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航空事故回顧:UH-60の整備ミスによる墜落

UH-60 Maintenance Operational Failure

整備確認飛行を実施中、安全回り止め(コッター・ピンの取り付け)が行われていなかったメイン・ローター・ピッチ・チェンジ・ロッドの取付ボルトが振動荷重により緩み、脱落した。このため、上部ピッチ・チェンジ・ロッドの結合が外れ、メイン・ローター・システムが完全にコントロール不能となり、最終的には機体が空中分解した。当該機は、開かつ地に墜落し、3名の搭乗者全員が死亡した。機体は、墜落後に発生した火災により、その大部分が損壊した。

飛行の経過

ピッチ・チェンジ・ロッド・エンド・ベアリングおよびダンパーにフェノール樹脂製のワッシャを取りつけるという整備指示( maintenance information message)に基づく作業が開始されたが、それが終了する前に、整備記録の整備欄にそれを完了したという署名が行われてしまった。その整備作業間に、3つのダンパーおよび1つのピッチ・チェンジ・リンクが使用不能と判定された。機付長は、それらを取り外さず、ピッチ・チェンジ・ロッドとダンパーのボルトから安全回り止め(コッター・ピン)を外し、緩めたままの状態で放置していた。その後、運用上のニーズにより、その機体の整備確認飛行は、計画よりも4日前倒しで実施されることになった。整備計画の変更に伴い、その機体の他の整備項目を完了させるため、数人の整備員がその機体の整備に新たに割り当てられた。

整備作業が終了し、検査員による検査を実施されたが、行われた作業および署名が必要な項目について、整備記録の確認が十分に行われなかった。このため、ピッチ・チェンジ・ロッドの再締め付けおよび安全回り止め(コッター・ピンの取り付け)が行われたものとして、整備記録の検査欄への署名が行われてしまった。整備作業終了後、航空整備担当将校(aviation maintenance officer )および副操縦士(copilot, PI)による飛行前点検が行われたが、取扱書に基づく手順で実施されなかったため、ピッチ・チェンジ・ロッドの取付ナットの締め付けおよび安全回り止めが行われていないことが見逃されてしまった。当該機は、整備確認飛行空域に向かって飛行場を離陸した。

離陸してから約18分後、ピッチ・チェンジ・ロッドが緩み、機体が空中分解した。

搭乗員の練度

整備確認飛行操縦士(maintenance test pilot, MP)の総飛行時間は469時間であり、そのうち連続した飛行時間は469時間であった。副操縦士(copilot, PI)は、操縦課程を卒業したばかりであり、総飛行時間は7時間であった。

考 察

陸軍航空の整備に対する運用上の要求は増大し続けており、その作業は飽和状態にある。しかし、その作業には、本質的にわずかな誤りも許されない。国外への展開が頻繁に行われている現状において、整備作業に関する標準化の維持は、監督者や部隊指揮官にとっての重要な課題である。本事故における不具合の発生には、次の3つの段階で問題が存在していた。実施者の段階、品質管理者の段階および最終的には搭乗員の段階である。整備ミスを防止するためには、指揮官の現場への進出が重要である。その際、単に現場を巡回するだけではなく、整備員たちがどんな整備作業を行っているのか、整備実施規定の当該整備作業に関する部分が参照されているか、検査員が航空機の状態を把握しているか、搭乗員が飛行前点検を適切に行っているかなどを確認し、実質的に現場に存在しなければならない。

整備作業の安全性を確保するためには、整備指導下士官、検査員、航空整備担当将校、品質管理将校、小隊長、小隊陸曹および指揮官という、各級の監督者および指揮官による現場への進出が不可欠である。指揮官による現場進出は、事故に至る前に整備ミスを発見するための重要なプロセスであり、唯一の確実な方策でもある。事故に至る事象の連鎖を断ち切るためには、多段階での監督が必要なのである。高いレベルでの標準化を実現しなければならない。優秀であるがゆえに、さらなる監督や訓練を必要としている整備員たちが、どのように作業を行っているのか、その状況を把握しなければならない。指揮官の指導に基づいて航空整備訓練プログラムを導入し、それを継続しなければならない。その標準化されたプログラムは、整備ミスとそれに起因する事故の防止に必ずや貢献することであろう。

出典:FLIGHTFAX, No.64 April 2018, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    現役の頃、自分の整備した飛行機が墜落する夢を何回も見たものです。現場で頑張っている整備員たちが、つらい思いをしたり、そのわずかなミスで命が失われたりすることがないことを切に願っています。