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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

2016年ユマ飛行試験成果報告

悪視程環境軽減(Degraded Visual Environment Mitigation, DVE-M)プログラム

ゾルタン・ソボスレー
米陸軍航空開発本部(Aviation Development Directorate)
メールストップT12B-2、エイムズ研究センター(Ames Research Center)
Moffett Field、California 94035 USA
Zoltan.P.Szoboszlay.Civ@Mail.Mil

米陸軍は、ユマ性能試験場において、悪視程環境軽減(Degraded Visual Environment Mitigation, DVE-M)プログラムに関し、EH-60Lヘリコプターを用いた飛行試験を実施した。地形/障害物画像センサー、パイロット指示および改良型飛行制御(フライト・コントロール)の実証試験を行った。重度のブラウンアウト環境の中、4名の試験操縦士による64回の着陸および55回の精密ホバリング飛行を実施し、データを収集した。64回の着陸はすべて安全に完了した。

すべての着陸において、機体は、EGI(Embedded GPS & Inertial Navigation System ,内蔵型GPS・慣性航法システム)慣性センサーによる誘導により、目標着陸地点から22ft以内(平均5.8ft)に接地した。縦方向速度は、常に1.5knot以内(平均0.3knot)に維持され、接地時の降下速度は、常に180ft/min以内(平均97ft/min)であった。操縦士の決心による6回の着陸復行(ゴー・アラウンド)が、搭載機器の指示(キューイング)に従って、安全に実施された。

操縦士は、ディスプレイに表示された誘導指示(ガイダンス・キュー)に従うことに集中していたため、センサー画像を見る余裕がほとんどなかった、と報告した。MCLAWS(Modernized Control Laws, 近代的制御法則)により、サイクリックの操縦応答性が改善されたものの、操縦士にセンサー画像を見る十分な余裕をもたらすには至らなかった。

試験の時点では、サイクリック・カップリング(センサー誘導とサイクリック・スティックの連携)は、利用できなかった。コレクティブ・カップリング(センサー誘導とコレクティブ・スティックの連携)は利用可能であり、それがない状態の進入に比較して、操縦士の負担(ワークロード)の著しい改善があったことが、ベッドフォード作業負担スケール(タスクを実行する運用者の精神的余裕度の評定尺度)により把握された。また、ホバリング位置誤差(2.1ft)についても、改善が確認された。ヘディング・ホールド(機首方位保持)は利用可能であり、試験間においても使用された。

本試験において使用された聴覚指示(オーディオ・キューイング)は、高く評価された。本試験において実施された触覚指示(タクトゥル・キューイング)(振動シート、腰ベルトおよびショルダーハーネス)は、主観的な評価である有用性(ユーザビリティ)アンケートにおいて、不適と評価された。操縦士からは、特に、1度に1つの軸だけが作動するようにすべきである、との要望があった。

1.0 序 論

1.1 DVE-Mプログラム

悪視程環境軽減(Degraded Visual Environment Mitigation, DVE-M)プログラムは、米陸軍研究、開発および技術コマンド(Research, Development and Engineering Command, RDECOM)が実施する科学技術事業である。DVEの軽減は、革命的な能力向上をもたらす潜在能力(ポテンシャル)を有しており、多様な戦場環境において、垂直離着陸機の運用者に戦術的優位性を与える可能性がある。本プログラムの目的は、先端技術を用いることにより、DVEにおける生存性を向上し、操縦士の意図に沿った操縦を可能にすることである。この目的を達成するため、DVE-Mプログラムは、3つの主要技術の開発および実証に取り組み、包括的なDVE航法の実現を図っている。それは、飛行に関するMCLAWS(Modernized Control Laws, 近代化制御方式)、複数のセンサーによるパイロット指示、および多重スペクトルで全環境に適合し、複雑な最新コンピューター基本設計概念をもって統合された「可視化」センサー・システムである。このS&T(science and technology,科学技術)の最終成果物は、効果的な装備を経済的に兵士に供給するための知識である。2016年にユマ性能試験場で実施されたRDECOMのDVE-MプログラムNATO(北大西洋条約機構)飛行試験の目標は、次のとおりである。

(1) 実戦的な環境(ブラウンアウト、砂塵、煙)において、最先端の統合操縦系統、センサーおよび指示システムを実証すること

(2) 質的および量的データを収集し、操縦士の能力向上や負担軽減に効果をもたらすDVE対策要素の確定を支援すること

(3) 時間的に同期された生データ(EGI慣性センサー、レーダー、LIDAR(laser imaging detection and ranging, レーザー画像検出と測距)、赤外線カメラ、カラー画像カメラ)を記録し、将来の科学技術事業に有益なデータを収集すること

1.2 参加機関

DVE-Mプログラムは、航空およびミサイル研究、開発および工学センター(Army Aviation and Missile Research, Development and Engineering Centers, AMRDEC)の航空開発本部(Aviation Development Directorate, ADD)により実施された。AMRDECは、米陸軍研究、開発および技術コマンド(Research, Development and Engineering Command, RDECOM)の隷下機関である。パイロット指示の部分は、陸軍研究所(Army Research Laboratory, ARL)が担任する。センサーの部分は、米陸軍通信電子研究、開発および工学センター(Communications-Electoronics Research, Development and Engineering Centers, CERDEC)が担任する。ADDは、飛行制御の部分を担任し、カリフォルニア州モフエット・フィールドの航空機およびシミュレーター器材を提供する。

この試験の実施に際し、飛行力学本部(Aeroflightdynamics Directorate,ADD-AFDD)、航空応用技術本部(Aviation Applied Technology Directorate, ADD-AATD)、米陸軍航空医療研究所(U.S. Army Aeromedical Research Laboratory, USAARL)および空軍研究所(Air Force Research Laboratory , AFRL)の技術支援を受けた。加えて、DVE-Mは、JCG-VLおよびNIAG193の研究を通じて、NATO諸国と調査、標準化および相互運用性に関する技術情報の交換を行った。

