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陸軍航空の情報センター

将来型垂直離着陸機の速度と航続距離を担う動力源の供給に向けて

ジョージ・H・マクラーレン

ロールスロイス社は、チーム・バローの誇り高き一員として、ベルV-280垂直離着陸機の推進システムを設計し、陸軍の近代化に貢献している。

作戦用航空機の速度および航続距離がこれほどまでに重要視されたことは、いまだかつてなかったであろう。100万時間以上の飛行実績を誇るロールスロイスAE1107エンジンは、その高い信頼性と世界的な支援体制をもって、アメリカ陸軍の近代化に貢献しようとしている。ロールスロイス社は、ベル社が率いるチーム・バローの一員として、豊富な戦闘実績を有するAE1107ターボシャフト・エンジンを活用したV-280垂直離着陸機用統合推進システムを開発中なのである。

ベルV-280は、陸軍の近代化に貢献するために必要な敏捷性、高速性、航続性および耐久性を有することが飛行実証された唯一の兵器システムである。世界規模の主要航空宇宙企業であり、ベル社の長年のパートナーであるロールスロイス社は、この機体に動力源であるエンジンおよび推進システムを提供している。アメリカ陸軍の将来型長距離強襲機プログラムにV-280バローを提案しているベル社にとって、チーム・バローへの優れた企業グループの参加は、欠かせないものとなっている。

戦闘実績

V-22垂直離着陸機の動力源であるロールスロイスAE1107エンジンは、アメリカ陸軍のFLRAAプログラムの候補機であるベルV-280垂直離着陸機の動力源としても採用された。

V-280に用いられるロールスロイスAE1107エンジンは、アメリカ海兵隊、空軍および海軍で使用されているすべてのV-22垂直離着陸機の動力源であり、世界各地での戦闘行動においてその能力の高さを実証してきた。また、アメリカ海軍の新型エアクッション揚陸艇であるSSC(Ship-to-Shore Connector)の動力源にも採用されている。

AE1107は高い実績を誇るロールスロイスAEエンジン・シリーズの最新モデルであり、その特徴は直ちに利用可能な推進手段を低リスクで実現できることにある。AEエンジンは、これまでに7,000台以上が軍用および民間用航空機用として納入され、その8,200万時間以上の総飛行時間を達成している。その過酷な運用の歴史は、アメリカ陸軍の関心をも呼び起こし、その信頼を勝ち取ってきた。AE1107Fは、ライフサイクル全体を通じて、優れた速度および航続性能と高い経済性を実現するが期待されている。

豊富な実績を有するV-22用エンジンと類似したこのエンジンには、V-22での運用から得られた教訓に基づく改修が加えられ、さらなる信頼性の向上が図られている。

ロールスロイス社とその前身であるアリソン社には、過去数十年にわたって、インディアナ州インディアナポリスにある工場でエンジンを製造し、陸軍の回転翼機プログラムを支援してきた。初期型のガスタービン・エンジンであるアリソン250は、1960年代の初頭以来、各種軍用ヘリコプターの動力源として用いられてきた。現在、ロールスロイスM250と呼ばれるそのエンジン・シリーズは、陸軍のリトルバード、ならびに既に退役したOH-6およびOH-58型機にも動力源を供給してきたのである。

チーム・バロー

ロールスロイス社は、緊密な協力体制および高度な技術力を有するチーム・バローの一員として、陸軍に対する近代化支援の準備を進めてきた。また、V-22などの回転翼機への動力源の提供に関し、何十年にもわたってベル社と提携してきたという実績もある。そのロールスロイス社が約4年間の年月をかけベル社と協同して設計したのが、エンジン・インレットから赤外線サプレッサーまでを完全に統合した、V-280用推進システムなのである。ベル社とロールスロイス社は、緊密に連携しつつ、陸軍の近代化支援に必要な設計を的確に実施し、リスクの軽減を実現してきた。AE1107Fエンジンの赤外線サプレッサーの設計がその一例であり、その完成度の高さは、V-280の生存性向上に大きく貢献している。

超近代的な設備

これまでのロールスロイスAEエンジンと同様に、AE1107Fの設計、製造、組立、および試験は、インディアナポリスにあるロールスロイス社の工場で行われる。6億ドルをかけて近代化されたばかりのその施設は、世界最高水準の高度な製造環境を有している。

製造能力を向上させつつ専有地積を削減することに成功した超近代的な施設は、高度な技能を持つアメリカ人労働者に支えられ、他に類を見ない効率性を発揮している。業界最高水準のデジタル化された設計機器およびロボット化された製造装置は、国防総省などのすべての顧客に対し、大きな利益をもたらしてゆくことであろう。

AE1107Fエンジンなどの設計・製造を支援しているのが、同じくインディアナポリスにあるロールスロイス・リバティワークスと呼ばれる技術研究開発部門である。リバティワークスは、V-280の赤外線サプレッサー・システムだけではなく、指向性エネルギー・システムに関する技術開発にも携わっており、弾倉容量を無限化する独自の統合電力・熱管理方式を確立している。ロールスロイス社は、ロッキード・マーティン社と共同し、コールドファイアと呼ばれるその方式の室内および屋外試験を実施中である。

ロールスロイス社は、脱炭素化にも積極的に取り組んでおり、2030年までに製造工程におけるカーボンニュートラルの実現を目指している。また、バッテリー駆動機であるスピリット・オブ・イノベーションで時速387マイルという対気速度世界記録を樹立するなど、その技術の環境問題への適用にも挑戦している。

インディアナ州インディアナポリスにあるロールスロイス社ノースアメリカの主要な製造施設では、3,000人以上の従業員がAE1107などのアメリカ国防総省向けエンジン・推進システムの製造に従事している。

ジョージ・H・マクラーレンは、ロールスロイス社の北米防衛担当マーケティング&コミュニケーション担当副社長です。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2021年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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