AH-64Dのエンジン不具合による墜落
AH-64Dアパッチが地面効果内ホバリングから離陸中、No.2エンジンに不具合が発生した。当該機は、機体重量および環境条件のため、シングル・エンジンで飛行することができなかった。このため、ローター速度を101パーセント以上に維持することができず、急速に降下・墜落した。機体は大破したが、負傷者はなかった。
飛行の経過
当該機は、30ミリ機関砲とロケットの実弾射撃訓練を行おうとしていた。搭乗員は、地上試運転、無線点検、ホバリング点検を実施した後、飛行場を離陸した。射場に到着後、30ミリ機関砲とM274ロケットの実弾射撃訓練の準備を開始した。当該機は、30ミリ訓練弾を360発、M274訓練弾を10発(左右それぞれの側に5発)搭載した。搭乗員は、燃弾再補給用着陸点でホバリングしてパワー・チェックを実施した後、指定された射撃位置に前進した。射撃位置に到着後、一旦、着陸し、射座において直前ブリーフィングを行い、不測事態対処要領について再確認した。副操縦士の操縦により、予定していた対地高度160フィートの高度でホバリングし、実弾射撃訓練の体制に移行しようとした。
ホバリング上昇中、事故機は、突然、上昇を停止し、急降下して射座の地面に墜落した。
搭乗員
教官操縦士の総飛行時間は998時間であり、当該機種での飛行時間は231時間であった。副操縦士の総飛行時間は915時間であり、当該機種での飛行時間は47時間であった。
考 察
No.2エンジンの不具合が発生した原因は、第2段コンプレッサー・ブレード・ディスクのブレード破損であった。破損したブレードが飛散したことにより、下流側のコンプレッサーに壊滅的な損傷が生じた。ブレードが破損したのは、高サイクル疲労が原因であると推定される。この種の不具合は、すでに把握されており、AWIS( Airworthiness Impact Statement, 安全性影響通知)06ー007によって処置が行われてきたところであった。2002年以降、同種事例が34件発生している。このため、補給処段階整備において、コンプレッサー・ブレードのクリアランス(間隙)の変更が実施されてきた。調査の結果、事故機のエンジンは、当該改修が行われていなかったことが判明した。
整備実施手順の不適切は、事故につながる。整備手順が不適切であっても直ちに事故が発生しない場合もあるが、いずれかの時点で致命的な不具合が生じることになる。すべての整備関連機関は、整備通達に基づく適切な整備手順が遵守され、飛行の安全が確保されていることを確認しなければならない。中隊以上の各級整備部隊等における品質管理要員は、事故につながる事象の連鎖を断ち切るための最後の砦なのである。品質管理要員の署名や技術検査員のスタンプは、航空機のその系統の整備作業の実施が実視で確認され、最終的な安全が保証されたことを示すものであることを認識しなければならない。
指揮官および整備の長は、整備員および技術検査員の技量低下に注意を払わなければならない。派遣頻度が増加する中、部隊における整備業務の信頼性を維持・構築するためには、各級指揮官が整備業務の問題点把握に目に見える形で積極的に関与することが必要である。整備に関する訓練、監督および業務を増加し、整備員の技量向上を図らなければならない。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年06月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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