1.3 背 景

典型的なDVE環境には、夜間、霧、降雪、ブラウンアウト(ダウンウォッシュによる地表面付近における塵雲の生成)、およびホワイトアウト(ダウンウォッシュによる地表面付近における雪煙の生成)がある。塵雲の中では、操縦士は、地平線および地上の視覚的補助目標を失うだけではなく、その動きにより機体が動いていると錯覚しやすくなる。塵雲の視覚的な動きにより生じる強い自己運動(ベクション)感覚は、機体の地面に対する運動とは異なる方向に生じることがある。人間が自己運動を判断するために用いる主要な手段は、視覚的な運動の解釈であり、誤った運動指示を無視することは、極めて困難である。

米国国防総省は、2001年10月から2009年9月までの期間にわたる不朽の自由作戦(OEF)およびイラクの自由作戦(OIF)に関し、回転翼機事故の分析を行った(参考文献1、Couch、M.、Lindell、D. 、2010)。この間、70機の航空機が対敵行動により失われたのに対し、157件の航空機は、戦場における非戦闘状況下で失われた。145名の死者が対敵行動で発生したのに対し、219名の死者が戦場での非戦闘状況下で発生した。

戦場における非戦闘状況下における事故のうち、4件については、事故の発端となった要因が特定されている。本分析においては、事故の主因は秘として取り扱い、事故の引き金になった事象の連鎖がその主対象とされた。その結果を図1に示す。赤色で示された領域は、巡航飛行中に発生した人的要因による事故を示し、黄色で示された領域は、ELT(Effective Translational Lift, 誘導揚力効果)外のホバリングまたは低速度領域で発生した人的要因による事故を示す。青色の領域は、器材上の要因および火災により発生した事故を示す。人的要因は、戦場における非戦闘状況下における機体損失の79%および死者の80%をもたらした事故要因であった。この分析の結果によれば、人的要因は、必ずしも不適切な訓練によって生じたものではなく、操縦士が事故に繋がる事象や事象の連鎖を認識できなかった場合もあった、と指摘されている。

Number-of-U.S.-Combat-Non-Hostile-Rotorcraft-Losses-for-OEFOIF
図1  OEFおよびOIFにおける航空機損耗数(2001年10月~2009年9月) 、参考文献1、Couch、M.、Lindell、D. 、2010

図1が示すとおり、巡航飛行間における4大要因は、操縦ミスによる地形への衝突、空中衝突、ワイヤー・ストライク、予期せぬ天候急変等による計器飛行状態(DVE)での物件との衝突である。低速およびホバリング時における4大要因は、ブラウンアウトまたはホワイトアウトによるDVE、物件との衝突、利用可能出力以上の必要出力、操縦ミスによる操縦不能である。この分析では、「DVE」は、ブラウンアウトまたはホワイトアウトと定義されているが、夜間の視程不良によって発生する場合も多くあった。その分析成果によれば、事故の60%が夜間に発生している。

AFRLは、2009年から2016年に実施された飛行試験により、ブラウンアウト状態での着陸に関する技術的対策を開発するためのプログラムを開始した。その3D-LZ(3次元着陸点)プログラムには、AFRL(Burns Technologies LLC, Orlando, FL)が開発したLADAR視認・記憶センサー(図2)、陸軍ADDが開発したBOSS(BrownOut Symbology System, ブラウンアウト・シンボル・システム)(詳細は参考資料2-7を参照)が含まれている。この報告書の主題である試験用のシンボルのほとんどは、3D-LZプログラムの下で開発されたものである。

3D-LZ sensor and test aircraft
図2  3D-LZセンサーおよび試供機

2.0 試験手法

この項では、試供機の構成、試験場、操作、試験ポイント、および実証ポイントについて、詳しく説明する。

2.1 試供機

図3に示す試供機は、EH-60L改良型クイックフィックス(ヘリ搭載HF/VHF通信傍受・位置標定・妨害装置)型ヘリコプターであり、陸軍の固有番号は、87-24657である。装備されていたクイックフィックス機器の大部分は取り外され、新型のセンサー、操縦系統およびパイロット指示システムを支援するための試験用機器に置き換えられている。DVE試験用に搭載された機器は、エンジン・インレット・バリア・フィルター、慣性測定ユニット(ハネウェルH-764GU EGI)、デジタル表示仕様の陸軍APN-209電波高度計、尾部に搭載されたGPSアンテナ(各種システムに信号を供給)、2組の地形画像センサー、プログラム可能な飛行制御補強システム、プログラム可能な画像生成装置、画像配信システム、画像録画装置、音声生成システム、触感指示システム、およびデータ記録用航空計器である。全てのシンボルは、EGI、電波高度計およびトルク・センサーで駆動される。

EH-60L-Black-Hawk-test-aircraft
図3  EH-60Lブラック・ホーク試供機

2.1.1 地形画像センサー

3Dおよび2D(赤外線カメラ)センサーを持つ、2つのセンサー・システムが試験間に使用された。双方のシステムにおいて、3D地形/障害センサーのデータは、事前に保存されている地形標高データと融合され、ディスプレイ用の地形描画データベースに追加される。双方のシステムにおいて、3D地形/障害データは、GeoGridと呼ばれる着陸/ホバリング地点の周囲情報用の小領域地形標高データベースにも別個に保存され、誘導に利用される。実際には、結果の誤検出により、センサーで駆動されるリアル・タイムの誘導を利用することはできなかった。その代替として、事前に保存されている障害がGeoGridデータベース内に生成され、誘導アルゴリズムは、実際の障害物に応じて、継続的に操縦士を誘導した。双方のセンサー・システムにおいて、降着地域の障害物の高さが機体やローターに危害を及ぼす閾値を超えた場合は、図4および図5に示すとおり、黄色または赤色に人工的に着色された。

1つ目のセンサー・システムは、シエラ・ネヴァダ・コーポレーション (SNC)によって開発された。図4に示すとおり、SNCのセンサーシステムは、1台のレーダー(SNC, Sparks Nevada)、1台のLADAR(laser detection and ranging,レーザ探知測距“ライダー“)(Neptec Opal 120, Kanata Ontario Canada)、1台の赤外線カメラ(DRS 720p, Arlington Virginia)および事前に保存された地形標高データで構成されている。融合アルゴリズムへの赤外線カメラの入力は、ブラウンアウトが生成されたならば直ちに自動的に一旦停止し、高コントラストの渦巻く塵雲構造体を表示することにより、誤った操作を指示しないようになっていた。

