セーフティ・ハーネスの重要性
安全確保はあらゆる任務の基礎です。搭乗員の安全を確保するために極めて重要な役割を果たしているのが、セーフティ・ハーネスの適切な使用です。残念ながら、事故から得られたデータ分析と海軍セーフティ・コマンドによる現地評価(LAA)の結果を見ると、回転翼機においてはセーフティ・ハーネスを適切に使用していない傾向があり、搭乗員の負傷や死亡につながる可能性が高いことが判明しました。この傾向が是正されない場合、パイロットはより大きなリスクにさらされ、飛行搭乗員の作業効率が低下し続けることになります。
セーフティ・ハーネスの基本的な役割を理解することは、搭乗員の安全を確保する上で極めて重要です。セーフティ・ハーネスには、シート・ベルト(seat restraint)やガナー・ベルト(gunners’ belt)と呼ばれる落下防止索(crewman safety belt)など、さまざまな種類があります。セーフティ・ハーネスは、航空機のキャビンまたはコックピット内で搭乗員を確実に固定し、飛行中、機動中、そして起こり得る緊急時における安全を確保できるように設計されています。回転翼機にはH-60、H-53、V-22、H-1などのさまざまな機種がありますが、そのいずれにおいても、どの安全ハーネスを使用するかは、通常、搭乗員の配置と任務によって決まっています。ハーネスの使用に関する基本基礎を遵守することは、搭乗員の能力を高め、任務の成功を確実にするとともに、負傷や死亡というリスクを軽減するために最も重要なことです。
回転翼機の各機種には、それぞれに固有の運用上の要求事項があります。このため、航空搭乗員は任務上の必要性に加えて、その運用上の要求事項を常に考慮しなければなりません。端的に言えば、リスクとリターンを比較検討することが重要です。セーフティ・ハーネスは単なる邪魔者では決してありません。確実に装着されていれば、搭乗員が航空機の機動中や予期せぬ乱気流の中でも効果的に職務を遂行し、作業に集中できるようにする有効なツールとなります。それは状況認識の向上をもたらし、より安全に任務を成功させることにつながります。
海軍航空訓練運用標準化マニュアル(NATOPS)および作戦規定(SOP)は、過去の貴重な教訓に基づいて策定されたものであり、回転翼機の運用指針を定める上で重要な役割を果たすための基準を提供してくれます。NATOPSやSOPから逸脱する可能性は常にありますが、その逸脱を標準とするべきではありません。セーフティ・ハーネスの適切な使用は、その基準を満たすために不可欠な手順です。これらの文書には離陸前、着陸前、および飛行中にハーネスを正しく装着し固定する方法が規定されており、さらにシート・ベルトの代わりに落下防止索を使用することが適切な場合についても記載されています。NATOPSやSOPを遵守することで、いかなる種類の任務や航空機でも一貫した安全性を確保することができます。
パイロットは緊急事態や不時着シナリオなどの不測の事態についてブリーフィングし、そのための計画を策定しますが、墜落事故がいつ起こるかは分かりません。 しかし、それは間違いなく起こり得ることなのです。航空機の耐衝撃性と搭乗員の生存性を確保することは極めて重要なことであり、目的に適合したセーフティ・ハーネスを使用しなければならない最も重要な理由の一つです。 そうすることで、不測事態発生時の対応が容易になるのです。正しいセーフティ・ハーネスを使用することに加えて、ハーネスを適切に装着することも同様に重要です。装着を適切に行うことにより、急激な衝撃や墜落の際に生じる搭乗員の動きを制限し、重傷を負う可能性を減らすことができます。軍事作戦において、敵の脅威や劣悪な環境にさらされる場合には、ハーネスの適切な装着が特に重要になります。
セーフティ・ハーネスを使用する際には、航空機からの脱出や避難を妨げないようにすることも、考慮すべき事項です。緊急事態が発生した場合には、迅速に脱出できるかどうかが生死を分ける鍵となります。セーフティ・ハーネスは危機的な状況においても迅速に脱出できるように設計されていますが、それは正しく着用されている場合に限ります。ハーネスには速やかな脱出を可能にするクイックリリース機構が備わっています。この機構は、特に不時着水や火災のような高い危険性を潜在的に有する場合において特に重要となります。
回転翼機における搭乗員のセーフティ・ハーネスの使用は、単なる形式的なものではなく、即応態勢の維持および搭乗員の保護の観点からも重要です。機体や任務の進化に伴い、関連するリスクも変化しています。ハーネスを効果的に使用することで、負傷、死亡、および任務失敗の可能性を最小限に抑えることが必要です。回転翼機の運用環境がいかに変化しようとも、安全への取り組みが揺らぐことがあってはなりません。セーフティ・ハーネスは、そういった意識の存在を象徴するものであり、重要な任務を遂行する隊員たちの生命を守る具体的な手段でもあるのです。回転翼航空機の搭乗員たちが大胆かつ安全に任務を遂行するためには、航空機の耐衝撃性、任務の必要性、搭乗員の脱出能力、そして適切な手順の遵守が欠かせないのです。
出典:APPROACH MAGAZINE, Naval Safety Center 2024年08月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
「SENIOR CHIEF NAVAL AIRCREWMAN」の訳語「上級上等海軍航空搭乗員」は適当です。
これが役職なのか階級なのかも、分かりません。
どなたか定訳や適訳をご存じの方がいれば、教えて下さい。
著者と写真撮影者の名字が同じです。
ひょっとすると親子かも知れません。