AVIATION ASSETS

陸上航空の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

共同援助作戦における陸軍航空

陸軍少佐 ジョナサン・バトン

共同援助作戦の支援において輸送任務を実施中にリベリア共和国の海岸線に沿って飛行中の2-501GSABアイアン・ナイト支隊の2機のCH-47Fチヌーク

陸軍航空は、任務遂行を容易にするため、速度、俊敏性及び柔軟性をもって、絶えず変化し続ける様々な課題に適応する方策を常に見出してきた。2014年9月に米国大統領がエボラ出血熱と戦うため、西アフリカに速やかに軍隊を派遣することを発表した時にも、陸軍航空が欠くことのできない重要な役割を演ずるであろうことに疑問の余地はなかった。ただし、今回の派遣においては、過去14年間の派遣と異なり、全般支援航空大隊(general support aviation battalion, GSAB)が有する能力に適合した速やかな対応が求められた。
 第101空挺師団司令部により指揮された共同援助作戦統合軍(Joint Forces Command-United Assistance, JFC-UA)は、米国国際開発機関(U.S. Agency for International Development, USAID)の対応行動を支援する軍事部門として、通告を受けてから30日間でリベリアに展開した。 エボラ出血熱の拡散を阻止するため、共同援助作戦統合軍は、10個部隊のエボラ出血熱治療部隊(Ebola Treatment Units, ETU)の編成を命ぜられ、健康管理者を訓練し、地域防疫検査所を設定し、戦略医療部隊を設立して健康管理者を支援した。陸軍航空は、地理的な制限を克服して任務を遂行するために必要な速度、柔軟性及び信頼性を統合軍にもたらし、派遣当初から大きな貢献をした。イラク及びアフガニスタンにおける戦闘のための展開では軍隊が組織を統制していたが、共同援助作戦におけるエボラ出血熱との戦いでは、国防省が支援的な役割を担わなければならなかった。

運用環境

2014年12月9日、共同援助作戦を支援するため、リベリア共和国のガンタ市にエボラ出血熱治療部隊用の物資を輸送する400マイルの飛行から帰投中にCH-47チヌークのランプドアからリベリア共和国のジャングルを見渡している第2-501全般支援航空大隊アイアン・ナイト支隊CH-47チヌークの機付長軍曹ブライアン・プロンキー

統合任務部隊の準備地域(staging location)には、リベリア共和国の人口密集首都であるモンロビア市が指定された。リベリア共和国は、一箇所で統合軍の全組織を維持できる基盤を有していないことが明らかだったため、複数の場所に組織を分散配置せざるを得なかった。航空基盤についても、主要な準備地域を2箇所に配置する必要があった。国内で2つしかない舗装した滑走路を有しているロバーツ国際空港及びおよびスプリッグペイン空港である。リベリア共和国は、概ねテネシー州と同じ大きさで6,500マイルの道路があるが、そのうち舗装されているのはたった400マイルであり、輸送時間の増大をもたらしていた。その原始的な道路網は、奥深いジャングル及び激しい降雨とあいまって、航空輸送を必要とする特有の兵站上の問題を提起していたのである。陸路では数日間を要する輸送であっても、迅速な支援が可能なヘリコプターを用いれば数時間で実行が可能であった。統合軍にとっての大きな課題は、エボラ出血熱による患者が大量発生している首都から遠く離れた地域にいかにして運用地域を拡大するかであった。
 テキサス州フォート・ブリス(Fort Bliss)から派遣された第1機甲師団戦闘航空旅団第501航空連隊第2大隊は、回転翼機を用いた共同援助作戦統合軍支援を担任した。そのために派遣されたアイアン・ナイト支隊は、14機のヘリコプター(6機のUH-60L、4機のHH-60L及び4機のCH-47F)、航空整備部隊及び前方支援及び航空管制中隊で構成され、支隊の全勢力は、273名であった。大隊は、直ちに全勢力を派遣するのではなく、2014年10月までフォート・ブリスにおける任務を並行的に実施した。通告を受けてから2週間で50名の兵士が派遣され、大隊主力の到着に先立って基盤を確立し、2014年11月15日までに273名全員の派遣を完了した。支隊に対する任務命令の伝達は、ロバーツ国際空港(CH-47)及びスプリッグペイン空港(UH/HH-60)で実施された。割当施設が限定されているため、各空港における任務命令の伝達は、国連の各回転翼及び固定翼部隊と共通の組織で実施された。
 今回の派遣で特徴的だったのは、アイアン・ナイト支隊が師団司令部直轄の独立大隊として編成・運用されたことであった。支隊に対する任務要求は、リベリア共和国のあらゆる地域に人員及び器材を速やかに移動できることを主眼に調整が行われた。支隊に割り当てられた任務は、24時間体制の患者後送態勢、共同援助統合軍指揮グループの支援、遠隔地域への再補給任務、実験室及びエボラ出血熱治療部隊への再補給及び航空任務要求(air mission request, AMR)に対する全般支援等であった。米国陸軍機は、エボラ出血熱患者及び血液サンプルの輸送には使用されなかった。