2つ目のセンサーは、図5に示すとおり、アリート社により開発された。そのセンサーは、1台のLADAR(Areté, Colorado)、1台の赤外線カメラ(DRS 720p, Arlington Virginia)、および事前に保存された地形標高データベースで構成されている。画像融合アルゴリズムへの赤外線カメラの入力は、塵雲が発生し始めると、手動でコントラストを減少させ、ディスプレイに表示される塵雲の画像を弱めることができる。降着地域の障害物の高さが機体やローターに危害を及ぼす閾値を超えた場合には、図5に示すとおり、黄色または赤色に人工的に着色される。

SNC sensor system
SNC terrain image_image
図4  SNCセンサーシステムおよび地形イメージ
Arete sensor system_image
Arete terrain image_image
図5  アリート・センサーシステムおよび地形イメージ

センサー・システムは、シンボルに含まれていない障害物情報をディスプレイに表示した。センサー画像は、降着地域の地勢、機体姿勢および着陸点への接近速度に関する操縦士の状況把握能力を向上させるものと期待されていた。しかしながら、操縦士からは、誘導シンボルに従うための負担が大きい状況においては、地形/障害物画像を読み取る余裕はない、との意見があった。いずれのセンサー・システムにおいても、小さな障害物をディスプレイで確認することは、困難であった。操縦士からは、そういった小さな障害物を見やすくするように強調表示すべきだ、という意見があった。

2.1.2 試験用飛行制御システム

EH-60Lには、参考資料8および9に示すとおり、MCLAWS(Modernized Control Laws, 近代化制御方式)が導入されたPAFCA(Partial Authority Flight Control Augmentation,部分的飛行制御増大)システムが搭載された。PAFCAの設計目的は、既存のSASおよびトリム・アクチェーターを使用して、従来の航空機にMCLAWSを導入することにある。PAFCAシステムは、SAS/トリム・インタフェース・ボックス、プログラム可能なRFCC(Research Flight Control Compute, 試験用飛行制御コンピューター)およびコックピット・コントロール・パネルで構成される。SAS/トリム・インターフェース・ボックスには、標準搭載のAFCS(Automatic Flight Control System, 自動飛行制御システム)とRFCCの双方から、サーボ信号が入力される。ボックス内のリレーをコックピット・コントロール・パネルで切り替えることにより、どちらの指示をサーボに送るかを選択できるようになっている。機体状態に関するデータは、EGIおよびレーダ高度計から、RFCCおよびMCLAWSに提供される。

MCLAWSソフトウェアは、60knotまでのピッチおよびロールに関し、機体の応答モードをAFCSの基準レート・ダンピングからACAH(attitude-command/attitude hold , 姿勢指示/姿勢保持)応答モードに変更する。60knot以上においては、MCLAWSは、SASのようなレート応答タイプに切り替わる。MCLAW方向軸は、全ての速度領域において、RCDH(rate-command/direction hold, レート指示/方向保持)応答モードを供給する。ヘディング・ホールド・モードは、周波数分割方式を採用し、レート・ダンピングにはハイ・レートSASサーボを用い、ヘディング保持には、主として、より低速のトリム・サーボが用いられている。さらに、MCLAWSは、5knot以下で操縦士がエンゲージできるポジション・ホールド・モードを備えている。ポジション・ホールドをONにすると、機体は基準位置に移動するより先に、安定したホバリングに減速する。

PAFCAシステムは、また、HH-60G用のコレクティブ・トリム・サーボおよびコレクティブ・グリップを装備しており、垂直軸の増大をもたらしている。このコレクティブ・トリム・サーボの追加により、その指示は、SAS/トリム・インターフェースを経由せずに、MCLAWSまたは基準SAS/FPSシステムにより利用されることが可能となる。垂直軸の増大は、電波高度計、気圧高度計およびEGIの慣性高度計の3つの異なった高度情報を使用できる高度保持で実現される。そのシステムは、操縦士によりエンゲージされると、低速時の電波高度保持から、気圧または慣性高度保持に自動的に切り替わる。操縦士は、この自動選択を手動でオーバーライドすることができる。さらに、コレクティブ・トリム・サーボは、高度及び垂直速度指示をICE着陸誘導からMCLAWS垂直軸制御機構に伝達する、コレクティブ・カップリング・モードに利用されてきた。シンボルを動かすためにも、同じ指示が用いられていた。また、トリム・サーボは、垂直軸指示を自動的に満足させるように、コレクティブを作動させることができた。

2.1.3統合指示環境

図6は、右席の評価操縦士用に搭載された、10インチ・パネルを装備する2つのディスプレイ(Avalex Technologies, Gulf Breeze, Florida)を示す。これらのディスプレイは、フルカラー、直射日光対応、解像度1024×768であった。評価操縦士は、その座席の直前にある右側のディスプレイを飛行ディスプレイとして使用した。左側のディスプレイには、GeoGridセンサー・データの計画表示(プラン・ビュー)画面が表示されたが、評価操縦士は使用しなかった。

diagonal panel mounted displays
図6  評価操縦士用に追加された10インチのパネルを装備するディスプレイ

ICEには、エンルート(巡航)ページ(図7)とHAT(Hover/Approach/Takeoff, ホバリング・進入・離陸)ページ(図8)の2つのシンボル・ページがあった。エンルート・ページは、60knot以上でホバリングまたは着陸誘導がオフの場合に表示された。HATページは、全ての速度領域でホバリングまたは着陸ガイダンスがオンの場合に表示された。HATページは、また、航空機の速度が60knot未満の場合にも表示された。1.0NMからのホバリングまたは着陸地点までの間のすべての進入は、HATページで行われた。ICEシンボルの主要な要素は以下のとおり。

(1) 水平および垂直速度ガイダンスが、ホバリングまたは着陸までの進入間、平面図に明示された。同時に、航空機の現在の水平および垂直速度も示された。操縦士は、これにより、所望の速度と実際の速度との間の制御ループを閉じることができた。

