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陸軍航空の情報センター

MV-22B墜落事故航空事故調査報告書(2023年8月27日、オーストラリア)要約書

訳者注:太字の装飾は、訳者によるものです。

1 2023年8月27日、VMM-363(増強)、ダーウィン海兵隊ローテーション部隊所属のMV-22Bオスプレイ2機は、演習「プレデターズ・ラン」の一環として、オーストラリア空軍のダーウィン基地からメルヴィル島に向けて編隊で離陸した。編隊が90度の右旋回で降着地域に戦術進入を行う際、旋回する長機の後方外側を2番機として追従していた事故機は、急激な右バンクを3回行った。最初のバンクにおいては、空中衝突寸前の状態となったが、事故機の搭乗員が修正操作を行って回避した。2回目のバンクにおいては、事故機が空力的失速状態に陥り、機内の警報装置が作動した。3回目の極端なバンクにおいて、事故機は右翼を下げ、機首を低くした姿勢で急激に降下する状態となった。事故機の機長は、操縦を交代し、翼を水平にし、両手でサイクリックを引いて前進速度を低下させようとした。90度近い旋回を3回行った事故機は、予定していた最終進入方向とは約180度反対の方向に飛行しており、20ノットの追い風を受けていた。ナセル角および出力設定、低高度、機体重量ならびに追い風といった条件のため、機体姿勢を急降下状態から回復するには時間および空間が不足していた。その結果、事故機は地面に墜落し、炎上した。入手できた証拠によれば、本事故の主因操縦ミスおよび自信過剰であった。

2 本調査の結果、VMM-363(増強) における複数の不適切な整備業務が明らかになった。これらの業務が2023年8月27日の事故を引き起こしたことを示す証拠はないが、必要な整備作業が予定期限までに完了していなかったこと、飛行間点検を完了しないまま飛行可能と判断されたこと(訳者注:オスプレイの場合、72時間有効な日々点検(daily inspection)に加えて、各飛行終了後にそれよりも軽易な飛行間点検(turnaround inspection)を行うように規定されている。)、および飛行任務前に航空機の重量および重量重心の記録が未記載または未更新だったことなど、いくつかの整備上の理由により、当該機は飛行可能と判断されるべき状態ではなかった。これらの整備業務の不適切は、安全な飛行業務のために必要な手順に関して、飛行隊全体に怠慢な状態が存在したことを浮き彫りにした。

3 本調査では、また、オーストラリア国防軍の患者後送および大量患者支援体制が良好に整備され、海兵隊がノーザン・テリトリー州で多国籍軍事訓練を実施するうえで必要な救急救命要件を十分に備えていることが明らかになった。もし、このような連携が不十分だったならば、本事故はさらに重大な悲劇を生んだ可能性があった。

4 本事故の結果、パイロット2名とクルーチーフ1名が死亡し、航空偵察員が重傷を負い、キャビン内に搭乗していた多数の海兵隊員が負傷したほか、事故機の全損および各種武器・装具の損失が発生した。


2023年8月27日にオーストラリアで発生したMV-22B墜落事故の航空事故調査報告書

                               

出典:USNI News, U.S. Naval Institute 2024年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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