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陸軍航空の情報センター

不確実な時代における実効性ある航空機の確保ー現在及び未来に向けて

【特集】航空職種におけるリーダーシップー航空PEO(計画管理室)

准将 トーマス・H・トッド3世

米陸軍は、その歴史上、最も長い期間に渡って展開を継続している。陸軍の操縦士たちは、過去15年間に渡り、複数の運用戦域で戦闘部隊指揮官のための緊要な任務を遂行しながら、750万時間以上の飛行を行ってきた。

米陸軍の航空機は、世界中の紛争対処作戦のすべての局面において卓越した性能を発揮し続け、通常の5倍から6倍の運用頻度で飛行しながらも、予想をはるかに上回る可動率を維持している。長期間に渡って高い頻度で国外展開を繰り返していることは、戦闘でその能力を実証しなければならない我々の航空機にとって大きな負担となっている。にもかかわらず、このように優れた性能を発揮し続けていられるのは、何年も前にそれらの機体を開発した航空企業と、今日、必要な時にはいつでも兵士たちに対する航空支援を完遂し続けている献身的な陸軍航空の各特技者たちの功績である。また、陸軍に対する絶え間ない支援と、世界最高の兵器システムを供給してくれている業界パートナーの功績も忘れてはならない。

UH-60Vブラック・ホークの設計開発試作初号機の試験飛行を完了した多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、2月8日、じ後の試験を実施するため、当該機を政府に受け渡した。2年以上前から予定されていたこのマイルストーンは、米陸軍AMRDEC(Aviation & Missile Research, Development & Engineering Center, 航空・ミサイル研究開発技術センター)、レッドストーン・ディフェンス・システム社、ノースロップ・グラマン社などの軍及び企業の組織的な共同作業により達成されたものである。

我々は、完全な戦闘加入状態である現状においても、状況を的確に把握し、適切な戦略が実行されていることを確認し続け、現在および将来の課題に適切に対応しなければならない。不確実な財政状況において、ますます重要になっているのは、現状のシステムを整備、維持及び改善するために何を重視すべきなのかを自分自身に問いかけることである。将来の陸軍航空のために適切な投資を行うためには、どのようなバランスやトレードオフが必要なのであろうか?

明日の調達戦略を決定するのは、現在及び将来に任務を遂行する兵士たちに対する支援能力である。必要なテクノロジーを開発し、そのテクノロジーを先進プログラムや最終的には部隊における改善に役立てるためには、科学技術への投資の継続が不可欠である。

航空PEO(計画管理室)は、あらゆる機種に関する複雑な兵器システムの設計、開発及び交付に際し、その目的と目標が陸軍省の戦略の方向と一致していることを確実にしつつ、主要な事業を推進している。そのことは、航空企業がその役割を適切に果たすことに役立っている。

効果的なプログラム管理による近代化事業の継続

航空PEOは、航空機に新しいテクノロジーを導入することにより、機体の近代化を継続するとともに、部品枯渇などの機体維持に関する諸問題に取り組んできた。現在の諸問題に即応し、安定かつ信頼できる航空機を維持して将来の作戦に適応してゆくためには、この取り組みを欠かすことはできない。航空PEOの部下たちは、有能なプロジェクト・マネージャーたちの指導のもと、我々の航空機が常に世界で最も優れたものにするために最善を尽くしているところである。

多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、UH-60Vブラック・ホークの設計開発試作初号機の試験飛行を完了し、2月8日、じ後の試験実施のため、当該機を政府に受け渡した。2年以上前から予定されていたこのマイルストーンは、米陸軍AMRDEC(Aviation & Missile Research, Development & Engineering Center, 航空・ミサイル研究開発技術センター)、レッドストーン・ディフェンス・システム社、ノースロップ・グラマン社などの軍及び企業の組織的な共同作業により達成されたものである。UH-60V試作機(プロトタイプ)の初飛行の成功は、UH-60Vプログラムが主要なマイルストーンに到達し、運用部隊への強化された最新の航空能力の供給に一歩近づいたことを意味する。

UH-72Aラコタにおいては、整備記録が紙からデジタルに変換された。その整備記録は、ULLS-A(Unit Level Logistics System-Aviation, 部隊レベル兵站システム-航空)の後継に位置づけられるものであり、民間のWebベースの航空整備記録管理アプリケーションを陸軍が開発したソフトウエアであるLMIVIS(Logistics Maintenance Management System, 兵站整備管理システム)に移設したものである。UH-72のプロダクト・オフィスは、3箇所のCTC(combat training centers, 戦闘訓練センター)に装備されているOPFOR(Opposing Forces, 対抗部隊)用UH-72Aに打ち返し能力を装備するため、その近代化を継続している。このシステムは、OPFOR用UH-72Aが敵の航空機による攻撃を模擬できるようにするものであり、複数の統合されたレーザー攻撃システムを用い、昼夜のいずれにおいても、目標を捕捉・破壊できるものである。

2017年に得られたもう一つの成果としては、ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast, 放送型自動従属監視)の改良がある。この改良により、連邦航空局から示された2020年1月を期限とする要求事項に適応させるとともに、陸軍州兵の監視・支援機が用いる画像データの送信周波数を連邦通信委員会から示された周波数に変更することができた。

