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それは本当の火災か

上級准尉2 チモシー・エスキベル
第1-171全般支援航空大隊C中隊
ニューメキシコ州サンタフェ

緊急手順が存在するのには理由があり、パイロットであれば誰でも、チェックリストを活用することが正しい判断を下すためにいかに重要であるかを知っているはずです。
 ある日、私は、整備の完了したUH-60ブラックホークを受領するため、テキサス州コーパスクリスティ米陸軍補給処(Corpus Christi Army Depot, CCAD)に到着しました。受領する航空機を掌握し、補給処が実施した作業内容を申し受ける整備員と対面すると、同行していた2名の気付長(クルー・チーフ)と一緒に飛行前点検を開始しました。整備記録簿(ログブック)や機体を確認するための時間は十分に確保できていました。
 機体の状況は、極めて良好であり、補給処の整備員が我々のブラックホークを準備するために素晴らしい仕事をしてくれたことが分かりました。また、受領する我々への対応もとても丁寧でした。飛行前点検と整備記録簿点検を完了後、最初のテスト・フライトを翌朝に実施することを補給処側に伝えました。
 翌朝、補給処に到着した我々は、すぐに飛行前点検を再実施しました。完全な飛行前点検(プリフライト)と飛行後点検(プリベンティブ・メインテナンス・デイリー)を完了し、2日間で2回の機体全体点検を行っていることから、飛行を開始する前の点検について定めた規定の基準を十分に満たした状態であると考えていました。最初の飛行のための準備を完了したメンテナンス・テスト・パイロットは、この時点では、機体の状態に満足していました。
 航空機を係留地点(ランプ)までけん引した後、メンテナンス・テスト・パイロットは、整備確認(メインテナンス・チェック)を実施する試験飛行地域(テスト・フライト・エリア)での飛行を含めた飛行計画の作成を開始しました。離陸したならば海岸を低高度で横断し、沖合の島の海岸まで飛行し、地上1万フィートまで上昇した後、整備確認飛行パターンを実施して、受領したブラックホークが我々の部隊まで飛行できることを確認するために必要なすべての点検を行う予定でした。
 ミーティング・ルームに全搭乗員が着席して、完全なクルー・ブリーフを実施し、経路、天候、確認手順、緊急手順、及び各搭乗員の疑問点の有無について確認しました。考慮すべき事項として、補給処に入場する前にこの機体に搭乗したこととのある者は、誰もいないということがあったものの、全搭乗員が試験飛行とその後のニューメキシコ州サンタフェへの帰投の準備は万全であると感じていました。
その後、UH-60に搭乗し、円滑にかつ何の問題もなくエンジンを始動し、必要な地上点検を完了し、離陸許可を受けました。その時点では、私が操縦し、試験飛行地域に向けて補給処(CCAD)を離陸しました。経路間の飛行は順調で、我々は、受領した機体の性能に満足していました。
 試験飛行地域に到着すると、地上1万フィートまで上昇を開始しましたが、すべての計器示度等は正常でした。ところが、メンテナンス・テスト・パイロットがNo.2エンジンのパワー・コントロール・レバーを引くために腕を伸ばした時に、計器盤に取り付けられている火災警報のマスター・コーションが点灯しました。後席の機付長は、「火災警報灯点灯」と発唱しました。私はすぐに警報灯の点灯を確認し、後席の搭乗員に対し、「火災発生を確認せよ」と命じました。
 私が思い起こしたのは、この種の緊急操作に関して記載されている。「エンジンをシャットダウンする前に実際に火災が発生していることを確認すること」という「警告」でした。天井操作パネルを見上げるとNo.2エンジンのT-ハンドルが赤く点灯し、火災発生を示していました。この時、気付長(クルー・チーフ)は、「火災発生を確認」と発唱しました。
 我々は、煙を確認するため、S字パターンで緊急降下を開始しました。煙は確認できないのに、火災警報灯は、火災発生状態を示したままでした。操縦を交代したメンテナンス・テスト・パイロットは、管制塔と交信し、火災発生を示す警報灯が点灯していることを通知しました。急速に降下している間、No.2エンジンは、通常の運用状態を示していました。数秒間で認識統一を完了したメインテナンス・パイロットと私は、No.2エンジンをシャットダウンしないことを決心しました。その時点で、機付長も火災が発生していない可能性があることを意見具申してくれました。メインテナンス・パイロットと私は、No.2エンジンをシャットダウンしなかったのは、No.2エンジンの計器が通常の運転状態を示しており、さらに、機付長も火災が発生していない可能性を助言してくれたからでした。
 我々が補給処に戻って無事に着陸するまでの間、消防隊及び救助隊が待機してくれました。No.2エンジンをシャットダウンして、点検したところ、燃料ドレンラインに巻かれているラベルがエンジンに近すぎたため発火し、燃えてしまっているのを確認しました。
そのラベルは、火災検知センサーのすぐ隣にあったため、火災警報灯を点灯させたと考えられました。エンジンは火災を起こしていなかったのですが、ラベルは燃え尽きていました。燃料ラインを交換し、次の日に整備確認飛行を完了しました。
 この不安全は、今まで訓練中に教えられてきたことを更に強調してくれました。緊急事態に遭遇した場合に重要なことは、「訓練を思い出し、チェックリストに従うこと」です。何度も言われていることだと思いますが、私を信頼してください。「これは役立ちます。」

出典:KNOWLEDGE, October 2013, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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