(2) アプローチ中は、速度指標のスケールが変化しなかった。融合された線形および対数スケールを使用することにより、速度および位置スケールは、接地時に十分な表示精度(指示値は、1,2,4,6,8 、および10knot)を提供しつつ、広範な表示範囲(画面の上端で最大160knot)をもたらした。

(3) 通常、0.8NMの地点から80knotで開始された全ての進入は、単一のディスプレイに単一ページ(HAT)を表示させて実施された。

(4) 地表画像を取り込んだ斜視図(3次元)による疑似着陸点が、計器盤上のディスプレイに常に水平に表示された。

Enroute (Cruise) page
図7 疑似着陸点を表示したエンルート(巡航)ページ
Hover-Approach-Takeoff (HAT) page
図8 疑似着陸点を表示したHAT(Hover/Approach/Takeoff, ホバリング・進入・離陸)ページ

図9は、電波高度表示器の、ホバリング時に用いられる、上下に動く水平線と目標物の高度シンボルを表示するモードを示す。図10は、垂直速度テープと、垂直加速度によって駆動される予測垂直速度テープを示す。また、目標垂直速度を表す記号も示している。これらすべての垂直シンボルは、束にされて一緒に動作するようになっている。それらのシンボルは、サイクリックおよびコレクティブ・スティックの配置と一致するように、意図的に中央より左側に配置されている。

Radar altitude and target hover height symbols
図9  電波高度および目標高度シンボル
Vertical speed and target vertical speed symbols
図10  垂直速度および目標垂直速度シンボル

ICEシステムは、標準のICS(InterCommunication System, 内部通話装置)の音声チャネル4にオーディオ・ファイルの音声を入力する。ほとんどの音声メッセージは、音声合成装置で生成された。唯一の例外は、所望のガイド・スロープが途絶したり、障害物がクリアされために、目標垂直速度に変化が生じたことを示すチャイムである。

図11は、Engineering Acoustics Inc.(Casselberry、Florida)によって製造された触覚システムを示す。肩用の触覚器は、ショルダー・ハーネスに取り付けられたスリーブに組み込まれていた。シートクッションにも複数の触覚器が組み込まれ、一斉に振動するようになっていた。また、操縦士は、ウエストの周りに8つの異なる振動方向を持つベルトを装着した。このシステムについては、参考文献10〜12に詳しく述べられている。

Tactile system
図11  触覚システム

表1は、触覚システムの進入モードおよびホバリング位置保持モードを示す。触覚システムのモードは、進入からホバリングまでの飛行間は、常に進入モードとなるように、自動的に変更された。

Criteria for energizing tactors
表1 触覚システム作動基準

2.2試験の実施

この項では、ユマ試験場、飛行、および試験操縦士の構成について、細部を説明する。

2.2.1 ユマ試験場

図12は、Yuma Proving Ground試験場を示す。地表面は、砂質の土で覆われており、その土には、粒度が非常に細かいものが含まれている。地表面を定期的に耕し、粒子間の固着を少なくして、大きな塵雲が形成されるようにした。図に示すとおり、一部の進入においては、発煙器(スモーク・ジェネレーター)も使用された。定められた地域に小さな建物、柱、電線、ヤシの木、短い柱、地上の乗り物、ヘリコプターの機体、泥の山、溝などの障害物が、意図的に設置された。

Test site
図12  試験場

2.2.2 飛行要領

図13は、障害物がない場合の、一般的な進入から着陸までの飛行プロファイルを示す。主要な試験は、電波高度約200ftから飛行を開始し、着陸点から1.0NMの位置に設けられた試験開始位置を対地速度80knotで通過して行われた。飛行経路下に障害物がある場合と、無い場合の進入が実施された。障害物を検出した場合、垂直プロファイルを変更して操縦士を障害物を超えるように誘導され、それを超越(クリア)した後、新たな降下角度が指示された。接地時の垂直速度の基準は、運用マニュアルに示された制限値に基づいて設定された。接地時の前進速度の基準は、機体の降着装置の制限値よりも十分に低い速度に設定され、不整地での運用環境において、降着装置を損傷しないように速度が減少することを実証した。接地時の横方向速度の基準は、降着装置の制限値に設定された。着陸位置の限界範囲は、想定される最悪のEGI位置誤差が生じた場合であっても、障害物から十分な安全マージンもって離隔できるように設定された。低速度域においては、EGIの位置情報がWAASのGPS位置と比較され、その差が15ftを超えた場合には、操縦士に警告を発するようになっていた(試験間のいずれの着陸中においても、この状態が生起することはなかった)。

進入からホバリングまでの飛行試験は、30秒間の精密ホバリングを実施したことをもって完了し、それから離陸に移行した。これらの飛行においても、ホバリング位置から1.0NM離隔した試験開始位置を、電波高度200ft、対地速度80knotで通過した。表3は、ホバリング緒元(パラメータ)の望成基準と必成基準を示す。

Approach-to-landing maneuver with voice synthesizer audio cueing
図13 進入から着陸までの飛行要領(括弧内は、音声シンセサイザーによる音声指示)
Landing criteria
表2 着陸の基準
Hover criteria
表3 ホバリングの基準

2.2.3 評価操縦士

2016年の飛行試験には、全て35-46歳の男性である4名の評価操縦士(EP)が参加した。3名の操縦士は、O-4(少佐)の現役陸軍実験試験操縦士(XP)であり、もう1人は、陸軍民兵部に所属する元CW4(上級准尉)の試験操縦士であった。各EPの総飛行時間は、1500〜3100時間であった。H-60での飛行時間は、75〜2300時間の範囲であった。

2.3 試験マトリックス

2.3.1 主要試験ポイント

実験計画の主体は、被験者内計画(反復測定)であり、飛行制御応答方式、触覚指示、聴覚指示、および終了方式の4つの独立した変数の2×2×2×2の完全な組み合わせで行われた。各評価操縦士は、その組み合わせで得られる16個の個別の評価ポイントで飛行を行った。飛行制御応答方式は、EH-60Lに標準のSAS/FPSレート・コマンドまたはMCLAWS姿勢コマンド(ACAH)のいずれかで実施された。触覚指示と聴覚指示は、各タスクにおいて、オンまたはオフのいずれかで実施された。終了方式は、対地高度30ftのホバリングまたは着陸のいずれかで実施された。

