AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

油断との闘い

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雪と氷。それは季節や運用環境によっては珍しくない気象ですが、パイロット、整備員および運航要員にとっては追加の計画立案や作業が必要になります。特に派遣中においては、任務遂行可能な航空機を常に維持しなければならないため、それに関する予報は大変重要なものとなります。さらに、医療搬送チームとして勤務する場合は、患者の状態によっては、15分以内に離陸することが作戦規定で求められています。雪や氷を除去する施設がない場合に、着氷のない、任務準備を完了した状態の機体を確保するためには、温度管理されたクラムシェル・ハンガーに格納するしかありません。それは単純な作業ではありますが、搭乗員や整備員にとっては、すでに忙しい勤務をさらに忙しくすることになります。そして、通常それは兵士たちがベッドに入る前の最後の仕事になります。

雨、雪および凍結が予報されていたある暗い夜、搭乗員であるパイロットと整備員がUH-60をハンガーに牽引するために集まってきました。彼らは、ブレード監視員が4名、資格を有するけん引車操縦手が1名、航空機のブレーキ操作員が1名、クラムシェル・ドアの開閉操作要員が1名で構成されていました。全員がこの作業の訓練を受け、適切な基準と手順を熟知していました。しかし、その日常的な作業を行おうとしていた時、搭乗員には慣れた作業だという油断と勤務を早く終わらせたいという焦りがすでに忍び寄っていたのです。

航空機をクラムシェルに格納する際、クラムシェルのドアの確認を怠り、メイン・ローター・ブレードの1枚がドアに衝突しました。この事故は重大事態として指揮官に報告され、当該航空機を運用停止し、調査を実施し、そして関係者全員で追加の業務を行わなければなりませんでした。幸いなことに、点検の結果、ブレードに損傷はなく、継続使用が可能であると判断されました。クラムシェル・ドアにも損傷がなく、機能に問題がないことが確認されました。

搭乗員の慢心や不注意、そして作業を急いだことが、戦闘力の損失や部隊の士気に大きな影響を及ぼしました。調査の結果、関与した兵士の基準の適用や実行に不備があったことが明らかになりました。 具体的には次のとおりです。

それ以外に、照明が不足していたことや、クラムシェル・ドアのモーターや外部発電機が大きな騒音を発していたことも影響を及ぼしました。これらの事象の連鎖は、任務能力の低下につながる事故をもたらす可能性がありました。しかし、最も重大な過ちは、明らかに安全でないまたは間違った行動をとる兵士に対し、直ちに基準に従った修正を行おうとしなかったことでした。速度を出しすぎていたけん引車操縦手や、不適切な位置にいたブレード監視員、航空機のブレーキを操作できる場所にいなかったブレーキ操作員、あるいは重要な任務中に音楽を聴いていた兵士に注意することは、搭乗員の誰もができたはずでした。

これらの兵士全員に対し、航空機をクラムシェル・ハンガーに牽引する際の適切な手順について再訓練が行われました。その際に特に強調されたのは、安全は階級に関係なく全員の責任であること、そして基準違反が認められた場合には直ちに是正しなければならないことでした。また、視界が制限される時間帯に航空機を牽引する兵士たちにはヘッドランプの着用が義務付けられ、騒音の多い場所で危険を知らせるためのホイッスルも支給されました。 これは同様の事故の再発を防ぐための処置です。この訓練のおかげで、慣れによる油断を生じさせないように地上搬送の基準が強化され、飛行場で働くすべての兵士により安全な作業環境をもたらすことができました。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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