YS-11 国産旅客機を創った男たち(前間孝則 著)
「ドリーム・マシーン」を読んで頂けた読者の方から、「思い出した本がある」と紹介してくださったのが本書です。たしかに、YS-11を賛美するわけでもなく、非難するわけでもなく、関係者からのインタビューに基づた事実を淡々と述べたその内容は、確かに「ドリーム・マシーン」と通ずるものがあると言えます。
YS-11の基本設計においては、戦前の航空業界で活躍した5人の技術者が大きな役割を果たしたものの、開発が進むにしたがって、胴体太さの縮小など、大幅な設計変更が余儀なくされたこと、また、開発を勧めるために、航空会社が所有していた既存の外国製旅客機に関する資料が役に立った一方で、開発機自体のマニュアルの作成を後回しにしたことで問題が生じたこと、などが印象に残りました。
この書を読んで、改めて思ったのは、「ものづくりは、ひとづくり」だと言うことです。YS-11を創ったことによって得られたものは、空の旅を安全・快適なものにしただけではなく、その過程において、様々な困難に直面し、それを乗り越えた多くの日本人に成長をもたらしたことにあるのだと思いました。今、まさに困難に直面している日本初の純国産ヘリコプターOH-1や、MRJに対する私の見方もだいぶ変わったように思います。
発行:Aviation Assets
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