AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

アビエーション・ネットワークとミッション・プラニング

マイケル・チャンドラー

アビエーション・ネットワーク及びミッション・プラニング・プロダクト・ディレクター・オフィス(Product Director’s office for Aviation Networks and Mission Planning, PDANMP)は、高度な相互運用性を有する最新の任務計画ツールを陸軍航空科職種に提供することにより、操縦士の状況把握及び指揮・統制能力の向上及び安全性の確保に貢献しています。

アビエーション・ミッション・プラニング・システム

特にミッション・プラニング・ツールの開発、配備、維持及び改善については、ハードウェア及びソフトウェアの日進月歩の技術革新を速やかに取り入れ、任務遂行の容易化を図っています。

アビエーション・ミッション・プラニング・システム

アビエーション・ミッション・プラニング・システム(Aviation Mission Planning System, AMPS)は、指揮・統制、戦闘予行、飛行計画等の飛行任務計画業務を自動化し、戦闘力の組織的発揮を可能にするツールです。

AMPSの導入により、陸軍戦闘指揮システム(Army Battle Command Systems, ABCS)等と連携した航空科部隊指揮官の継続的な状況把握及び任務計画の迅速な調整・下達が可能となります。また、AH-64A/D、CH-47D/F、OH-58D、UH-60A/L/M/Q、HH-60L/M、無人航空機システム等の陸軍航空機に搭載されている通信、航法、状況把握、および兵器システムの有効性を向上できます。 現在、AMPSには陸軍ポータブル・フライト・プラニング・ソフトウェア(Army Portable Flight Planning Software, PFPS)がインストールされ、操縦士による機体搭載システムへの航法、環境、性能及び敵情データの入力が集約的に実施できるようになっています。2014年度には、改良型のPFPSが「Ⅹ-プラン」と名づけられ、部隊に配布される予定です。

Ⅹ-プランは、機能的には従来のPFPSと変わりませんが、ワークフローの改善と統合性の向上が図られ、「Microsoft Office 2010」の外観や換作性が取り入れられています。また、X-プランは、プログラム事務局、航空局、米国特殊作戦コマンド及び空軍と共同開発されており、国防総省の全てのユーザーが利用可能であり、特殊作戦機、地上戦術車両及び人員にまで、その利用範囲を広げられる性能を有しています。

X-プランを使用することにより、航空、地上及び海上における計画ツールとしてのAMPSの価値が非常に高まり、戦術的地形可視化システムを活用し、ユーザーが要求したルートを3次元ビューでリアル表示することが可能となります。AMPS用のハードウェアは、2013年度の初めに更新が開始され、性能の向上及び航空ユーザー用内部データ保存領域の拡大が図られています。VT MILTOPERLC-3Gと呼ばれる新しいハードウェアは、従来よりも通常のラップトップ・パソコンに近い形状をしており、15.4インチのディスプレイ、2.53GHzのIntel Core2 Duoプロセッサ、4GBのRAM、および512MBのATI Radeonビデオカードを装備しています。さらに、640GB内蔵HDDを2台装備しているため、外付HDDが不要で、秘区分に応じて使用することが可能となっています。

AMPSは、任務計画及び戦闘予行ツールとして、ほぼすべての陸軍航空機に欠かせないものとなっています。近い将来のソフトウェアおよびハードウェアのアップデートにより、より多くのユーザーがAMPSの任務計画及び戦闘予行機能の恩恵を受けられるようになるでしょう。また、航空機の複雑化、戦術ネットワークの成熟及び国外展開のさらなる増加に伴い、陸軍航空業務におけるAMPSの役割は、ますます増大してゆくことでしょう。

改良型データモデム

改良型データモデム(Improved Data Modem, IDM)は、陸軍航空をデジタル化するための各機種共通の器材です。IDMのルーツは、1991年の近接航空支援用近距離データ通信要求性能に基づいて設計された改良型航空目標ハンドオーバー・システム(Enhanced Airborne Target Handover System, BATHS)にさかのぼりますが、今日の命令・統制及び状況把握用データの送受信に関する要求事項は、BATHSの時代よりもかなり高度なものとなっています。

