「イーグル・クロー作戦」を翻訳・出版しました
2024年2月15日(予定)、在イラン・アメリカ大使館からの人質救出作戦に関する歴史書である「イーグル・クロー」作戦を翻訳・出版しました。
この経験を今後に活かすため、その経緯などをまとめておきたいと思います。
原書との出会い
2021年8月30日、2020年3月24日に発売されていた「Operation Eagle Claw 1980」をAmazonから購入しました。良くは覚えていないのですが、以前に翻訳・出版した「ドリーム・マシーン」の中で、V-22オスプレイ開発のきっかけとして大きく取り上げられていたこの事件について詳しく知りたいと思ったからだと思います。
原書を手にしての第1印象は、図や写真が多く、重要な場面を描いた絵と元外交官らしい簡潔な英語がすばらしいと思いました。そして、そこに表されているアメリカ人の強烈な意志に圧倒されました。
翻訳・出版の開始
「ドリーム・マシーン」を翻訳・出版したあと、次の作品を手掛けるつもりはまったくありませんでした。本を翻訳するという作業は、現役の頃に無理やり参加させられたフル・マラソンに匹敵するつらい体験だったからです。
その気持が一変したのは、2021年12月10日に「予備役ブルーリボンの会」が開催したシンポジウムのことでした。パネリストの織田邦男元空将が「イーグル・クロー作戦」はアメリカにとって「自衛権の行使」であったというお話をされたのです。
「もういちど翻訳・出版をやろう」という気持ちが沸き起こったのは、その時のことでした。
翻訳
翻訳に際しては、「ドリーム・マシーン」の教訓を最大限に活用しました。その内容は、こちらの記事に記載しています。
原文は、2021年12月25日に購入した「Operation Eagle Claw 1980」のKindle版から取り出しました。こちらの記事に記載されている「ハイライト」機能を使いました。
翻訳メモリには、「OmegaT」を使用し、2021年12月27日に新規プロジェクトを作成しました。Google翻訳に下訳をさせ、本訳を完了したのは2022年8月16日でした。「The Dream Machine」のページ数が454ページだったの対して、「Operation Eagle Claw 1980」のページ数は80ページ。用紙サイズを考慮しても約4分の1の量でしたので、期間はかなり短くなりました。
翻訳に際しては、索引を先に翻訳するようにして用語の統一を図りましたが、やはりGoogleの下訳にだまされてしまった場合があり、最後の最後まで校正に手間取りました。特に人名は要注意です。
「イーグル・クロー作戦」は統合作戦なので、海空軍に関する記述も多く含まれています。元陸上自衛官の私には不安な部分が数多くありましたので、Wordpressに移植して2022年8月23日~10月4日までの間、パスワード付きで公開し「予備役ブルーリボンの会」会員の方などに用語のチェックをしていただきました。
「パーレビ国王」、「大使公邸」、「デルタ」、「尾部とローターの折り畳み」、「ゴム製ブラダータンク」、「ハブーブ」、「士官」、「国際標準時」、「サイレンサー付拳銃」、「地上誘導員」、「2個編隊」、「アラーム」、「祖国から遠く離れた地域で」などの用語は、これらの方々からのアドバイスを踏まえて修正たものです。ご協力をいただいた方々に感謝申し上げます。
特殊作戦部隊に関する用語については、「ヴィジュアル版世界特殊部隊大全」(原書房)を参考に修正をしました。
出版
出版社については、何の迷いもなく、「ドリーム・マシーン」でお世話になった鳥影社様にお願いすることにしました。今回も編集者の方に懇切丁寧な対応をしていただき、校正も細かいところまで気を使って行っていただきました。大変満足しています。
2022年8月22日に出版の検討をお願いし、9月21日に出版可能の連絡をいただきました。出版時期はもっと早くに可能とのことでしたが、出版費用を貯金するため遅らせてもらいました。2023年6月22日に出版契約を締結、2023年6月30日に初稿入稿、2023年8月31日に初稿原稿を受領、10月23日に再校原稿を受領、11月15日に念校原稿を受領、12月21日に最終校を受領しました。
2024年1月4日に最終校の確認を送付したのですが、その後、「ホメイニ師の賓客」にイーグル・クロー作戦のことが詳しく書かれていることを発見して読んだところ解釈に誤りがあったところがあったので、1月14日に無理を承知の上で最後の修正をお願いしました。ありがたいことに快く対応をしていただき、心残りなく出版を待つことができました。
反省事項
「用語の統一」は、なかなか難しいことを改めて痛感しました。「索引を先に翻訳する」という方法は有効ではありましたが、完全ではありませんでした。翻訳後に索引に掲載されている原文を再検索して、訳語の統一をチェックする必要があります。
「関係書籍の収集」も不十分でした。「イーグル・クロー作戦」を表題にした和書がないことが原因ですが、さらに深掘りして捜索すべきでした。「ホメイニ師の賓客」(早川書房)や「対テロ特殊作戦部隊を作った男」(ABC出版)をあらかじめ読んでおけば、翻訳の大きな助けとなったはずです。
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