訓練及び装備に関する教訓事項

2014年12月12日、リベリア共和国ロバーツ国際空港において航空輸送任務のため第2-501アイアン・ナイト支隊全般支援航空大隊とともにCH-47チヌークにスリング物資の吊り下げ作業を行っている第372内陸貨物輸送中隊(Inland Cargo Transportation Company)の要員 この航空機の任務は、共同援助作戦の支援における新設されたエボラ出血熱治療部隊への火葬炉の空輸であった。

陸軍航空は、リベリア共和国に対する支援組織の強化を促進する役割を果たした。統合軍の対応時間を短縮するための鍵となったのは、航続距離増加燃料システム(extended range fuel systems, ERFS)の装備、見通し外通信能力の保持、重量物運搬ヘリコプター(heavy lift helicopters)及び患者後送機の幅広い任務の遂行等の支隊固有の能力の発揮であった。
 従来、患者後送機は、患者後送としての使用法しかないという意識にとらわれて運用されてきたが、リベリア共和国に到着した支隊は、統合軍の任務要求を満たすためには、その「能力を超えた任務」を遂行しなければならない状況に直面した。整備上の影響を最小限にして支援を継続するため、全ての航空部隊に均等に任務を配分する必要があったのである。このための手段のひとつとして、人道的支援を規定する陸軍規則40-3の規定に基づき、患者後送任務を全般支援任務まで拡大した。その結果、患者後送機は、通常の衛生関係者の輸送に加えて、より広範囲に渡る全般支援任務を遂行することとなった。このことにより、計画及び非計画整備の必要性を低減するとともに、経験豊富な搭乗員の活用を図ることができた。
 アイアン・ナイト支隊が発揮した最も重要な能力のひとつは、長距離飛行能力であった。公認された燃料供給源がリベリア共和国内に限定されていたことから、国境沿いの地域に人員及び器材を輸送するためには航続距離増加燃料システムの使用が必須であった。支隊の14機の航空機のうち2機を除いた機体には、機内又は機外の航続距離増加燃料システムが搭載されていた。このシステムにより、スプリッグペイン空港から187マイルも離隔している場合もある国境付近のエボラ出血熱治療部隊まで飛行し、その必要を満たすことが可能となった。また、支隊は、CH-47による「ファット・カウ(太った乳牛)」燃料補給作戦を実施し、航続距離増加燃料システムを搭載していない航空機であってもチヌークが着陸できるところであればどこでも燃料補給ができるようにして、統合軍の任務遂行に不可欠な衛生関係者の移動を支援した。この作戦により、FARP(Forward Arming and Refueling Points, 弾薬燃料再補給点)の必要性を低減させることができた。さらに、航続距離増加燃料システムは、統合軍がギニア共和国またはシエラレオネ共和国での支援における人員及び器材の迅速な移動を可能にした。
 また、リベリア共和国内全域において航空機との通信を確保できたことは、航続距離増加燃料システムの存在とあいまって、統合軍の支援半径を増大するとともに、単機運用に伴うリスクの軽減に貢献した。統合作戦本部(Joint Operations Center, JOC)および支隊指揮所(CP)に設置された衛星通信(Satellite communications radios, SATCOM)設備は、航空機に対する迅速な情報提供を可能にした。衛星通信は、国内通信網の不足を補完するとともに、指揮のために必要な継続的な状況把握を可能にした。衛星通信によりもたらされたもう一つの利点は、搭乗員による操縦者気象通報(pilot weather reports, PI REP)の指揮所への提供を可能にして、リベリア共和国の組織的な気象観測所の不足を補完できたことであった。衛星通信の装備は、ほとんどの任務における行動範囲が通信可能範囲を超えている状況において、単機行動を可能とするための必須条件であった。衛星通信は、この種の派遣において、極めて重要な器材であることが証明された。

