AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

把握できていなかったワイヤーへの接近

上級准尉2 ディーン・バクスター
第2-50戦闘航空旅団
テキサス州フォート・ブリス

航空事故や危うく事故になりかけた事例の多くは、新米パイロットの頃に教えられた手順を実行しないことで生じています。時が経ち、経験を積むにつれて、これらの基本的事項を見過ごすようになるからです。それが原因で壊滅的な結果がもたらされる場合も少なくありません。任務が進化し、そのための準備期間が短縮される中、飛行を安全かつ成功裏に終わらせるためには、それを見過ごさないことが欠かせません。

この不安全を経験した当時、私はテキサス州フォート・ブリスで上級パイロット(副操縦士)として勤務しながら、機長になるための道を歩んでいました。私の部隊は、その駐屯地で唯一のCH-47部隊だったので、さまざまな野外演習を常に支援するのに忙しい毎日を送っていました。機長を目指していた私は、別の副操縦士とともに、数日後に行われる2機編隊での夜間の空中機動作戦の計画主務者という役割を与えられました。それぞれの航空機には、経験豊富な副操縦士と教官操縦士が搭乗することになっていました。

その任務は単純明快なものでした。H時に2機のCH-47が所定の降着地域(LZ)に地上部隊を投入した後、夜遅くに予想される離脱要請に備えた態勢を取ることになっていました。もう1人の副操縦士と私は、教官操縦士の監督の下、任務のための飛行経路の計画などの準備を始めました。しかし、出発時刻が近づくにつれ、LZの位置が変更になったり、予報されていた風向が変わったりしたために飛行経路の変更が必要となり、任務当日の夜になっても計画の修正が続いていました。最終的には、搭載地域(PZ)から降着地域(LZ)までほぼ一直線の、約3分間の経路を飛行することになりました。

両方の機体がPZに着陸し、搭乗および離陸準備を完了するまでは、すべてが問題なく進行しました。私は長機として飛行していました。LZまでの飛行経路は短いので、短時間で任務が終わることが分かっていました。定刻に目的地に向かって離陸しました。長機を操縦していた私からは分かりませんでしたが、LZに近づいたとき、長機よりもやや低い高度を飛行していた2番機が、間一髪で電力ワイヤーを発見し、出力を上げて危険を回避したのです。着陸後、私は2番機からワイヤーが見えていたかどうかを尋ねられました(見えていませんでした)。そして、エンジンがオーバートルクした可能性があるため飛行場に戻るという報告がありました。私は、把握できていなかった障害物にもう少しで衝突するところだったのです! 死亡事故ではなく、不安全で済んだのは、単に運が良かっただけでした。

教訓

この不安全はいくつかの教訓を与えてくれました。中でも最も重要なのは、基本を忘れないということです。適切な飛行経路を計画するための基本的事項はパイロットになりたての頃に教えられることですが、この訓練任務では明らかにそれが見過ごされていました。飛行経路の方向と位置が複数回にわたって変更されたため、私たちは地図上に明確に示されているワイヤーの真上を通過するように飛行経路を計画していたことに気づかなかったのです。

砂漠の訓練場での夜間の飛行は照明が乏しく視界も悪かったので、危険に気づくことができませんでした。幸運なことに2番機は間一髪でそれに気づいたので、回避できたのです。この不安全は、何度も飛行したことのある、日頃から利用する訓練地域で発生しました。私たちはその場所をよく知っていたはずです。何年も前に学んだ基本的事項を怠ったことが、単純な訓練演習でさえ(自分の庭先でさえ)壊滅的な結果を生じさせるかも知れないのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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