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陸軍航空の情報センター

無人航空機システム・プロジェクト・マネージャからの最新情報

軍属 ロドニー・A・デイビスおよび大佐 ダニエル・R・メダグリア

近年著しい成長を遂げているUAS(無人航空機システム)は、民間および軍事分野でのイノベーションや技術革新を推進している。アメリカ陸軍は、UAS戦略の策定に民間分野やウクライナ紛争から得られた教訓を活用し、その要求事項や性能に反映させている。民間分野においては、UASの迅速な試作や配備の可能性のほか、任務上の要求事項を満たす新しいペイロードやセンサーを統合する能力が実証されている。ウクライナにおいては、双方の陣営によるUASの使用により、耐障害性、冗長性、迅速なアップグレード可能性を持つシステムの重要性が浮き彫りになった。アメリカ陸軍はこれらの教訓を取り入れ、新たな脅威や技術に対して、柔軟で適応性があり、かつ即応性のあるUAS戦略を確保しつつある。アメリカ陸軍の部隊編制の幅広さと深さを考慮すれば、必要な能力をすべての階層に提供するためには、そのUAS戦略は軍事および民間の双方におけるイノベーションに依存せざるをえない。アメリカ陸軍のUASの用途には、RSTA(偵察、監視、目標捕捉)、通信中継、(対人および対物)攻撃力、EW(電子戦, 感知および攻撃)、自動空中補給などがある。

:12月3日にケンタッキー州フォートキャンベルにおいて、無人航空機システム・プロジェクトマネジメント・オフィスと米国特殊作戦司令部が初めての空中発射を成功させたAltius(空中発射型チューブ統合無人システム)-700。
中央:ユタ州ダグウェイ試験場でのシステム適応性実証試験において、オーロラ・フライト・サイエンス社が地上発射を行ったアンデューリル社のAltius-700。
:ケンタッキー州フォート・キャンベルにおいて、短距離偵察システムの現地回収を訓練する第101空挺師団の兵士たち。アメリカ陸軍初の公式クアッドコプター・プログラムであるスカイディオ社のRQ-28Aは、兵士たちが欲している能力を供給する。

戦略

アメリカ陸軍のUAS要求事項の基礎となっているのは、現在の世界情勢における脅威、世界中から得られた教訓、そして将来における戦場の様相である。UASを層状に運用するることにより、火力と機動力を向上し、地上指揮官の作戦範囲を拡大しようとしている。つまり、この戦略は諸職種連合部隊の全部隊のUASを統合し、同等の敵対勢力への侵入、攻撃および撃破の各段階において火力と機動を同調させようとしている。

アメリカ陸軍のUAS戦略が目指しているのは、まずセンサーとロボティクス(ロボット工学)を活用し、「最初の接触で血を流さない」ことである。この目標を達成するため、すべての部隊に十分な数のUASを配備し、レジリエンス(回復力)を維持できる多層的な戦力を整備する。また、UVC(無人装備品制御)用指揮統制ソフトウェアにより、すべての空中および地上ロボットのための作戦および戦術情報を戦場全体に配信する。それにより、共通作戦状況図がリアルタイムに更新され、戦闘員に必要な情報を提供することが可能になる。現在および将来のすべてのUASプログラムは、この相乗効果を達成できるように設計されている。

迅速な装備品の配備を図るため、小隊から旅団レベルまでのUASを同時に開発・調達することになる。ただし、アメリカ陸軍全体にわたって同一規模の部隊に同一の装備を配備しようとはしていない。UASの変化の速さを考慮すると、それは能力の向上を遅らせることにつながるからである。同時に、コスト削減や技術革新を加速するため、安定した調達により健全な産業基盤と堅牢なサプライチェーンを構築することになる。

図1のチャートは装備の規模を正確に表してはいないが、これらのシステムが階層別に配備され、部隊の規模と任務に見合った適切なレベルの能力を提供することを示している。これらのシステムの中には、同じ種類の能力を有するものがあるが、より大きなシステムはより高い能力レベルを有する傾向にある。例えば、グレイ・イーグルのEO(電気光学)センサーは、手持ち式の小型クアッド・コプターのEOセンサーよりも優れている。同じことがプログラム全体のすべてのペイロードについて言える。

図1 プロジェクト・マネージャのポートフォリオ

現在の取り組み

SRR(短距離偵察)は小隊レベルで運用される。SRRにおいては、2つの能力区分を構成するように計画されている。各能力区分(trench)は、民間分野での技術的進歩を活用するために競争にかけられる。能力区分1のSRRの配備はほぼ完了している。能力区分2は、技術進歩を活用し、ユーザーのニーズを反映して、能力区分1を超える追加能力を提供する。

