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陸軍航空の情報センター

飲み過ぎはどのくらいから? アルコール使用と依存症

大尉 ブライアン・ヒメネス・アリセア医学博士
大尉 アントワナ・ドレイトン心理学博士

Q: 私はたまに飲酒を楽しんでいますが、陸軍航空科隊員にとって、どの程度が飲み過ぎなのでしょうか? 日頃から注意すべきことは何でしょうか? 自分や同僚がアルコール問題を抱えている疑いがある場合、どうすればいいでしょうか?

航空医官: アルコール消費が文化として根付いている集団は少なくなく、軍もその一つです。そこでの勤務で生じるストレスや仲間意識は、社交的な飲酒につながりやすい傾向にあります。軍の中でも、高度な専門性が要求される航空職種などでは、アルコールのリスクを理解することが特に重要です。詳しく説明しましょう。

飲み過ぎはどのくらいから?

疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention, CDC)は、男性が日常的に摂取する適度な飲酒量は1日2杯まで、女性は1日1杯までと定義しています。一方、過度な飲酒(ビンジ飲酒)は、一度に女性は4杯以上、男性は5杯以上を摂取することと定義されています。適度な飲酒は必ずしも危険ではありませんが、たとえ少量であっても航空業務に不可欠な認知機能や運動機能に何らかの影響を及ぼす恐れがあります。

陸軍航空では、その影響がより深刻です。研究によると、血中アルコール濃度がわずか0.02%の場合でも、能力の低下をもたらし、反応時間、意思決定、協調性に影響を与える可能性があることが示されています。アルコールによる一時的な影響(方向感覚の喪失、注意力散漫、二日酔いなど)は飲酒後最大48時間にわたって継続する可能性があり、任務遂行能力を著しく低下させます。慢性的なアルコール使用は、航空業務の安全な遂行に悪影響を及ぼすと断言できます。

警告サインの認識

アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder, AUD)は、悪影響があるにもかかわらずアルコール使用をコントロールできない医学的状態です。この状態の重症度は、DSM-5-TR(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 精神疾患の診断・統計マニュアル)に従って判定されます。2~3個の項目に該当するアルコール使用障害は軽度、4~5個の項目に該当するものは中等度、6個以上の項目に該当するものは重度に分類されます。その症状には、過剰使用、使用量削減の失敗、渇望、社会、職業もしくは休養に障害を生じているにもかかわらず繰り返される使用、耐性、または離脱症状などが含まれますが、これらに限定されません(DSM-5-TR)。具体的な症状や治療方法の細部については、航空医官または行動医療センター(behavioral health provider)にご相談ください。

心配な場合の対処法

自分や同僚がアルコール依存症を発症しつつあると疑われる場合は、以下の手順に従ってください。

自己反省する: 飲酒量を減らそうとして失敗したことがあるか、または飲酒が業務や人間関係に影響を与えているかを自問してください。

対話する: 同僚について心配がある場合は、個別に話しかけ、判断せずに心配に思っていることを表明してください。非難するのではなく、具体的に気づいたことを話すことが重要です。

専門家の助けを求める: 所属部隊の航空医官または薬品等使用障害臨床ケア(Substance Use Disorder Clinical Care, SUDCC)プログラムにご連絡ください。事態が悪化し、飛行資格を喪失するような事態の発生を防ぐためには、早期に介入することが重要です。

執行猶予を理解する: 航空医療方針書(Aeromedical Policy Letters, APL)によると、アルコールに関連する事案が発生した場合でも、アルコール使用障害の基準に達していなければ、必ずしも飛行停止にはなりません。ただし、アルコール使用障害と確定診断された場合には、その症状の度合いに応じて、最低90日間の断酒、治療、および継続的な回復プログラムへの参加が必要となり、その後でなければ飛行停止の解除申請は行えません。

予防が重要

陸軍航空で職務を遂行するためには、身体的にも精神的にも最高度の状態であることが必要です。アルコールに関連するリスクを軽減するため、以下のことに気を付けてください。

制限を設ける: 自分の限界を知るとともに、「12hours bottle to throttle」(飲酒から飛行開始まで12時間を確保する)ルールを守って任務前に頭をクリアに保ちましょう。

サポート機関を活用する: 仲間や上司と関わり合いを持ち、助けを求め合うことが奨励され、当たり前となる文化を作りましょう。

知識を持つ: アルコホーリクス・アノニマス(アルコール依存症と向き合う自助グループ)、ラショナル・リカバリー(依存症に対するカウンセリング、指導、直接指導に関連する資料)、その他の軍人向けプログラムなどに関する理解を深めておきましょう。

あなた自身やあなたの同僚のアルコール使用について懸念がある場合は、すぐに航空医官にご相談ください。早めに助けを求めることは、弱さではなく強さの表れであることを忘れないでください。健康を保ち、即応性を維持する目的は、資格を維持することではありません。それは、あなた自身の命と、あなたに頼っている人々の命を守ることなのです。

航空安全!

航空医官への質問はありませんか?

この記事に取り上げてほしい質問がある場合は、AskFS@quada.orgまでメールでお送りください。今後対応してまいります。個人的な健康上の問題については、所属部隊の航空医官に相談してください。なお、本記事に示された見解や意見は著者のものであり、特に明記されていない限り、陸軍省の公式な見解として解釈されるべきではありません。

大尉(医師)ブライアン・ヒメネス・アリセアは航空医官および航空宇宙医学研修医であり、大尉(医師)アントワナ・ドレイトンはアラバマ州フォート・ノヴォセルのライスター陸軍健康クリニックの航空医学心理士です。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2025年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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