AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

EAAツール社-陸軍機用特殊工具の供給源

エド・エルスネ

Main Rotor Hub Spindle Puller
メイン・ローター・ハブ・スピンドル・プーラー(P/N:SP-60-AA)は、固着したスピンドルを取り外す際に、ライナー、ピッチ・ホーン、およびスピンドル・ラグが損傷するのを防止する。

米陸軍は、テロとのグローバル戦争を開始して以降、ヘリコプターの補給整備基盤を充実させてきた。ほぼ20年間をかけて、格納庫、整備室、工具室、工作室などを整備するとともに、PLL(prescribed load list, 携行品目表)に示された工具および保有定数表に示された部品の充足を進めてきたのである。ところが、その後、任務部隊の規模が縮小され始めると、特殊工具が後方の整備支援部隊に保管されるようになってきた。このため、航空機の修理を実施する場合に、必要な特殊工具の輸送に時間を浪費してしまうことが多くなった。整備支援部隊から作戦部隊への特殊工具の空輸が困難なため、現地で保有している工具をもって代用しなければならない場合もあり、そのことによって部品を損傷してしまう危険性が増大していた。

EAAツール社は、この危険性を解消するため、各種特殊工具の設計・製造に着手した。そして、使いやすく、耐久性があり、信頼性が高く、効率的かつ効果的な作業が可能なH-60およびS-70シリーズ用特殊工具の製造・供給を開始したのである。

CDRおよびSPツールの供給

EAAツール社は、まず、トランスミッションのメイン・サンプ用チップ・デティクター取り外しツール(CDR Tool, Chip Detector Removal Tool)(P/N: CDR-60-AA)およびメイン・ローター・ハブ・スピンドル・プーラー(SP Tool, Spindle Puller Tool)(P/N: SP-60-AA)の設計に着手した。これら2つの特殊工具の目標は、H-60およびS-70シリーズの機体整備における重大かつ慢性的な問題を解決することであった。

CDRツールは、プライヤーやウォーターポンプ・プライヤーなどの不適切な工具を用いることで、メイン・モジュールのチップ・デティクターやトランスミッション・サンプを損傷してしまうことを防止するためのものである。チップ・デティクターの取り外し方法に関して、整備実施規定には特別な記述がないが、実際の整備においては、部品を損傷させてしまう場合があった。また、展開地から離れた場所での運用中にトランスミッション・チップ・コーション・ライトが点灯した場合、機体に適切な工具が搭載されていないことが多かったのである。このため、AMCOM(Army Aviation and Missile Command, 陸軍航空およびミサイル・コマンド)が調達したCDRは、UH-60の搭載工具セットに加えられることとなった。

一方、メイン・ローター・スピンドルは、ハブに固着しているために取り外し時に損傷を受け、ハブまたはスピンドル・アッセンブリー全体の交換が必要となる場合があった。整備実施規定には、メイン・ローター・スピンドル取り外し用の特殊工具として、ツー・バイ・フォーの木材が指定されているが、EAAツール社のスピンドル・プーラーを用いれば、ライナー、ピッチ・ホーン、スピンドル・ラグなどの損傷を防止できるのである。この工具を使用することにより、乱暴にこじったり、はたいたり、スライド・ハンマーを用いたりする必要がなくなり、取り外し作業中にスピンドルを機体に落下させてしまうことも防止できるからである。スピンドル・プーラーは、すでにAED(Aviation Engineering Directorate, 航空設計部局)の使用承認を得ており、今後、NSN(National Stock Number, 物品番号)が付与される予定である。将来的には、UH-60メイン・ローター・スピンドル・アッセンブリー取り外し用の特殊工具として整備実施規定に規定され、全ての整備部隊に交付されるようになるであろう。

修理工具セット

Basic and plus heavy maintenance kits
PMI(Phase Maintenance Inspection, 定期点検)ⅠおよびⅡ用修理工具セット

上記2つの特殊工具への需要が高まったことを踏まえ、EAA社は、他の工具についても、同じような検討、設計および製造に着手した。
これらの工具は、AMCOMの承認を得て装備化することが目標とされた。現時点においても、それを目標としていることに変わりはないが、国防総省および米国政府、航空関連企業や民間の航空関連機関などから、すでに受注が始まっている。また、これらの機関などからは、新たな修理工具セットの開発についても、要望が寄せられた。

