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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

平時と戦時における事故発生状況の比較

陸軍安全部長及び米陸軍戦闘即応/安全センター長
准将 ティマシー・J・エデンズ
米陸軍戦闘即応センター運用調査及びシステム分析担当官
ディクソン・D・ダイクマン

米陸軍は、平時の軍隊へと急速に変換中である。若年兵士にとっては、家で家族や友人と余暇を過ごす初めての機会となっていることであろう。ただし、各級指揮官及び安全関係者の間には、この変換が事故による死亡者の増加をもたらすのではないかという懸念が広がっている。米陸軍戦闘即応/安全センターは、1972年以降の陸軍事故データを一括管理している機関として、平時と戦時の事故について比較調査を行い、その結果を公表した。
 分析を開始するにあたって、事故データを次の2つの期間に区分して整理した。1つは、1991年9月11日~2001年9月10日(平時)であり、もう1つは2001年9月11日~2012年9月10日(戦時)である。どちらの期間も、それぞれ3,599日間になるようにした。米陸軍戦闘即応/安全センターの統計担当者は、事故データをグループ化し、それぞれの発生件数の間の関連性について確認・分析を行った。
編集者注:分析に用いた事故データは、2012年11月8日に陸軍安全管理情報システムから取り込まれたものである。

課業外の事故

課業外の「私有自動車」及び「私的なその他の事故」を分析した結果、平時と戦時の間における事故発生件数及び死亡者数に統計的有意差は見られなかった。課業時間外の「その他の私的負傷事故及び死亡者数」は、戦時よりも平時が多いものの、その差はわずかであった。反対に、課業外の「自家用車事故及び死亡者数」は、平時よりも戦時が多いが、同じように、その差には、統計学的な有意性は認められなかった。

課業中の事故 クラスA地上事故

当然のことだが、戦時には、平時よりもかなり多くのクラスAの「地上事故及び死亡者数」が発生した。平時には474件のクラスA事故が発生し405人が死亡したのに対し、戦時には812件のクラスA事故が発生し637人が死亡した。この傾向は、陸軍戦闘車両、陸軍車両及び火災/爆発のクラスA事故及び死亡者数に共通している。加えて、「クラスA物損事故」は、平時よりも戦時において、より多く報告されているが、「その他の事故による負傷及び死亡者数」については、2つの期間で有意差は認められなかった。
 戦時の「クラスA装輪装甲車事故及び死亡者数」の原因は、その多くが車両の横転であり、平時は58.1%であるのに対し、78.6%を占めた。戦時に横転が増加した要因は特定されていないが、イラクの自由作戦の当初及び中盤においては、装備品(特に装甲の強化)及び訓練に関する問題が多数報告されている。幸運なことに近年は、迅速な装備品の改良及び積極的な訓練の改善により、これらの傾向は解消されつつある。

航 空

地上事故と同じように、戦時には、平時よりもかなり多くの「クラスAの航空事故及び死亡者数」が発生した。平時には152件のクラスA事故が発生し135名が死亡したのに対し、有事には245件のクラスA事故で219人が死亡した。(これらの数値には、無人機システムの事故は含まれていない。) 分析の結果、これらの事故の原因に関し、戦時と平時の間に以下に示す顕著な相違点が見られた。
・ 平時においては、「燃料切れ」による事故が戦時の2倍の頻度で発生した(戦時5件に対し平時10件)。戦時の事故のうち4件は、米国本土で発生し、1件はイラクで発生した。このうち、「不適切な燃料の管理」が原因だったのは、1件のみであった。イラクにおける事故は、搭乗員がフュエル・ポンプ・スイッチを適切な位置に設定していなかったことが原因であった。搭乗員は、適切に燃料管理を行っていたが、エンジンは、燃料を吸い上げていたタンクが空になった時、燃料消費率の計算どおりに停止した(搭乗員は、航空機が複数のタンクから燃料を吸い上げていると思い込んでいた。)。平時における「燃料切れ」の事故に燃料管理手順に起因するものはなかった。平時における事故のうち数件は人的要因によるものであったが、多くは器材上の要因によるものであった。
・ 平時には、「エンジン・オーバートルク/オーバーロード」に起因する事故が戦時の2倍の頻度で発生した(戦時4件に対し、平時8件)。なお、どちらの期間においても、編隊飛行に起因する事故が同じ件数発生した(6件)。
 上述の事項以外に平時及び戦時に発生した航空事故の種別に顕著な相違点は見られなかった。

結 論

平時においては、事故の発生件数は少ないものの、発生した事故の種別は戦時と大きく変わらなかった。この結論は、直感に反するものに思えるかもしれないが、予期していなかったものではない。陸軍は、長年にわたって「訓練は、実戦的に実施せよ。」という教義を支持している。我々の結論は、全般としては、「戦時に発生する事故は、訓練において発生する事故に類似する」ということを示すものである。また、「平時及び戦時の課業外の事故の件数及び種別はほぼ同一である」ということが示されている。この歴史的先例によれば、アフガニスタンにおける戦争が終了した後、課業中の事故は減少し、課業外の事故発生状況は戦争中と概ね同じであると予測される。
 この結論は、面白いものではなかったかも知れないが、広く知られるいくつかの通説を否定している。1つは、「戦時の事故は避けられない」という通説である。もう1つは、「戦争終了後、課業外の事故が増加することは避けられない」という通説である。これらの通説を否定できたことは、それ自体が勝利であり、歴史の流れを変えなければ実現しないことであった。過去においては、紛争の間及びその後に事故は常に増加したが、今日の米陸軍は、戦闘サイクルの最中においても死亡事故を減少させたのである。このことは、真に注目に値することであり、将来においても伝説として称えられるべきことである。
 なぜ死亡事故が減少したのかを定量的に示すことは困難であるが、主要指揮官が「戦闘における安全」を焦点と捉え始めてから数年の間に変化が生じたことに全く疑問の余地がない。最初の動きは、2003年に始まった。それ以降、交戦中の指揮官が標準化を強力に推し進め、先見性のある安全文化を育成して、安全を手に入れようとする兵士たちに支えられながら、この歴史的価値のある変化を引き起こしたのである。2013年度に死亡事故の歴史的な減少を獲得し、それ以降、その状態を維持又は助長させてきた。指揮官達は、効果があると分かったことを継続し、この下方曲線を継続してゆくであろう。平時でも戦時でも、「兵士たちの命を救い、戦闘即応態勢を維持すること」に勝る目標はないのである。
 陸軍の兵力が削減されつつあるこの時期にこそ、陸軍航空は、安全とリスク低減への気運を維持・増大して、即応体制を維持し、地上部隊指揮官に対する義務を果たし、戦闘で獲得した信頼を維持しなければならない。今回「初めて」確認できた「平時対有事の事故損耗」の成果を拡張し、航空企業とともにさらなる研究を注意深く継続し、目標達成を目指している航空部隊指揮官をより確かに支えることが私の切なる希望である。

出典:KNOWLEDGE, May 2014, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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