IDMは、インターネット・コントローラー及び航空機用戦術インターネット及び火力支援インターネットへのゲートウェイとして機能します。IDMは、まだ開発途上の装備品でありますが、最終的にはデジタル化された陸軍、統合及び共同航空科部隊の間で、センサ、状況把握及び戦術データを共有できるデジタル伝送網を構成することを目標としています。機体蕗載の任務用コンピュータと無線機の間の重要なインターフェイスとして、従来のVHF及びUHF無線機に加えて、味方追尾装置(Blue Force Track, BFT)をサポートしており、将来的には、BFT-2もサポートする予定です。

IDMは、前述の航空科部隊と連携するための通信変調/復調、データベース処理、メッセージ処理を実行できる単一のライン交換ユニットとして、戦場における指揮・統制手段の多重化に貢献します。

デジタル化された陸軍航空が有する指揮・統制及び状況把握に関する統合上の問題を解決するため、IDMは、旅団以下戦力戦闘コマンド(航空)(FBCB2-Air)、空軍アプリケーション・プログラム開発(AFAPD)、可変メッセージ・フォーマット(VMF)、および改良型野戦砲兵戦術データシステム(AFATDS)等のシステムとデータ連接します。IDMのデータ連接機能は、戦場における戦闘力の相乗効果を向上するとともに、操縦士に目標データをタイムリーに提供し、指揮官の統制及び状況把握を容易にして、友軍相撃の防止に貢献します。

悪視程環境(DVE)システム

悪視程環境(Degraded Visual Environment, DVE)システムは、回転翼機の飛行センサーを改善するために開発中のシステムであり、悪視程痍境下においても、搭乗員が着陸点の状況を正確に把握し、航空機を安全にコントロールできるようにするものです。

DVEシステムを利用することにより、悪視程環境下における離陸、ホバリング、着陸において、地形及び障害情報をリアルタイムで換縦士に提供できるようになります。

陸軍操縦士は、戦闘及び訓練実施間にブラウンアウト、ホワイトアウト及び気象現象による重大な視程障害に遭遇し、搭乗員が視認できない自然・人工の障害・危険物に接近してしまう危険性があります。この視程障害を克服するため、航空機搭乗員は、危険性を軽減し、あるいは危険に対処するための戦術、技術及び手順(tactics, techniques and procedures, TTPS)の習得に努めていますが、悪視程環境は、人員・装備の損失及び戦闘効果の減少をもたらす重大な課題として存在し続けています。

我々DVEチームの当面の目標は、操縦士の状況把握能力と航空機の安全性を向止させ、戦闘効率を向上させるシステムを開発することです。これらの目標を達成するため、航空謬甲グラム・エクゼクティプ・オフィス、エアウオリアー・プロジェクト・マネージャ、航空用暗視眼鏡及び電子センサ事業部、国防総省国防高等研究事業局等の関係各部門が相互に協力し、DVEシステムの要求性能を満たす技術開轟に努めています。

DVEシステムを飛行運用において完全に活用するためには、アクティブ・センサ技術の採用、飛行制御システムの改善、飛行シンボルの統合等の方策を組み合わせることが必要です。アクティブ・センサ技術は、着陸、ホバリング、離陸及び水平飛行状態の各飛行モードにおいてパイロットの視界を制限する気象障害の克服を可能にします。要求される性能を満足するためには、各種スペクトル・センサの導入等の新しい技術の探求が必要です。将来のDVEシステムの主要構成品は、多種多様なセンサに対応しなければなりません。センサ技術の発達に伴うインターフェイスの共通化及びプラグ・アンド・プレイ能力の向上により、高性能センサ及び複合センサとデジタル標高データとの連携が可能となり、飛行運用に必要なリアルタイム画像を換縦士に提供できるようになるでしょう。

陸軍回転翼機のこれらの気象障害克服技術の統合は、搭乗員の生命を守り、装備品の損傷を防止するとともに、航空科部隊指揮官に現代の戦場にふさわしい飛躍的な戦闘力の向上をもたらすに違いありません。

マイク・チャンドラー氏は、アラバマ州レッドストーン補給処に所在する航空プログラム・エクゼクテイブ・オフィス航空システム・プロジェクト・マネジメント部の航空ネットワーク及びミッション・プラニング室の室長です。

           

出典:ARMY AVIATION, January 2012, Army Aviation Association of America 2012年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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