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陸軍航空の情報センター

フォーラム:MFOQA(軍飛行データ解析プログラム)の必要性

論説、意見、アイデア、情報

分析防止局航空部門
アメリカ陸軍戦闘即応センター(USACRC)

ここに表明された見解は専門的な議論を喚起するためのものであり、アメリカ陸軍またはアメリカ陸軍コンバット・レディネス・センターの方針を示すものではない。

MFOQA(Military Flight Operations Quality Assurance, 軍飛行データ解析プログラム, エム・フォークワと発音)は、民間のFOQA(Flight Operations Quality Assurance, 飛行データ解析プログラム)の軍事版です。FOQAの始まりは、民間航空局(Civil Aeronautics Administrations)がFDR(フライト・データ・レコーダー)の搭載を義務付けたことでした。初期のFDRはわずか6つのパラメータしか監視していませんでしたが、証拠がなかったり、少なかったりする場合でも事故の発生状況を再現できる貴重なツールとなりました。このFDRから得られる飛行データを日常的な検証に利用することに最も早く着手したのは、欧州やアジアの航空会社でした。機体から収集されたデータを事故の調査ではなく事故の予防に活用する、この自主的な安全プログラムは、FOQAと呼ばれました。それまでは航空事故発生時の状況を再現するためにしか使用されていなかったデジタル・データが、事故につながる可能性のある事象の連鎖を断ち切ることにも利用されるようになりました。ただし、それは他の安全対策を強化するためのものであり、代替するものではありません でした(Brandt, M. 1999)。

2005年、アメリカ国防長官はMFOQAの実施を指示する覚書を各軍に発出しました。その指示を受けたアメリカ陸軍は、MFOQAなどの安全施策を行う公式プログラムとして「ADEC(Aviation Data Exploitation Capability, 航空データ活用能力)」を事業要求しましたが、導入直前の2018年に予算の執行を停止してしまいました。2017年、国防総省指令(Department of Defense Instruction, DoDI)6055.19により、MFOQAなどの施策を含んだ「航空危険識別およびリスク評価プログラム(Aviation Hazard Identification and Risk Assessment Programs)」が実行に移されました。MFOQAは、パイロットなどの搭乗員の責任を追求することではなく、危険要因を根絶することを目的とした、懲罰的ではなくかつ個人情報保護を考慮した施策となっています。

アメリカ空軍は、政府所有のソフトウェアを使用することにより、この有人および無人の固定翼機および回転翼機を網羅するプログラムから多くの成果を得ています。毎月、約22,000回の飛行から得られる約6.5テラバイトのデータが主要航空団(major command, MAJCOM)で分析され、問題が検出された場合には下位階層へと伝達されるようになっています。

なぜ今なのか?

アメリカ陸軍の航空関係者の誰もが自分たちの経験は不足していると認識しています。 加えて、装備品が複雑化していることやクラスA事故発生率が10万飛行時間あたり1.90に達していること(2022年は0.5でした)も、MFOQAの必要性を増大させています。しかし、アメリカ陸軍での現時点でのMFOQAによるデータの収集および分析の対象は、器材上の問題(事故全体の20%未満)に限られています。それを人的ミスによる事故防止に活用しないのは、なぜなのでしょうか? そういった活用ができていれば、アパッチ・パイロットの中にSASのヨー軸が飽和した状態で飛行している者がいることを事前に警告することができました。そうしていれば、2024年度に発生した不測の右ヨーに起因する事故を未然に防止し、3機のAH-64Eを救えたはずなのです。また、他の誰かが航空機のデータを確認していると認識することで、運用方法を変える個人や組織もあると考えられます。例えば、1990年代のある組織では、夜間飛行が飛行時間の85%を占めていました。その組織の作戦規定には、夜間飛行時には運用ビデオ記録システムを使用し、飛行中に録画することが規定されていました。そして、定期的に大隊の指導員が記録された録画テープを搭乗員と一緒に確認することになっていました。搭乗員がブリーフィングされたのと異なる飛行を行っていた場合は、指導を受けることになります。指導パイロットと一緒に録画テープを見るという認識が常に頭の片隅にありことが、パイロットたちの行動に良い影響を与えていました。

パイロットである我々は、航空搭乗員や搭乗者の安全を確保するだけでなく、納税者から委託された貴重な資産(航空機)を保護する重要な責任を負っています。

MFOQA(軍飛行データ解析プログラム)による飛行データの分析は、事故防止や安全性向上に役立つ強力なツールとなり得ます。FDR(フライト・データレ・コーダー)や CVR(コックピット・ボイス・レコーダー)などの飛行記録装置からのデータの分析は、潜在的なリスクにつながる可能性のある傾向やパターンの特定を可能にします。

この積極的なアプローチには、次のような効果が期待できます:

「ビッグブラザー」(独裁者)のような監視への懸念があることも理解できますが、この飛行データ分析の主な目的は安全性の向上であり、個々のパイロットを処罰したり精査したりすることではありません。データを使用して潜在的なリスクを特定し、積極的に対処することで、より安全かつ効率的な運航が可能となるのです。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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