跳弾によるAH-64Dの損傷
AH-64Dの整備を実施していた機付長が、テール・ローター・ドライブシャフトのNo.5ドライブシャフト・カバーに約5センチの穴が開いているのを発見した。カバーを開くと、ドライブシャフトの下に30mmガンの弾丸が落ちていた。通報を受けた管理部門、指揮官および安全将校は、直ちに調査を開始した。
当該機は、その前の晩に2機編隊での実弾射撃訓練に参加していた。2機のアパッチで編成されたそのチームは、昼間および夜間に複数回の戦闘訓練を実施していた。当日の飛行後点検において、その穴は発見されていなかった。この事案は、さらに悪い結果をもたらした可能性があったのである。
幸いなことに、No.5ドライブシャフトの下に落ちていた弾丸は、ドライブシャフトと接触してはいなかった。それが2機の機体のどちらから発射されたものであるかは特定できなかったが、機体の損傷が軽微であったことから、機体から発射された弾丸が直接当たったものではなく、跳弾が当たったものと考えられた。当該機は、テール・ローター・プッシュプル・チューブの交換とドライブシャフト・カバーの板金修理が必要となった。
この事故の発生は、編隊射撃と飛行後点検の実施要領にいくつかの重大な問題を投げかけることとなった。アパッチは、通常、2機でチームを組んで敵と交戦する。我々は、常にこの要領で訓練を行ってきた。その際、着意しなければならないのは、機体相互間の間隔を維持し、タイミングを適切にするとともに、目標の直上を飛行しないようにすることである。
実際には、その間隔とタイミングは、戦術的状況に応じて異なったものとなる。非常にあいまいではあるが、そういうものなのである。タイミングとは、つまり、1番機が離脱してから2番機が射撃する、ということである。2番機の射撃開始が早すぎると、その跳弾が1番機に当たる可能性がある。また、1番機が射撃を行いながら目標の上空を飛行した場合は、自分自身の跳弾に当たる可能性もある。ただし、今回の事案がそのどちらであったのかは、判別がつかなかった。
本事案において、もし、別のパイロットが、その夜に当該機を飛行させていたならば、ドライブシャフト・カバーの穴に気づかず、No.5ドライブシャフトの下で弾丸が跳ね回る状態で飛行してしまった可能性があった。飛行後点検は確実に実施しなければならないし、特に胴体の点検を怠ってはならない。
このような機体の損傷は、目標上空を飛行せず、2機のチームの航空機相互間のタイミングを適切にすれば防止できる。また、航空機が着陸後、飛行後点検を適切に行えば、少なくとも、その夜のうちに別なパイロットが飛行させ、最悪の結果が生じることを防止できる。
ブリーフィングと予行を適切に実施するとともに、跳弾が現実に発生するということを認識することが重要である。さもなければ、敵の攻撃ではなく、自分自身で機体を墜落させてしまうかもしれないのである。速やかな機体の整備を可能にし、他のパイロットが不具合のある機体で飛行してしまうことを防止するため、飛行後点検の確実な実施に努めなければならない。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年03月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
現役の頃、Cal.50のドアガン射撃(夜間)を行ったことがあります。地上から見ていると、機体から発射された曳光弾が目標に当たってから、ほぼ垂直に、機体よりも高いところまで跳ね上がったように見えたのを覚えています。
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