MRR(中距離偵察)は中隊レベルで運用される。アメリカ陸軍は9月に、2024年11月から配備を開始する中隊レベル用要求指示(Directed Requirements)を実現するための契約を締結した。MRRは、機動中隊による偵察、通信拡張中継、対人/対物攻撃、電子戦-感知/信号情報任務などの実施を可能にする。この調達要領により、継続的な競争により経済性を最大化し、アメリカ陸軍のコスト、パフォーマンス、スケジュールに関する基準を満たすと同時に、技術進化に対応し、新たな脅威に先んじるための柔軟性の確保が可能になる。

LRR(長距離偵察)は大隊レベルで運用される。UASプロジェクト・オフィスは現在、LRRの候補機種を評価中である。これにより、大隊レベルの部隊に独立したISR(情報・監視・偵察)能力を提供し、旅団および師団の装備品への依存を減らし、LSCO(大規模戦闘作戦)の戦場におけるリアルタイムのデータ提供が可能になる。

JTAARS(統合戦術自律型空中再補給システム)は旅団レベルで運用される。現在実証中のJTAARSは、機動部隊指揮官に有機的な自律型空中物資配送システムを提供し、戦術支援および近接戦闘地域での機動的かつ分散した戦闘部隊の迅速かつ機敏な維持整備活動を可能にするための選択肢を提供する。実証段階を終えたならば、アメリカ陸軍は配備の決定または125ポンドを超える積載能力を有する候補機種への転換に向けて準備を進めている。加えて、2000ポンドの積載物を自律運搬できるJTAARSに関する要求事項についても検討している。

FTUAS(将来型戦術無人航空機システム)は旅団レベルで運用される。アメリカ陸軍は現行機種であるシャドーをFTUASで更新する予定である。FTUASの主な特徴は、滑走路に依存しないこと、移動中の指揮統制能力を有すること、および有機的な維持整備が可能であることである。アメリカ陸軍は、発展段階にあるFTUAS装備の開発のため、急速な技術成長とイノベーションのあらゆる部隊での活用を図っている。

MQ-1C グレイ・イーグルは軍団および師団レベルで運用される。グレイ・イーグルは過去20年以上にわたり、対反乱作戦における役割を十分に果たしてきた。ペイロード搭載能力の向上、ソフトウェア・アーキテクチャのオープン化、データリンクの近代化への取り組みが進行中であり、LSCO(大規模戦闘作戦)で必要となる能力がグレイ・イーグルに与えられようとしている。

LE(空中発射機器)はすべての戦場領域において運用される。LEは航空部隊と地上部隊の両方に配備され、その運用特性や航続距離に応じて3つの区分(category)に分類される。その航続距離の区分ごとに、要求される任務に応じた搭載重量が設定されている。アメリカ陸軍は、発展段階にある空中発射機器の機体開発のために、急速な技術成長とイノベーションの活用を図っている。

UAS戦略の基礎となっているのは、MOSA(モジュラー・オープン・システム・アプローチ)とUVC(無人装備品制御)プログラムによってもたらされる戦場全体にわたる異種無人システムの統一制御である。

MOSAは、いかなる装備も単一のサプライヤーに依存せず、必要な技術を提供する製造業者を政府が装備化の進捗に応じて追加・除外できる状態を維持する。UASは通常、その機体、搭載重量および任務システムによって分類されるが、この目的のため、その製造企業(effector)によっても分類される。アメリカ陸軍のUAS戦略は、各機体がUAS装備全体の中で独立してアップグレードできるようにして、その事業全体に相乗効果と競争をもたらすものとなっている。

UASとその関連システムが発達するペースに合わせるため、より頻繁なシステムとその関連システムの競争が促される。敵に打ち勝つための最新のシステムを兵士たちに与えるためには、競争が欠かせない。アメリカ陸軍は、急速に進化し、センサーに溢れ、複雑化した戦場における常に変化する戦略的環境を考慮し、統合軍に致命的かつ生存可能な陸上戦闘能力を提供するため、継続的に更新される戦闘部隊用装備品を開発し、取得し、そして統合しなければならないのである。

ロドニー・A・デイビス氏は航空担当プログラム執行責任者代理であり、ダニエル・R・メダグリア大佐は無人航空システムのプロジェクト・マネージャーである。 両名ともアラバマ州レッドストーン工廠に所属している。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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