EAAツール社の独自の工具を末端ユーザーの手元に届けるためには、まだ、解決しなければならない問題が残っている。そのひとつは、FRACAS(Failure Reporting, Analysis, and Corrective Action System, 不具合報告、分析および対策システム)を用いた信頼性管理情報活動を行い、費用対効果を分析したうえで、装備化要領を決定することである。整備データへのアクセスが制限されていることにより、その実施が妨げられているのである。その代わりに実施されたのが、部隊からの要望に基づいた製造なのである。EAAツール社の工具に対する末端ユーザーからの支持は、ますます高まっている。今後も、これらの工具の改善を図り、整備上の諸問題を解決するために最善を尽くしてゆきたいと考えている。

EAAツール社は、その独自の工具を2つのH-60およびS-70用修理工具セットにまとめることとした。これらの工具セットは、堅牢な軍用規格のコンテナの中に濃灰色のミル規格の充填物を敷いて梱包され、員数確認を容易にしてFODを防止するとともに、野外への携行が容易となるように設計されている。また、軽量かつ堅牢であり、いかなる厳しい環境にも対応が可能である。セット内容品には、スナップオン社、マクナリー社などの厳選された工具メーカーのCOTS(commercial off the shel, 民生品)工具も含まれている。従来から使用されている工具についても、EAAツール社の設計基準に基づく調査および再設計を行い、品質の向上が図られている。もちろん、当社の独自の工具は、すべてセット内容品に含まれている。

H-60/S-70修理工具セット(P/N: COMP-60-AA)は、従来のA-92工具セットに取って代わるものではない。しかしながら、より軽量で持ち運び容易な工具セットを装備することにより、各種状況下での部隊の展開が容易になることであろう。この修理工具セットは、国防総省の各軍種だけではなく、H-60用特殊工具の入手が困難な民間およびFMS(Foreign Military Sales, 対外有償軍事援助)運用者にとっても、有用なものとなるであろう。

修理工具セットには、UH-60の整備実施規定が現地作成を指示している工具や、一般工具セットの中には含まれていない民生品の工具も含まれている。この工具セットの目的は、H-60およびS-70シリーズの日常的な整備項目の大部分を実施するために必要な特殊工具を提供することである。また、当社独自の設計・開発に固執するのではなく、当社の基準を満たす民生品の工具を採用することにより、高い品質を確保するように着意している。

EAAツール社は、自社の経験を生かすとともに、陸軍の工具室や工作室で勤務する整備員たちの40年間の試行錯誤に基づく要望事項、および工具セットの内容品目の決定に携わってきた整備員たちが何十年もかかって構築してきたデータを有効に活用してきた。当社の修理工具セットは、PMI(Phase Maintenance Inspection, 定期点検)ⅠおよびⅡの90%以上の項目や、ほぼすべての非計画整備を実施できるように設計されている。

EAAツール社は、また、設立当初より、品質の確保に重点を置き、使用者の要望に耳を傾け続けてきた。OEM(Original Equipment Manufacturer, 相手先商標製造会社)により製造された従来の工具セットは、整備上の必要性はなんとか満たしていたものの、それ以上のものではなかった。細部の形状、持ちやすさ、操作のしやすさ、作動の確実さなどに欠け、さらに、最も重要なことは、整備作業の実施に真に必要な事項に関する末端ユーザーからの要望事項を反映できていなかったのである。

EAAツール社は、45年の歴史を持つUH-60ブラックホークの従来の工具体系を見直し、新しい工具体系を検討・再設計し、その改善を図ってきた。今後は、H-60やS-70シリーズだけではなく、CH-47、AH-64および民間機についても、その整備上の問題に対する新たな解決策を提案してゆきたいと考えている。機会が得られれば、F-35やV-22などの軍用機についても、新しい工具を開発できるであろう。これからも、末端ユーザーの声に耳を傾け、その要望に基づく工具を提供してゆきたい。

エド・エルスネ氏は、EAAツール社のオーナーである。

出典:ARMY AVIATION, December 2018, Army Aviation Association of America

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:501

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    すでに何十年も整備を実施してきたブラックホークですが、まだまだ、創意工夫の余地があるようです。