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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

コレクティブ・レバーの拘束

上級准尉5 マーク・A・マイヤー
国防省フィールド・リサーチ・アクティビティ
メリーランド州フォート・ミード

上級准尉になったばかりだった私は、UH-60ブラック・ホークのインストラクター・パイロットとして勤務していました。 私の所属する飛行大隊は、FTX(field training exercise, 実動訓練)を支援するため、ブラック・ホーク10機を使用したNVG飛行による空中機動を10日間に渡って実施していました。
 我々は、FTXに参加している間、ノース・カロライナ州のキャンプ・ルジュンに展開していました。 日中の気温は38℃以上、湿度は95%以上というカロライナ州の典型的な蒸し暑い天候でしたが、夜になると少しだけ涼しくなっていました。 私は、空中機動に併せて、ある准尉を機長に指定するための実技試験を実施するように命ぜられていました。
 最初のフライトは、受験者である准尉を左席に搭乗させて実施しました。その准尉は、飛行時間の割には腕の良い、信頼できる操縦士でした。 私は、その後も右席に搭乗し、数フライトの夜間飛行を行いました。 フライトには、特に問題はありませんでしたが、右席の頭上にあるマップ・ライトのコードが伸びきって、キャビンの床に届く状態になっていることに気づきました。 この状態では、マップ・ライトが操縦系統に引っかかる可能性があるため、ブリーフィングの際に他の操縦士にも注意喚起していました。 その後、実技試験課目の要求に従い、我々は左右の搭乗位置を交代しました。 その時、右席のマップ・ライトのコードに問題があることを、准尉にもう一度注意喚起しました。 ただし、「マップ・ライトは使わない方が良い」とは言いましたが、「使ってはならない」とまでは言いませんでした。 夜間の実技試験である以上、どうしても使用しなければならない場合もあると考えたからです。
 それからも何回かの夜間飛行を問題なく完了したことから、安全上問題なことは何もないと思っていました。 そんなある夜、我々は低高度飛行による空中機動を実施するため、10機編隊の最終番機として着陸点を離陸しました。
 FARPまでの4時間に及ぶNVG飛行が終わりに近づいた頃、右席で操縦していた准尉から、「機長、コレクティブに触っていませんか?」と聞かれました。 私は、「いや」と答え、なぜそんなことを聞くのかを尋ねました。
 准尉は、「コレクティブが途中で引っかかり、パワーが出せません」と答えました。 私は、直ちにコックピット内を点検しましたが、異状は発見できませんでした。 准尉と一緒にコレクティブ・レバーを引き上げてみましたが、レバー全行程の中間付近で引っかかってしまい、それより上に引き上げることができませんでした。 我々が搭乗しているUH-60は、眼下の森に向かって、毎分約50フィートの降下速度で降下していました。 私が座っている左席側のコレクティブも点検しましたが、拘束しているものは何もありませんでした。 次に、右席側のコレクティブに沿って右手を動かし、何か挟まったり、拘束させたりしているものがないか点検しましたが、何も感じられませんでした。
 我々が飛行していたのは、ノース・カロライナ東部の湿地帯の上空でした。 右側の後部座席に座っていた機付長が、「もう少しで森に激突します!」と大声で叫びました。 私は、最も障害の少ない飛行経路を探すため、素早くあたりを見渡しました。左側の湿地帯に、暗い緑に囲まれた川が見えました。 その川の方向に進路を変更すると、飛行速度の低下に伴い降下速度が減少し、高度の余裕を50フィート増加させることができました。
 私は、森に向かって降下しながら、「対衝撃姿勢をとれ!」と指示しました。そして、最後の試みとして、コレクティブを両手でつかみ、床まで一杯に押し下げてから、全力で一気に引き上げました。 すると、コレクティブを拘束していた何かがはずれ、ブラック・ホークは、きしむような音をたてながら、夜空に向かって上昇し始めたのです。 トルク計の表示がイエローからグリーンに戻ったのを確かめてから、私がもう操縦桿に触れていないことを准尉に伝えると、我々は展開地に進路を戻しました。
 十分に安全な高度に達してから、私は、もう一度、右側席のコレクティブに手を伸ばして点検しました。 すると、マップ・ライトがコレクティブ・レバーを越えて座席の下に落ちているのを発見しました。 ライトには、コレクティブと座席サポートの間に挟まった際に生じたと思われるへこみがありました。
 我々は、落ち着きを取り戻すため、全員で深呼吸をした後、展開地まで飛行を継続し、異状なく着陸しました。 着陸後、本不安全について、クルー・ブリーフィングを実施してから、指揮系統を通じて指揮官に報告しました。 本不安全から得られた教訓は、次のとおりです。
・コレクティブ・レバーの付近には、何も置かないこと。機内においては、すべてのものを縛着すること。
・航空機に不具合を発見したならば、軽微なものであっても、速やかに修理をするか又はフォームに記載すること。
・右席側のマップ・ライトに不具合がある場合には、航空機の状態記号を赤○で囲んだ赤×(訳者注:飛行任務の内容によっては、飛行を禁止すべき欠陥があることを意味する。)にすること。
・クルー・コーディネーションを最大限に発揮し、チームとして機能できるように着意すること。 特に、経験豊富な機付長からは、有益な助言が得られる可能性がある。
・慣れたフライトであっても、集中力を維持すること。 同じような任務の繰り返しによって生じる油断は、安全意識の低下をもたらしやすい。
 なお、当該操縦士は、その後の機長評価試験で良好な成績を修め、現在では教官パイロットとして、自信をもって勤務しています。

出典:KNOWLEDGE, December 2009, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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