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陸軍航空の情報センター

急いては事を仕損じる

氏名非公開

私たちは皆、航空業界のプロフェッショナルとして、任務を遂行するために最善を尽くしています。ただし、最短時間で最高の結果を出そうとする欲求は、時として裏目に出ることがあります。最小限の時間で仕事を終わらせようとしたためにクラスCの事故を発生させた、私の事例を紹介します。

私は、ブラックホークの整備試験パイロットとして部隊に配属されていました。私の部隊は、平和維持活動のための9か月間の派遣の3か月目で、かなりハードなスケジュールで飛行していました。飛行可能な航空機を確保することが優先事項であり、部隊の任務遂行能力を低下させるヘリコプターの整備は、可能な限り速やかに終わらせるべきだと考えられていました。その日、私はブラックホークのトラック&バランスを実施していました。この作業は、RADS(ローター解析・診断システム)と呼ばれるテスト機器を取り付けた状態で航空機を飛行させて行われます。

トラック&バランスを実施する際には、パイロットは異なる対気速度で航空機を飛行させ、RADSがその間のローターの振動とブレードの相対的な高さを測定します。飛行が終了すると、RADSは振動を許容範囲内に収めるために必要なウエイトとコントロール・ロッドの調整量を提供します。示された調整を行った後、パイロットは再び機体を飛行させ、振動の程度を確認します。振動が許容範囲内に収まっていない場合、RADSは別の解決策を提示し、このプロセスが繰り返されます。振動が許容範囲内に収まったら、パイロットはもう一度飛行して、コントロール・ロッドの調整により影響を受けた可能性のあるオートローテーション回転数をチェックします。

その日は、振動を許容範囲内に収めるのに苦労しており、すでに5回も航空機を飛ばして調整を行っていました。その日の午後に任務を遂行できるよう、機体を完全任務可能状態にしたいという強い思いを持っていました。6回目のフライトのため、ブラックホークを始動し、アビオニクスの電源を入れ始めました。私は間違ってトランスポンダーのコントロールをモード4コードが消去されるポジションに切り替えてしまいました。このことが、事故につながる一連の出来事の最初の過ちとなりました。

当時、すべての航空機は飛行中にモード4コードを送信することが義務付けられていました。モード4コードを再ロードするには、航空機のノーズ・ドアを開ける必要がありました。私は、それを自分自身で行う代わりに、クルー・チーフに行うように指示しました。自分で行うには、航空機をシャット・ダウンし、セーフティ・ハーネスを外して、航空機から降りる必要があったからです。もし自分自身でそれを行えば、さらに約15分の時間が必要だったでしょう。クルー・チーフにリロードを行わせるのは、必要な時間を減らすための効果的な方法だと考えました。

クルー・チーフは航空機から降り、ノーズ・ドアを開け、モード4を再ロードして、ノーズ・ドアを閉めました。作業を終えたクルー・チーフは、私に親指を立てて完了のサインを送ってから、航空機に戻りました。私はすぐに離陸許可を求め、RADSの読み取り手順を開始しました。飛行は順調で、すべての読み取り値は制限内でした。最後の読み取りは飛行速度145ノットで行われ、良好な結果でした。

トラック・アンド・バランスが終了したことに満足した私は、航空機を着陸させてRADSを取り外すことなく、すぐにオートローテーション・チェックに移りたいと考えました。私は搭乗員全員に異議がないかを尋ねました。副操縦士とクルー・チーフはすぐに賛成し、迅速に作業を完了できることを喜んでくれました。そこで、飛行したまま搭乗員に安全ブリーフィングを行い、オートローテーション・チェックを安全に実施できる場所へ向かいました。

オートローテーション・チェックとは、両方のエンジンをアイドリング状態にし、エンジンの出力がない状態で航空機を降下させることです。これは、飛行中にエンジンが故障した場合でも、ロータ・システムによって航空機の降下速度を低下させ、安全に着陸できることを確認するために行われます。オートローテーション空域に入った私は、コレクティブを下げ、エンジン・パワー・コントロール・レバーをアイドリング状態にして、オートローテーション・チェックを開始しました。航空機は毎分約2,000フィートの速度で降下し始めました。これにより、ノーズ・ドアに沿って流れる空気の流れが、ドアを閉じた状態に保つ下向きの流れから、開く方向に圧力をかける上向きの流れに変わりました。

ノーズ・ドアのラッチが固定されていなかったことに、誰も気づいていませんでした。通常、ノーズ・ドアは2つのラッチと1つのロック機構によって閉じられています。そのロック機構は、機首部分に搭載されているアビオニクス機器が盗まれないようにするためのものです。それは航空機が飛行中にドアを閉じたままにしておくようには設計されていません。クルー・チーフは、モード4を再ロードした後にノーズ・ドアを閉める際、鍵でロックはしましたが、2つのラッチを固定するのを忘れていました。降下を開始してわずか数秒後、ノーズ・ドアが開き、ノーズ・ドアに取り付けられていたRADSカメラが中央の風防ガラスを突き破りました。ノーズ・ドアは完全に開いた状態となり、私の視界を遮ってしまいました。

私は、オートローテーションから回復するため、パワー・コントロール・レバーをフライ・ポジションに戻し、降下を止めました。ノーズ・ドアが開いたままなので、飛行場まで戻るにはサイド・ドアの窓から外を見ながら飛行しなければなりませんでした。幸いなことに、ノーズ・ドアが機体から外れることはありませんでした。もし外れていれば、メイン・ローターを通過して事態をさらに複雑化させた可能性があります。

着陸後、航空機から降りると、機体の損傷を確認しました。ファイバーグラス製のノーズ・ドアにはひびが入り穴が開いており、RADSカメラは破壊され、整備時にノーズ・ドアを開放状態に固定するためのプロップ・ロッドの一端が破断し、着陸時にノーズ・ドアが閉まった際に自動方向探知機の受信機に突き刺さっていました。すでに分かっていたとおり、中央の風防ガラスは割れていました。技術検査・調査報告書によると、損害額は12,000ドル以上と判断されました。幸いにも、誰にも怪我がありませんでしたが、そうではなかった可能性も十分にありました。

教訓

この事故の責任は誰にあったのでしょうか?最終的には、機長であった私にありました。でも、重要なのはそのことなのでしょうか?そうではありません。搭乗員全員が、犯されたミスのために危険な状況に置かれてしまいました。どうすればこれを避けられたでしょうか?時間を節約しようとするのではなく、ペースを落として二重チェックをするべきだったのです。古い諺にあるとおり、「急いては事を仕損じる」のです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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