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異臭による予防着陸

上級准尉2 ロバート・L・ノトン
第126飛行大隊第3中隊
マサチューセッツ州陸軍州兵
マサチューセッツ州ケープコッド

play it safe

ニューハンプシャー州ホワイト・マウンテンズのある晴れたさわやかな日、我々はUH-60Aで有視界飛行を行っていました。機長と私は、陸軍州兵コンコード陸軍航空支援施設で山岳飛行訓練を終えていました。その日は風が弱く、強風が吹くことで有名なワシントン山の頂上にある着陸点において、山岳地進入を訓練するのに問題はないと考えられていました。

後席には誰も乗っておらず、窓から太陽の光が差し込んでいたので、ヒーターを作動させる必要はありませんでした。このため、機内の空気は、ほどんど循環していない状態でした。何回かの進入の後、着陸点の上空でホバリングしていた時、私が座っていた右席側の小さなベント口が開きました。その時、機長は、何か異臭を感じたようでした。私は、ベント口を閉じ、自分は何も気づかなかったと答えました。

我々は、近くのツイン・マウンテン空港に着陸して、機体を点検することにしました。着陸するために速度を下げ、転移揚力が得られるようになった時、我々のどちらもが、プラスティックが燃えるような臭いに気づきました。その時点まで、コックピット内で異常は見られず、エンジン計器は全て制限値内を示していました。

着陸すると直ちに、私は、臭いから考えて、電気的な問題が発生しているのではないかと機長に言いました。機長は、原因を探るために機体の外を一周し始めました。ところが、機長がそれを終えると同時に、キャビン右後方のレスキュー・ホイスト付近から煙が機内に吹き込み始めたのです。機長は、直ちに左席に乗り込みました。我々は、両方のエンジンを緊急シャットダウンしてから、機外に脱出しました。

幸運なことに、近くに別な航空機が飛行しているはずでした。煙がコックピット内から消えた後、HF無線機をバッテリーで駆動し、彼らと連絡をとりました。その航空機がこちらに向かっている間に、No.2エンジン・カウリングを開けて点検を行いました。すると、エンジンとHIRSS(hover infrared suppressor system, ホバリングIRサプレッサー・システム)のバッフル・ディスワーラー(エンジン排気温度を下げ、エンジン高温部を隠すための部品)をつないでいるVバンド・クランプ(断面がV字型の部品固定用バンド)が外れているのを発見しました。よく見ると、エンジンとHISSの間に1インチ(2.5センチ)ほどの隙間が生じていました。我々が気づいたのは、No.2エンジン・カウリングのガスケットが溶けた臭いだったのです。

そのもう1機のブラックホークは、我々の機体の後方に着陸し、エンジンをシャットダウンしました。その機体のパイロットは、我々の機体のところまで歩いてくる途中で、滑走路上に金属製のフィンが落ちているのを見つけました。それは、ディスワーラーから脱落したフィンであることがすぐに分かりました。幸運なことに、その別な機体の機長は、我々の部隊の整備担当将校でした。損傷状況を確認した彼は、損傷個所の撮影を行いました。その機体に鍵をかけた我々は、じごの機体の管理を空港警察署に依頼しました。機体は、その2日後に回収されました。調査の結果、No.2エンジン・カウリングおよびHIRSSバッフル・ディスワーラーの損傷が確認されました。また、エンジン・コンパートメント内のシート・メタル(金属薄板)も損傷していました。

この事案において、事故の発生を回避できたのは、平時であることを踏まえ、安全第一で行動したからにほかなりません。本件においては、適切な場所に着陸したことにより、巨額の一時配当金を得ることができたのです。考えたくもないことですが、もし、そのまま漫然と部隊に向けて飛行を続けていれば、大きな損傷が発生した可能性があったのでした。

出典:KNOWLEDGE, January 2018, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    本記事の原題は、「Play it Safe(安全第一)」なのですが、「異臭による予防着陸」と変更させていただきました。
     私は、昔、「予防着陸」という言葉は、「緊急着陸」や「不時着」と言いたくないがための言い訳のような言葉であり、容易に使うべきではないと思っていた時期がありました。しかし、今は、航空事故と言う最悪の事態を避けるため、もっと積極的にこの言葉を使い、パイロットたちに無理な判断を強いない環境を作ることが重要だと思っています。
     もちろん、そもそも「予防着陸」の必要が事態が生じないようにしなければらないことは、言うまでもありません。