前述のコレクティブ・カップリングの効果を評価するため、追加の試験が実施された。このコレクティブ・カップリングの試験は、コレクティブ・カップリング、飛行制御応答方式、および終了方式の3つの独立変数の完全な2×2×2の組み合わせで実施された。コレクティブ・カップリングは、ONまたはOFFのいずれかで実施された。飛行制御応答方式は、EH-60Lに標準のSAS/FPSレート・コマンドまたはMCLAWS姿勢コマンド(ACAH)のいずれかで実施された。終了方式は、対地高度30ftのホバリングまたは着陸のいずれかで実施された。触覚および聴覚指示は、いずれもONのままで実施された。

全ての試験ポイントの実施順序は、学習/練習効果を抑制するため、疑似ランダム化された。一貫性を維持するため、すべての試験ポイントにおけるDVE着陸地点までの飛行は、合成障害物とレーダー高度計による誘導を使用して行われた。機首センサーからの偽陽性データを防止するため、機首に搭載されたレーダーやLADARデータは、進入誘導には使用されなかった。使用した2つのセンサー・セットは、地形と障害物の背景画像をコックピットのディスプレイに表示した。航空機の可動状況により、センサー・システムの一方に関して計画されていたポイント数が削減された。また、もう一方のセンサー・システムにも信頼性上の問題が発生した。したがって、センサー・システムの方式は、独立変数として扱わないこととされた。すべての評価ポイントの飛行は、計器盤上のディスプレイを使用して行われた。

2.3.2 実証試験ポイント

この論文では報告されていない、23の実証ポイントが追加で実施された。大部分の実証ポイントにおいては、ヘルメット搭載ディスプレイが使用された。このディスプレイの性能は、以下の点で不十分であった。実像を見るときの光量の不足(ただし、視認可能ではあった)、実物よりも小さなセンサー画像、ボアサイト上の問題、および頭部の運動に対する追従の顕著な遅延である。ヘルメット搭載ディスプレイの使用に加えて、一部の実証ポイントにおいては70ft、70knotから、他の一部においては350ft、100knotで飛行を開始した。

2.3.3 制御不能の交絡変数

風は、操縦士の負担と飛行に最も大きな影響を与える制御不能の交絡変数であると考えられた。塵雲(ダスト・クラウド)が形成された時および視覚錯視の誤認の方向が変わった時に、風の影響を受けた。もう一つの制御不能の交絡変数は、前回の進入による着陸地点からの塵の除去であった。前回の進入後、風速がゼロに近いと、じ後の進入時まで埃が残存しやすかった。2つのセンサー・システムには、地形画像の特徴に差異があった。整備上の問題により、2つのセンサー・システムで同じ数の着陸およびホバリング飛行を行うことはできなかった。試験ポイントの大部分は、アリート社のシステムで実施された。もう一つの交絡変数は、アリート・センサー・セットの地形画像の品質が、電気的およびソフトウェア的な問題、および設定の変化のために、日々変化したことであった。

2.3.4 措置事項

この論文においては、着陸の客観的尺度として、接地時の位置、水平速度、垂直速度を用いる。着陸の主観的尺度としては、ICEのさまざまなコンポーネントの有用性評価と、ベッドフォード作業負荷スケール(参考文献13)を用いる。各条件を繰り返し実施して、評価に必要とされる一貫した性能を確認するための十分な飛行時間を確保することができなかったため、取扱い品質評価(参考文献14)は報告しない。
ホバリングの客観的尺度は、水平位置と高度であった。主観的な尺度については、着陸と同じであった。

3.0 すべての条件に共通の結果

この項においては、64回の接近-着陸と55の接近-ホバリング飛行における試験結果の全体像を示すため、条件(独立変数)の違いに関わらず、すべての評価ポイントについてその結果を示す。各条件間に見られた相違の詳細については、次のセクション4で説明する。すべての実証ポイントと着陸復行は、データから除外されている。評価ポイントにおいては6回、実証ポイントにおいては1回の着陸復行が行われた。それらの原因は、操縦士が進入の進捗やホバリングの保持に満足できなかったためであった。

3.1 着 陸

図14は、64回のブラウンアウト着陸において、EGIによって測定された接地位置データの分布を示す。1つのEGIが誘導およびシンボル表示を行っているため、そのデータは、操縦士が誘導された場所からどれだけ離れているかを示している。したがって、そのデータの分析において、EGIの位置誤差により操縦士が不利益を被ることはない。図が示すとおり、大部分の着陸は、望成基準の領域内に行われており、3回の着陸のみが必成基準の領域の外に行われた。すべての着陸は、EGIで測定した航空機の主ロータ直径内に行われた。

Touchdown footprint
図14  接地位置の分布(着陸回数64回)

表4は、64回の着陸の成果データをまとめたものである。ヘディング・ホールドが使用されていたため、データに機首方位は含まれていない。接地時の横方向距離については、基準が設定されなかったが、完全性を確保するため、データに含めている。

表4  64回の着陸の成果データの概要

図15には、6つの望成基準をすべて満たした着陸の割合(53.1%)が示されている(緑色)。黄色の領域(39.1%)は、少なくとも1つの必成基準内の測定値(パラメータ)を持ち、かつ、必成基準外の測定値がない着陸の割合を示す。赤色の領域(7.81%)は、少なくとも1つの必成基準外の測定値があった着陸の割合を示す。図が示すとおり、着陸の少なくとも92.2%は、6つの必成基準を同時に達成していた。1回の着陸は、縦方向距離について必成基準外であった(21.9ft)。2回の着陸は、横方向距離について必成基準外であった(最大13.5ft)。4回の着陸は、接地時の横方向速度について必成基準から外れていた(最大1.5knot)。