整備維持に関する教訓事項

フォート・ブリスでの訓練及び支援任務を継続するため26機の所属機を駐屯地に残しつつ、独立して行動する航空支隊を派遣したことは、複雑な補給整備上の問題をもたらした。陸軍航空及びミサイル・コマンド(Aviation and Missile Command, AMCOM)は、航空支援大隊が派遣されないという状況に鑑み、駐屯地からの離隔運用に伴う能力の不足を補うため、整備工具セット、整備用天幕及びさまざまな地上支援器材の補給を実施した。さらに、技術者1名及び兵站支援要員(Logistics Assistance Representatives, LARs)2名を現地に派遣した。これらの要員は、航空及びミサイル・コマンドとの連携を維持しつつ、必要な航空部品の調達を実施するとともに、整備設計要求(maintenance engineering call, MEC)(訳者注:陸自のEWOに相当)の実施を支援した。
 現地の未開発な活動地域及び限定的なインフラは、過去の派遣で経験したことのなかった兵站上の問題をもたらした。将来、小規模の支隊として派遣される航空部隊は、戦闘航空旅団全体から適切な要員の派遣を受け、日々の航空整備のための専門技術者及び上級指導者を増員し、維持・兵站上の諸問題に対する適切な指導を受けられるようにすることが必要である。大隊レベルの幕僚は、師団レベル司令部に統合され、司令部の要員と直接連携しながら業務が実施できるように準備しなければならない。非可動時間(non-mission-capable, NMC)については、その89%が現地への部品未着によるものであった。本派遣から得られた貴重な教訓の一つは、非可動機(aircraft on ground, AOG)の整備優先順位に関する共通的運用構想を直ちに確立することの重要性であった。統合軍第4部と大隊との情報及び追跡システム(information and tracking system)を用いた情報の共有は、非可動時間の削減に有効であった。
 サハラ砂漠以南のアフリカにおける補給整備は、整備・維持要員にとって、非常に問題の多い環境状態をもたらした。油脂類は、環境に合わせて成分を調整する必要があった。部隊は、油脂類の発注及び調達が困難であることを予め認識しておかなければならない。また、環境の変化に合わせて、腐食防止プログラムの修正に着意しなければならない。通常、沿岸地域で運用されることがない部隊は、腐食防止対策を強化するため、派遣前に事前研究を実施するとともに適切な器材及び資材を携行できていることを確認すべきである。また、生産管理担当者は、部隊の腐食防止プログラムの環境変化に合わせた調整の必要性について検討すべきである。

結 論

 2014年12月13日、リベリア共和国のジェームス・スプリッグペイン飛行場の列線に駐機するCH-47チヌークの整備を実施中の第2-501全般支援航空大隊アイアン・ナイト支隊の兵士達

将来の航空支隊の派遣に備え、指揮官及び企業の専門家は、西アフリカで直面した特有の問題点への対策を検討することが重要である。西アフリカに関わる遠隔地での過酷な運用環境を認識し、適合し、克服して、エボラ出血熱と戦ったことは、高く評価されべきことである。将来、厳しい環境下に突然派遣され、独立して運用しなければならない場合において、航空科部隊の能力を最大限に発揮するために必要な戦いの原則は、適応性と俊敏性である。部隊が派遣されることになった場合に厳しい地域での運用に対する論理的、運用的及び環境的諸問題を計画する「精神的な準備」ができていることが重要である。支援部隊、人員及び装備品を適切に決定するための派遣前の詳細な任務分析ももちろん必要であるが、今回の派遣で経験したように、現地では変化が生じるのが常であり、計画は単なる出発点に過ぎないことを認識すべきである。複数の国家が協力して人命を救った素晴らしい成果をもたらした今回の派遣での経験を忘れることはないであろう。

陸軍少佐 ジョナサン・バトンは、テキサス州フォート・ブリス第1機甲師団、戦闘航空旅団、第501航空連隊(アイアン・ナイト支隊)第2大隊のS-3運用将校である。

出典:ARMY AVIATION, August/September 2015, Army Aviation Association of America

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    地上での燃料輸送が困難な状況において、「ファット・カウ」は有効ですね。

  2. 管理人 より:

    海外での運用においては、衛星電話は必須のようです。