全に破壊してしまった。
 事故調査委員会は、本航空事故は、見張りの不適切、機外の状況に対する注意配分の不良、及びク/レー・コーディネーション等基本的事項の不履行が原因であるとの結論を下した。

教訓事項

本航空事故は、操縦士トレーニング・マニュアルに述べられているクルー・コーディネーションの基本原則を守っていれば、発生しなかったものと推察される。機長は、武装システムのスイッチを操作する際、副換縦士に操縦を援助させ、又番場縦を交代させることが可能であった。あるいは、副操縦士に対し「’m inside.(訳者注:自分は機内の操作等を実施中で、機外を見ることができない状態であることを意味する。)」と発唱し、自らの状況を副操縦士に伝達することも可能であった。副操縦士は、当該機が旋回中であることを認識していたはずであり、操縦を交代して機長の負担を軽減するか、旋回方向の安全確認を実施する等、少なくとも機外の状況に注意をむけるべきであった。あるいは、機良の注意が機内に向けられていたのであるから、速度、高度及び障害物回避に関して助言することにより、機長を援助すべきであった。

結 論

AH-64Dは、陸軍の航空機の中で最も大きなコックピット・ワークロードを要求する機種のひとつである。それは、最新テクノロジーを導入した非常に複雑なシステムで構成されており、潜在的に操縦士が注意散漫状態となる危険性を有している。しかしながら、だからと言って注意配分の誤りや注意散漫が許さるものではない。無線の呼出を誤ったり、敵味方識別機の再設定が遅れたりすることは、それほど大きな問題ではないが、適切なクルー・コーディネーションと見張りによる継続的な状況把握を怠ることは、絶対にあってはならない。本航空事故で明らかになったように、たった3秒足らずの間、状況を把握しなかっただけでも、大惨事が起きてしまうものなのである。
 厳しい飛行環境で、高度にデジタル化された航空機の運用が求められる中、飛行中に複数の操作手順が競合する場合が多くなっている。このため、操縦士等には、これらの兢合する操作手順を継続的かつ適切に分析・処理する能力が求められている。実施すべき手帳を判断するにあたっては、その思考過程を確実にするとともに、自分の能力以上のことを実施しようとしないように注意しなければならない。操縦士等は、複数の兢合する操作手嶋の優先順位を常に明確にし、優先度の高い手帳を確実に実施して、飛行安全を確保しなければならな叛飛行安全の確保に不可欠な手順を優先的に実施することも、操縦士等が遵守すべき基本的事項の一つなのである。

本航空事故に関する質問等は、米国陸軍戦闘即応センターの事故調査課までお寄せ下さい。

出典:FLIGHTFAX, May 2005, U.S. Army Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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