Percentage of 64 landings
図15 6つの必成基準すべてを達成した64回の着陸の内訳

3.2 ホバリング

表5は、55回のホバリング飛行のデータをまとめたものである。ホバリング位置からの水平および垂直距離誤差の2乗平均平方根(RMS)を計算し、記載したものである。

Summary performance data
表5  55回のホバリング飛行の成果データの要約

3.3 主観的有用性評価と操縦士コメント

操縦士には、全ての飛行を終了した後、指示システムの各種構成品(コンポーネント)の有用性(ユーザビリティ)の評価を行わせた。評価の集計を図16に示す。括弧内の数字は各項目の質問数を示す。全ての得点は、各質問の重み付けを等しくして平均化したものである。

Summary usability ratings
図16 有用性評価の概要(各点数を構成する質問の数)

2D(2次元)シンボルには、地上に固定されない状態で表示される全てのシンボルが含まれている。図16が示すように、2Dシンボルは、有用性に関し優れた評価を受けた(92%)。ある操縦士は、次のようにコメントした。「2DシンボルはICEの最も有用な部分である。視点を飛び回らせることなく航空機の状態を把握することができ、解読容易かつ論理的に情報を把握することができる」 大部分の操縦士は、進入初期の段階で表示される目標水平速度記号と目標垂直速度記号の間に大きな分離が生じるのは好ましくない、とコメントした。これらの2つのシンボルは、接地に近づくと画面の中央に収束する。

この誘導は、有用性アンケートにおいて、優良または優秀と評価された(83%)。このシンボルによる誘導は、進入間、理想的な水平および垂直速度を明示する。1人の操縦士は、「誘導シンボルは、操縦士に情報を提示するための非常に優れた方法であり、僅かな問題はあるものの、それに従うことが可能である」とコメントしている。もう1つのコメントは、「離陸時にもセンサーによる誘導を追加する必要がある」と述べた。3番目のコメントは、「飛行モデルを誘導に追加する必要がある」と述べた。

3D(3次元)シンボルは、疑似着陸点などの地面に固定された状態で表示されるシンボルである。有用性に関するアンケート調査では、3Dシンボルは大部分が良いと評価され(71%)、さらに7%が優秀と評価された。何人かの操縦士は、センサーとシンボル・ジェネレータの間の視界と時間遅延の不一致のため、進入中に疑似着陸点が大きく移動してしまった、とコメントした。地面に固定されたシンボルをセンサー・システムにより描画するようにすれば、不一致を解消できると考えられる。今後の試験における検討が必要である。1人の操縦士は、「着陸地点の地面勾配の判断に役立つ要素を追加してもらいたい」とコメントした。

聴覚指示は、有用性アンケートで、ICEの他のどの特徴よりも優れていると評価され、87%が優秀と評価し、7%が良いと評価した。1人の操縦士は、「聴覚指示は、非常に便利で、電源を切ったときに寂しくなった」とコメントした。操縦士全員が、聴覚指示を常時ONにすることを望んだ。

触覚指示は、有用性(ユーザビリティ)のアンケートで50%の評価を受けた。1人の操縦士は、「触覚指示は、操縦士に位置/速度誤差を警告するための「セーフティ・ネット」として最も貢献した(私が見逃していたものに注意を向けてくれた)」とコメントした。別のコメントは、「複数の軸から触覚指示を受けると、気が散ってしまい、全く使えなくなった」とコメントした。1人の操縦士は、「ホバリング飛行まで進入する際の触覚指示は、うまく統合されていない」とコメントした。これは、操縦士がホバリング位置に到着する前(進入モードからホバリング・モードに切り替わった後)に、その位置から外れたという指示を操縦士に行っていたことを意味する。一部の操縦士は、アクナリッジ(了解)ボタンを押すことにより、触覚指示を一時的に停止できることを望んだ。不要な警告を減少させるためのもう一つの方法として、飛行緒元が外れていても、正しい目標に向けて収束しつつある場合には、触覚指示をオフにするという方法もある。

4.0 結果の比較

この項では、試験の独立変数によって決定される操縦士の飛行と条件間の相違について詳しく説明する。

4.1 条件間の分散の分析

飛行測定値のデータ分析、各独立変数の主な効果、およびすべての相互作用を試験するための記述統計および反復測定分散分析(ANOVA)が含まれている。すべての独立変数には、2つの条件しかないため、その間隙を埋めるためのじ後の試験は不要であった。ANOVAに有意差(α= 0.05)が確認された場合、平均値および割合の差は、統計的に有意なものとして p値(緑色で強調表示)で示される。サンプル数が少ないため、0.07までの追加の p値を示しているものの、より多く、より多様な操縦士によるさらなる調査が必要であるため、 “やや重要”と評価した(黄色で強調表示)。

この報告において示されたデータを解釈する際には、以下の制約事項を考慮する必要がある。

(1) 評価操縦士のサンプル数が少なく(N = 4)、高度に訓練された試験操縦士であり、全陸軍操縦士の典型ではない。

(2) サンプル数が少ないため、効果を正しく認識するためには、統計解析上の制約が存在する。

(3) サンプル数が少ないため、結果をより広く一般化する際の信頼性に制約が存在する。

各変数の2つの条件に関し算定した、接地平均差分値(平均Δ)の半径方向誤差を表6に示す。コレクティブ・カップリングには、顕著な効果があった、F(1,3)= 15.626、 p = 0.029。コレクティブ・カップリングをONにした状態での接地時の平均半径誤差は、1.8ft(31%の差)であった。

また、各変数の2つの条件に関し算定した、接地平均差分値(平均Δ)の垂直速度誤差についても表6に示す。飛行制御応答方式は、顕著な差異をもたらした、F(1,3)= 10.615、 p = 0.047。MCLAWS条件は、接地時の平均垂直速度が10.3ft/min(9%の差)と小さい(ゼロに近い)。この差は、統計上は有意であるが、運用上は有意ではない。

Landing performance
表6  着陸飛行

表7に、ホバリング飛行のANOVA結果を示す。各条件間に顕著な差異はなかった。コレクティブ・カップリングには、顕著な効果があった、F(1, 3) = 8.864, p = 0.059。コレクティブ・カップリングをオンにした状態では、平均ホバリング水平RMS誤差がより低い(より良い)2.1ft(44%の差)であった。

