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シングル・エンジン状態での着陸

成功と失敗の差をもたらすもの

上級准尉2 マーティー・ジュウェル

「あそこだ」後席に乗っていたもう一人のパイロットが、地上のある地点を指さしながら言った。操縦していた私は、その着陸適地に向けて機体をオートローテーションに入れた。そこは、高さ2,000フィート(610メートル)の岩壁の上だった。このままオートローテーションを続けていれば、墜落してしまう。

その前の晩、私は落ち着かなかった。なぜか不安を感じていたのだ。その日、私は、搭乗するUH-60Aブラックホークの飛行前点検をいつもよりも慎重に行った。さらに、任務に参加する6機の搭乗員に対する全体ブリーフィングが行われる前に、自分の機体の搭乗員を集合させ、チェックリストを読み上げながら、もう一度飛行前点検を行った。そして、クロアチア共和国のドゥブロブニクを出発した。

編隊が大きな崖を超えてアドリア海の海上に達するまでは、すべてが順調だった。その時、あの事象が発生した。突然、No.1エンジンの出力が失われたのである。

私は、速やかに、機体を陸上に戻そうとした。しかし、左に急旋回している間に、ローター回転数が低下し始めた。ローター回転数を回復するため、オートローテーションに入れたが、No.2エンジンの出力も低下していることが懸念された。

低回転数警報音が鳴りやむと、機体が飛行可能かどうかを確認した。ゆっくりとコレクティブを引くと、降下速度が減少したので、出力が残っていることが分かった。規定されたシングル・エンジン時の飛行速度まで減速し、崖の側面を浅く旋回しながら、対地高度1,000フィートまで上昇した。機体が安定したので、緊急着陸を行うための地積を探し始めた。

その日、我々の機体には、3人目のパイロットが後席に搭乗していた。そのパイロットも、ヘッドセットを付けていたので、彼ともう1人の操縦士にチェックリストに基づく緊急操作を任せることにした。先任のクルー・チーフが、もう1人のクルー・チーフに、開豁地を探しながら、他機にも注意をするように指示しているのが確認できた。私は、オートローテーション着陸を余儀なくされた場合に有利となる経路を選定しながら、機体を飛ばし続けた。30ノットの横風が吹いていることも認識しており、自分自身を落ち着かせるように努めながら、無線連絡を行った。

ドゥブロブニクの管制塔に緊急事態を宣言し、救難態勢を取るように依頼した。後席のパイロットがチェックリストを読み上げ、副操縦士と丁寧に落ち着いてコミュニケーションを続けていることに安堵を感じていた。チェックリストに基づいて緊急操作手順を行っている彼らの会話や、管制塔や他機からの無線連絡を聞きながら、私は、機体を飛ばし続けることと、飛行継続の可否を判断することに集中していた。
彼らは、不具合が、No.1エンジンの出力喪失であると判断した。チェックリストを読み上げた後、操作すべきパワー・コントロール・レバーを3人のパイロットで確認した時、突然、出力が回復した。飛行場に滑走着陸を行った我々は、それ以上の不具合が発生することなく、駐機場に戻ることができた。我々の機体を除く本隊は、若干の遅れが生じたものの、コソボへの飛行を継続した。当該機については、徹底的な点検、地上試運転、ホバリング点検および試験飛行が行われたが、不具合を再現することができなかった。このため、そのまま運用に復帰することとなった。

何時間にも渡る検討の結果、不具合発生時の我々の行動について、良好な事項と改善を要する事項を明らかにすることができた。

良好な事項

改善を要する事項

私にとっての教訓事項:

状況をさらに悪化させるな!

すばやく気持ちを切り替えたことで、海上でのエンジン不具合の恐怖に打ち勝つことができた。どんなに刺激的な飛行であろうが、あるいは、退屈するような飛行であろうが、緊急事態が発生した時の成功と失敗の差をもたらすのは、自分自身が常日頃の飛行で行っている操作、評価および判断なのである。

出典:KNOWLEDGE, July 2017, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    原因不明のエンジン出力の低下は、どうしてもなくせない不具合のようです。




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