油断との闘い

航空の世界に入るとすぐに、いかに日常的な飛行であっても、飛行に集中するよう教えられます。しかし、人間はそのするようにプログラムされていません。技量が向上すればするほど、その意識を失いがちです。これは、上達に伴って自然に生じることです。パイロットである私たちは、いかなる飛行においても警戒心を失わず、常に注意深く臨むよう努めなければなりません。
どのような飛行も日常的なものになり得ます。多くのパイロットがその美しさに驚嘆するアフガニスタン上空の飛行でさえ、容易に日常と化してしまうのです。8〜9ヶ月間にわたり同地域での飛行を続けた私たちは、その空域を熟知していました。その夜の飛行は、月明かりが少なく、天候も良好とは言えませんでしたが、特に変わったものではありませんでした。いつも利用している降着地域(LZ)へ、いつもと変わらぬ搭乗者を輸送するだけでした。
その降着地域は非常に狭く、常に砂塵が発生しやすい場所の一つでした。しかし、搭乗員全員がその降着地域への着陸経験があったため、事前の偵察さえも行いませんでした。もちろん、これが最初の過ちでした。さらに、着陸復航の手順について話し合ったり、各搭乗員に安全に関わる役割を割り当てたりすることもなく、漫然と進入を開始しました。地上約30フィート(約9メートル)の高さに達した時、降着地域からレーザー光線のように発せられる複数の照明が視界を妨げていることに気づきました。しかし、降着地域が谷間に位置していたことや、出力に余裕がなかったことから、この時点で着陸を中止することはできませんでした。
視界不良の中、進入を続け、砂塵が機体を包み始めたその時、左側のクルー・チーフがその真下に小さなアンテナがあるのを発見し、報告しました。この段階で機体の姿勢や方向を変えたいと思うパイロットはいません。私は、地上が見えず視覚的な目標もない中、機体を右にスライドさせて地上のアンテナを避け、すぐに姿勢を水平に戻しました。幸い、私たちは無事に着陸することができました。
砂塵が収まった後、何が問題だったかを話し合いました。事故には至らなかったものの、私たち搭乗員はあまりにも多くの危険を冒してしまいました。すべての過ちと事象は、防ぐことができたものでした。視界を妨げた照明の問題は、降着地域の事前偵察を怠ったために生じたものです。降着地域の周辺を1、2回旋回飛行していれば、その危険性を確実に把握できたはずです。また、偵察中に搭乗員の誰かが降着地域内のアンテナに気づき、別の進入経路を選択する機会もあったかもしれません。この事案の主な要因は、明らかに、熟知している場所への飛行に対する自信過剰でした。
パイロットとして、私たちは遭遇するあらゆる危険を最小限に抑える責任があります。私たちの業務には、すでに十分な固有の危険が存在しているのです。これ以上、危険を作り出す必要はありません。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年03月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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