Hover performance
表7  ホバリング飛行

4.2 ベッドフォード負担

各進入後に実施した操縦士アンケートの一部として、ベッドフォード負担に関する評価が収集された。MCLAWSとSAS / FPSの両方の飛行制御システムを使用して、障害物のない進入と障害物のある進入の双方を含む合計47回の進入が分析された。これらの評価は、図17および図18にプロットされている。赤い三角形はコレクティブ・カップリングが行われていない集合を示し、青い円はコレクティブ・カップリングが行われた集合を示す。星印(*)は特定の操縦士の平均スコアを示し、直線は特定の操縦士の最小および最高評価を示す。「A」は、聴覚指示がONであったことを示す。「T」は、触覚指示がONであったことを示す。

図17に示すとおり、障害物のない進入において、コレクティブ・カップリングを行った場合は、ベッドフォード負担の評価は3であったが、コレクティブ・カップリングを行わない場合は4以上であった。操縦士が答えなければならない質問によってベッドフォード負担スケールが構成されているため、評価が4から3に変化することは、作業負荷が悪化せずに減少したこと、および操縦士に追加作業を行う余裕があったことを示す。飛行制御応答方式(SAS / FPS vs. MCLAWS)毎の負荷評価には、ほとんど違いがないことに注目すべきである。
図18に示すとおり、障害物のない進入において、コレクティブ・カップリングを行った場合は、ベッドフォード負担の評価は3または4であったが、コレクティブ・カップリングを行わない場合は5以上であり、コレクティブ・カップリングを行った場合に負担が顕著に減少することを示している。こちらも、飛行制御応答方式(SAS / FPS vs. MCLAWS)毎の作業負荷評価には、ほとんど違いがないことに注目すべきである。

Bedford workload ratings for unobstructed approaches
図17  障害物のない進入におけるベッドフォード負担の評価
Bedford workload ratings for obstructed approaches
図18  障害物のある進入におけるベッドフォード負担の評価

5.0 結果の解釈

分析された64回すべての着陸は、計器盤上のディスプレイを使用することにより、埃の多い状態であるにも関わらず安全に実施できた。すべての着陸は、EGIによる測定値で、前方速度4.0knot、横方向1.5knot、垂直速度180ft/min以内であった。すべての着陸は、EGIによる測定で、着陸点から22ft以内であった。飛行結果によれば、評価ポイントでICEディスプレイを使用して、6回の着陸復行を安全に実施した。
着陸の92%が「必成基準」として定義された6つの基準すべてを満たした。

着陸飛行は、平均的にはより正確であった。

ホバリング飛行は、平均的にほぼ良好であったが、大きな偏差が生じる場合があった。

自動ホバリング・ホールドが利用可能であったが、操縦士がICEシンボルおよび手動制御を使用してどれくらい良好にホバリングを維持できるかを判断するため、意図的にオンにしなかった。DVEにおいては、ホバリング・ホールドの使用を推奨する。

コレクティブ・カップリングのONとOFFは、最大数の測定値に、最も大きな影響を与えた変数であった。接地時の平均半径方向距離誤差は、コレクティブ・カップリングをONにすることで、1.8ft改善した(31%の差)。コレクティブ・カップリングをONにすることにより、RMSホバー水平位置誤差2.1ftのやや顕著な改善(44%の差)が見られた。ベッドフォード・スケールで判定したとおり、操縦士は、コレクティブ・カップリングにより、負担を軽減できたとコメントしている。

ヘディング・ホールドがもたらす自動化により、操縦士は、ヘリコプターの1つの軸を制御する必要がなくなるのである。全操縦士が、ヘディング・ホールド機能を使用した。

聴覚指示システムは、タスク遂行能力にほとんど影響を与えなかった。主観的には、有用性評価において、87%が聴覚指示を「優秀」と評価し、7%が「良い」と評価した。多くの操縦士は、この試験で聴覚指示の電源を切った時、それがなくなると寂しくなると思ったほどであった、とコメントした。

触覚指示システムの有用性については、50%が「不十分」、さらに17%が「不満足」と評価した。触覚指示アルゴリズムには、更なる改良が必要である。特に、任意の時点で触覚システムの1つの軸のみが優先的にアクティブになることを操縦士は要求した。触覚を一時的にオフにするアクナリッジ・ボタンも要求された。

センサー・システムは、塵雲にもかかわらず、操縦全体にわたって地形と障害物の安定したイメージを提供した。操縦士は、ディスプレイ上の誘導指示に従うための負担が大きく、センサー画像を読み取る余裕がほとんどない、とコメントした。

6.0 結 論

ブラウンアウトによる悪視程環境において、地形画像センサー、パイロット指示、着陸用に改善された飛行制御について、その組み合わせを実証することができた。操縦士は、ICEディスプレイを主に使用して、各タスクを実施した。ICE指示システムを用いることにより、操縦士は、進入全体を通して、現在の水平方向および垂直方向の速度を明確に示され(誘導され)た。着陸、ホバリングおよび離陸の間、地形や障害物の画像が計器盤上のディスプレイに表示された。対照的に、窓の外の情景は、埃の動きによって、誤った強い指示(動き)をもたらし、操縦士が障害物を視認することを妨げた。操縦士は、ディスプレイに表示されている誘導指示に従うことに集中するため、センサー画像を見る余裕がほとんどなかった、と報告した。MCLAWSは、横および縦軸に関する飛行制御応答を改善したが、センサー画像を見る余裕を十分に増加するには至らなかった。ヘディング・ホールドは、有効であり、すべての進入とホバリングで使用された。コレクティブは、垂直方向の飛行経路誘導とカップリングされ、コレクティブ・カップリングの有無による進入の比較が行われた。ベッドフォード・スケールにより計測された操縦士の負担は、大幅に改善(1ポイント以上)し、ホバリング位置誤差の改善(2.1ft)も確認された。しかし、コレクティブ・カップリングおよびヘディング・ホールド(およびサイクリック・カップリングなし)では、操縦士がセンサー画像を見る余裕を得るためには、まだ不十分であった。

