航空科女性隊員の業績と将来
航空科女性隊員シンポジウムの内容から
米陸軍航空戦闘センター(現在のアメリカ陸軍航空教育研究センター)は、1996年2月下旬に航空科女性隊員シンポジウムを開催した。この会議には、各軍種の航空科職種から、あらゆる階級の90人以上の男女が参加した。その目標は、2つあった。1つは、陸軍航空における21年間にわたる女性の業績を振り返り、それをたたえることであり、もう1つは、職種内における現在の「ジェンダー問題」を明らかにし、それについて議論することであった。
2つの性別で構成される軍隊において、一方の性別だけに焦点を当てることについては、さまざまな意見があり、しばしば論争の種になってきた。その一方で、2つの性別の間に任務遂行に影響を与えるかもしれない根本的な相違点があることは、ほぼ普遍的に認められてきた。このシンポジウムは、この課題に対処するための最良の方策について、職種全体に公正な議論を広めることを目指したものであった。
女性が陸軍航空に配置されるようになったのは、今から21年以上前の1974年のことであった。最初の女性パイロットであるサリー・D・ウールフォーク少尉(現サリー・マーフィー大佐)は、1974年6月に回転翼操縦課程を卒業した。1974年2月にはリンダ・プロック2等兵が整備課程を卒業して整備員としての勤務を開始し、1975年6月にはジェニー・バランス4等准尉が操縦課程を卒業して飛行准尉に加わった。これらの課程に女性が入校することが一般的になるにつれ、攻撃、騎兵、特殊作戦を除く職種内のすべての任務が女性に開放されていった。
ほぼ20年後の1993年には、女性が攻撃機を操縦することを認める法律が制定され、女性パイロットや整備員の攻撃機部隊での勤務が始まった。1994年には、別の法律が制定され、空中騎兵隊への女性の配属が認められるようになった。それ以来、フォートラッカーのAH-64、OH-58DまたはAH-1操縦課程を卒業し、攻撃/騎兵部隊に配属される女性の数は、増加の一途をたどった。女性は、攻撃部隊や騎兵部隊に配属され、あるいはそれらの部隊の指揮を執り、世界中に展開して、戦闘任務を遂行してきた。そして、優秀な指揮官や下士官、パイロット、あるいは将校や兵士として、その活躍が認められきた。
このシンポジウムは、女性たちの過去の業績をたたえただけではなかった。世代の異なる女性兵士や将校が、陸軍航空におけるさまざまな課題や、今後の教育指導の方向性について議論する貴重な機会を提供することにも貢献した。
米陸軍航空戦闘センターは、これらの議論を活性化し、それに関する情報を広く浸透させるために、この機会を利用した。まず、職種の概要の説明と、現在の職種内での女性の活躍の場の紹介を私が行った。そして、パトリシア・ヒッカーソン准将による過去および現在の採用状況についてのプレゼンテーションなどがそれに続いた。
陸軍士官学校のジョー中佐とモーリーン・ルブエフ中佐は、行動および身体に関する性差について、内容の濃いインタラクティブな議論を行った。そこでは、男女間の根本的な違いと、その結果として生じる文化的影響が明らかにされた。男性と女性は、同じ状況に対しても、異なった見方をする場合が多い。これは必ずしも悪いことではないが、状況の認識や評価を難しくする場合もあるのだ。
カレン・マクマヌス中佐の発表は、最新の「ワシントンの視点」に関するものであった。ペンタゴンで勤務する女性兵士(およびパイロット)である彼女は、今日の女性兵士に影響を及ぼす施策について、最新の情報を提供した。
米国陸軍航空医学研究所(Aviation Research Laboratory, USAARL)のプレゼンテーションは、身体測定が搭乗員のクルー・コーディネーション、能力、安全性に及ぼす影響に関して議論する、待望の機会を提供した。現在実施中の研究は、これらの基準を検証するものであり、今後、何らかの変化をもたらす可能性がある。航空医学研究センターおよび航空医学研究所の参加者からは、現在の妊娠をめぐる方針と、航空環境が胎芽の成長に及ぼす影響に関する研究結果も発表された。また、比較的新しい問題である女性パイロットの「高齢化」についても発表された。一般的男性と比較した場合、それが健康と飛行技量に及ぼす影響には、どのような違いはあるのだろうか?
女性兵士だけでなく、職種全体における性差別の問題を討議する、複数のワークグループを設立できたことも、シンポジウムの主要な成果のひとつであった。それらのワークグループの議長には、それぞれの分野の専門家が選出された。各議長は、ワークグループが単に個人的経験を発表する場ではなく、職種全体の問題を焦点とした議論を行う場になるように着意した。
各ワークグループは、これらの議論を通じて、米陸軍航空戦闘センターが既に取り組み、下士官兵シンポジウムや旅団長ビデオ会議などで取り上げられている問題を把握することができた。
各ワークグループからの報告は、シンポジウムが所望の目標を達成したことを表していた。つまり、女性たちは、航空科をより強く、よりまとまりのある職種にするために大きく貢献している、ということである。
会議の参加者たちは、女性兵士たちが航空戦闘チームの一員として、その重要な役割を、力強くかつ躍動的に果たしていることを再確認した。女性たちは、これからも戦いの最前線に立ち、将来に向けて躍進を続けることであろう。私たちの国、私たちの軍隊、そして陸軍航空に貢献することが、女性にとっての誇りなのである。
アダムス中将は、アラバマ州フォート・ラッカー所在の航空科職種司令官(Aviation Branch Chief and Commanding General, UAAAVNC)兼バージニア州フォート・ユースティス所在の陸軍航空兵站学校(U.S. Army Aviation Logistics School)長である。
この記事は、1996年の記事が2021年1月31日発行のARMY AVIATION誌に再掲載されたものです。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 1996年06月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
陸自の航空科部隊に女性自衛官が配置されるようになったのは、40年位前のことだと記憶しています。
陸自では、このようなシンポジウムが開催されたことがあるのでしょうか?