AVIATION ASSETS

陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

氷上への着陸による水没

上級准尉4 クレイグ ラング
第160特殊作戦航空連隊(空挺)第4大隊C中隊
ルイス・マコード統合基地、ワシントン州

「実行力を発揮し、困難に立ち向かう」という心意気にあふれる我々操縦士は、いかなる困難に直面した場合でも、あらゆる手段を尽くして任務を達成しようと努力する。しかしながら、たとえ最善の状況判断を行ったとしても、後になってから、「別の行動を取るべきだったのではないか?」と思うことがある。
 2006年11月2日の午後2時頃、アラスカ州フォートウェインライトの第17騎兵連隊第6大隊所属のOH-58Dカイオワ・ウォーリア(偵察型)の訓練担当操縦士兼計器飛行検定官であった私は、昼間、夜間及びNVGでの冬季環境訓練に関する事前ブリーフィングのため、大隊のOH-58Dカイオワ・ウォーリアの操縦士を集合させた。訓練の実施に必要な学科教育は事前に完了しており、危険見積及び飛行前ブリーフィングの定型についても、搭乗員の変更を反映した修正を完了していた。ブリーフィングが終了すると、寒冷時における着意事項を重視した航空機の一斉飛行前点検を実施した。終了すると昼間の訓練のために離陸し、予定通り午後4時頃に帰投した。この訓練の間に、積雪時の着陸訓練を行うには積雪量が不足していることを上空から確認していた。
 午後5時30分に1人目の夜間及びNVG訓練を開始し、1時間後に2人目の訓練操縦士と交代して訓練を再開した。飛行場内での飛行訓練を実施した後、午後7時に場周経路を離脱した。ラッド陸軍飛行場の北側にある訓練空域まで飛行し、地形に沿った飛行と限定された空域における飛行を行った。着陸訓練が実施できる積雪のある場所を探していると、訓練操縦士が1台のSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が横倒しになっているのを発見した。私は操縦を交代し、その車両がよく見える位置に移動した。SUVの内部には明かりが見え、乗車している人の姿も確認できた。極寒の気象状況やSUVの状態を考慮すれば、「非常に危険な状態にある」と判断し、「着陸して細部状況を確認し、必要に応じ援助を行う」ことを決心した。
 SUVの後方50メートルに道路に沿った平坦な開かつ地があったので、そこを着陸地点とすることに決定し、進入及び着陸を開始した。SUVの方向に機首を向け、スキッドが道路上の轍に並行になるようにして着陸した。SUVに乗車していた2人は、車から降りて出てきた。私は訓練操縦士に、「航空機を降りて、援助が必要かどうかを確認するように」と指示した。訓練操縦士が右操縦席のドアを開け、一方の足を外に踏み出そうとした時、機体が左後方に沈み込んだ。この時、ペダルにフィードバックを感じたため、テールローターが何かに接触したと判断した。何とか機体を水平に保とうとしながら、「エンジン停止」とやっとのことで口にした時、機体は左側に傾きながら急速に沈下し始めた。スキッドの下の氷が割れ、航空機は湿地帯の大きな水たまりの中に沈んでしまった。メインローター・ブレードが水平になるように努めたものの、遂にブレードが地面を叩き、動力伝達系統が破断してしまった。機体が氷を突き破った際に左下部の風防が破損し、操縦席に水が侵入し始めた。訓練操縦士は、ブレードが停止した後、右側ドアを投棄して脱出し、左の脇下まで水に浸かっていた私の脱出を援助してくれた。
 緊急シャットダウンを完了した私が操縦席をよじ登り機外に脱出すると、訓練操縦士は、緊急無線機と緊急ストロボを取り出し、緊急周波数を使用して、飛行場で場周飛行中のCH-47Dチヌークに連絡を取った。チヌークは直ちに対応を開始し、現場上空を旋回しながら航空管制官に発生状況と位置を伝達し、救難隊を現場に派遣させてくれた。私は自分の携帯電話を使用し、大隊の幕僚勤務幹部に不安全事案対処計画の発動を要請した。その後、携帯電話は冷水に浸ったため作動しなくなり、連絡が取れない状態となってしまった。当時の気温は、マイナス7℃であり、私には、すぐに低体温症の症状が現れはじめた。寒冷時用のサバイバル装備は、機体に搭載されたまま氷の下に閉じ込められてしまい、取り出すことができなかった。救難隊は、要請後20分以内に現場に到着し、直ちに低体温症の手当を始めてくれた。事故現場の警戒処置が完了した後、私と訓練操縦士は、精密検査を受けるため病院に搬送された。
 病院にいる間に私は、自分の行動を省みて、次の2つの問いに対する答えを考えた。「私は、我々を救助してくれたCH-47が行ったように、着陸しなくてもSUVの人たちを救助することができたのではないか? 」「それでも私は着陸すべきだったのか? 」
 私の出した答えは、両方とも「イエス」である。結果的には、着陸しなくても救助できたのだが、当時の状況では、着陸するという判断は間違っていなかった。しかし、着陸に伴うリスクが十分に把握できていなかったことを踏まえれば、進入・着陸はより注意深く実施すべきであった。緊急時に救助を行おうとする操縦士は、それによって生じるリスクを把握し、必要な処置・対策を行なって、安全を確保しつつ行動しなければならない。どんなにすばらしい善行であっても、その実施に際しては、慎重な判断が要求されるのだ。リスクの把握、軽減等の処置を行うことなく、緊急時の救助を行った場合には、自分自身が救助される羽目になる可能性があることを覚悟しなければならない。

出典:KNOWLEDGE, December 2012, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

コメント投稿フォーム

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    個人的には、こうゆうことをやっちゃう人が、大好きです。




関連記事






コラム