分析された64回すべての着陸は、計器盤上のディスプレイを使用して、埃の多い状態で安全に実施できた。すべての着陸は、EGIによる測定値で、前進速度4.0knot、横方向速度1.5knot、垂直速度180ft/min以内で実施された。すべての着陸は、所望の着陸点から22ft以内に行われた(EGIセンサーのドリフト誤差は含まれていない)。操縦士の決心による6回の着陸復行が、ICEディスプレイを使用して、安全に実施された。実証ポイントに関する成果は、この報告には含めていない。

聴覚指示は、有用性スケールで94%であり、良好または優れていると評価された。聴覚指示は、高度コールアウト、誘導モードの変更、飛行制御モードの変更、オーバートルクの注意と警告、地面付近での過度の垂直速度の注意と警告に限定されていた。聴覚指示は、誘導からの逸脱を操縦士に知らせるためには、意図的に使用されなかった。先行して実施された研究において、航空機が誘導から外れた際の聴覚指示が過剰である、というコメントが操縦士からあったためである。

触覚指示システムの有用性について、全体の50%が「不十分」、さらに17%が「不満足」と評価した。触覚指示アルゴリズムには、更なる改良が必要である。特に、任意の時点で触覚システムの1つの軸のみが優先的にアクティブになることを操縦士は要求した。誘導との更なる統合を図るとともに、アクナリッジした場合に触覚指示を停止できることが求められた。

参考文献

1 Couch M., Lindell D., “Study on Rotorcraft Safety and Survivability”; Proceedings of the American Helicopter Society 66th Annual Forum, Phoenix, AZ, 2010.

2 Szoboszlay Z., McKinley R., Braddom, S., Harrington, W., Burns H., Savage, J., “Landing an H-60 Helicopter in Brownout Conditions Using 3D-LZ Displays,” Proceedings of the American Helicopter Society 66th Annual Forum, Phoenix, AZ, 2010.

3 Harrington W., Braddom S., Savage J., Szoboszlay Z., McKinley R., Burns H., “3D-LZ Brownout Landing Solution,” Proceedings of the American Helicopter Society 66th Annual Forum, Phoeniz, AZ, 2010.

4 Savage J., Harrington W., McKinley R., Burns H., Braddom S., Szoboszlay Z., “3D-LZ Helicopter LADAR Imaging System, ” Proceedings of the SPIE Defense and Security Symposium, Orlando FL, April 2010.

5 Szoboszlay Z., Neiswander G., “A Comparison of Linear and Logarithmic Scale Display Designs for Rotorcraft Landing in Brownout,” Proceedings of the European Rotorcraft Forum, Milan Italy, 2011.

6 Savage J., Goodrich S., Ott C., Szoboszlay Z., Perez A., Burns H., “Three-dimensional landing zone joint capability technology demonstration,” Proceedings of the SPIE Defense and Security Symposium, DVE Sensors II, Baltimore, Maryland, May 2014.

7 Szoboszlay Z., Fujizawa B., Ott C., Savage J., Goodrich S., McKinley R., Soukup J.,“3D-LZ Flight Test of 2013: Landing an EH-60L Helicopter in a Brownout Degraded Visual Environment,” Proceedings of the American Helicopter Society 70th Annual Forum, Montréal, Québec, Canada, May 2014.

8 Fujizawa B., Tischler M., Ott C., Blanken C., “UH-60 Modernized Control Laws for Improved Handling Qualities in the Degraded Visual Environment”, Proceedings of the American Helicopter Society 70th Annual Forum, Montréal, Canada, 2014.

9 Fujizawa, B., Tischler, M., and Minor J., “Outer-Loop Development and DVE Flight Test Assessment of a Partial Authority Model-Following Control System for the UH-60,” Proceedings of the American Helicopter Society 72th Annual Forum, West Palm Beach, FL, May 2016.

10 McGrath J., Estrada A., Braithwaite M., Raj A., Rupert A., “Tactile Situation Awareness System Flight Demonstration Final Report.” USAARL Report No. 2004-10, U.S. Army Aeromedical Research Laboratory, Fort Rucker, AL, 2004.

11 Russell D., Keegan J., Ramiccio J., Henderson M., Still D., Temme L., Ranes B., Crowley J., Estrada A., “Pilot Cueing Synergies for Degraded Visual Environments,” USAARL Report 2016-10; U.S. Army Aeromedical Research Laboratory, Fort Rucker, AL, February 2016.

12 McAtee A., Russell D., Feltman K., Swanberg D., Statz J., Ramiccio J., Harding T., “Integrated Cueing Environment Testing: Pilot Cueing Synergies for Degraded Visual Environments,” USAARL Report 2017-04; U.S. Army Aeromedical Research Laboratory, Fort Rucker, AL, November 2016.

13 Roscoe A., Ellis G., “A Subjective Rating Scale for Assessing Pilot Workload in Flight: A Decade of Practical Use,” Royal Aerospace Establishment, Bedford, UK, 1990.

14 Cooper G., Harper R., “The use of pilot rating in the evaluation of aircraft handling qualities,” Technical Report TN D-5153, NASA, April 1969.

共著:
ブラッドリー・デイビス(Bradley Davis)、米陸軍研究所(Army Research Laboratory, ARL)
 少佐 マイケル・オズモン(Michael Osmon)、米陸軍航空開発本部(Aviation Development Directorate)
 少佐 ジョセフ・マイナー(Joseph Minor)、米陸軍航空開発本部(Aviation Development Directorate)
 少佐 ザカライア・モーフォード(Zachariah Morford)、米陸軍航空開発本部(Aviation Development Directorate)
 ブライアン・フジザワ(Brian Fujizawa)、米陸軍航空開発本部(Aviation Development Directorate)

出典:Degraded Visual Environment Mitigation (DVE-M) Program, Yuma 2016 Flight Trials, U.S. Army Aviation Development Directorate
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:公開されている原文ファイルへのリンクは、こちらです。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    非常に専門的な報告書なので、翻訳にかなり苦労しました。統計学的な記述など、翻訳した私にも良く理解できていない部分があります。用語の訳し方も、不適切なものがあると思います。お気づきの点があれば、コメントを頂けると助かります。

  2. 管理人 より:

    原文ファイルのリンクを修正しました。




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