CH-47FブロックⅡチヌークのアップグレードは、将来のブロック・アップグレード戦略に向けた最初の一歩であり、チヌークの計画退役時期である2060年まで、この航空機を経済的に維持できるように考慮されいる。ブロックⅡチームのこの数年間の成果には、目覚ましいものがある。EMD(技術および製造開発)提案要求書の発簡に始まり、ボーイング社の要求を受領・評価し、陸軍要求事項監督評議会から本プログラムの推進についての承認を得るところまで来ている。チヌークのプロダクト・オフィスは、リスク軽減のための試験を継続し、EMD契約の締結に必要な手続きを完了するとともに、マイルストーンの達成を確認した上でブロックⅡ継続プログラムの執行を開始する予定である。

ブロックⅡを進めるにあたっての要となるのは、新型ローター・ブレードACRB(Advanced Chinook Rotor Blade, 改良型チヌーク用ローター・ブレード)の導入である。このブレードは、高高度及び高熱環境におけるヘリコプターの性能と信頼性を大幅に向上させるものである。ボーイング社は、12月にメサ工場において、試作ACRBを搭載した航空機の飛行に初めて成功した。この飛行試験は、マイルストーンの達成の指標となる技術的準備を完了するための重要なステップとなっている。

2016年末、陸軍は、169機目のAH-64Eアパッチ・ヘリを納入した。これは、5コ飛行大隊分の機数に相当し、陸軍の調達目標である690機のおよそ25%に相当する。これらの機体の納入先部隊は、第1-119ARB(Armed Reconnaissance Battalion, 武装偵察大隊)、第1-101ARB、2-17CAV(cavalry, 騎兵大隊)、第7-17CAVおよびUSAACE(U.S. Army Aviation Center of Excellence, 米陸軍航空センター)である。

AH-64E開発及び近代化プロダクト・オフィスは、AH-64Eバージョン6と呼ばれる第2段の計画的技術改善に取り組んでいる。バージョン6の機体においては、バージョン4以降に導入された能力が強化されるとともに、各種の新しい能力が付加される。バージョン6で追加される能力により、AH-64Eの要求事項は、そのすべてが満たされることになる。

航空システムプロジェクト・オフィスは、悪視程環境下においても陸軍航空の各機種を運用できるようにするための装備の開発を継続している。現在、長波長赤外線、ミリ波レーダ およびレーザー画像検出・測距を融合させた画像を活用できる技術を検討している。その融合画像は、シンボルと重ね合わせられた合成ビジョン方式により、地理空間データに組み込まれることになろう。このシステムは、ブラウンアウト環境下における離着陸を可能にするため、CH-47FおよびHH/UH-60Mに装備される予定である。

無人航空機システムは、継続的に要望が多い装備であり、戦闘作戦の開始以来、200万時間近い飛行を行って、兵士たちを支援してきた。毎月2個部隊ずつ行われている改良型シャドウV2システムの装備化は、UAS(Unmmand Aircraft System,無人航空機システム )能力を有するUASBCT(Brigade Combat Team, 旅団戦闘団)、戦闘航空旅団および特殊作戦部隊を対象として実施されている。2016年9月、テキサス州フォート・フードにおいて、GBSAA(ground based sense and avoid, 地上配備型検知・回避)システムを使用したUASの領空内での飛行が初めて行われた。GBSAAの導入により、UASの運用者たちは、随伴機、地上監視員などのUAS実機訓練の阻害事項を伴わずに自分たちの訓練地域で飛行を行えるようになる。なお、2016年10月には、MQー1C航続距離延伸型グレイ・イーグルが初飛行を行っている。

2017年1月23日、ワシントン州ルイス・マコード統合基地で訓練飛行中に滑走路上でホバリングする第16戦闘航空旅団所属の米陸軍AH-64E。アパッチ・プロジェクト・オフィスは、2017年から2021年にかけての複数年度契約を初めて実施し、244機の改修および新造AH-64E調達している。アパッチの複数年度契約は、単年度契約を実施する場合に比べて、4億2500万ドル以上の経費節減をもたらすと見込まれている。

コスト削減のための革新的契約戦略

今日の経費節減は、将来のために必要な投資である。この原則を具現するため、航空PEOは、最新機の調達に関し、単価の削減を継続できる機数の購入を継続している。コスト増加の回避に有効な複数年度契約の導入という改革が行われたのは、5年間の安定した既知の要求事項を把握した企業と、単年度契約に伴う不安定性との比較がもたらした結果であった。この契約方式の導入により、プロジェクト担当者は、陸軍およびその兵士たちに可能な限り最高の価値を持つ装備を供給することが可能になった。

アパッチ・プロジェクト・オフィスは、2017年度から2021年度にかけての複数年度契約を執行中である。この契約により、AH-64Eに関し、新たな要求事項やFMS(Foreign Military Sales, 対外有償軍事援助)の選択肢を維持しつつ、陸軍のプロジェクト化された要求事項を具現することが可能となった。アパッチの複数年度契約は、244機のAH-64Eを単年度契約で改修または新造する場合と比較して、4億2500万ドル以上の経費節減をもたらすものと考えられている。

多用途ヘリコプター・プロジェクト・オフィスは、H-60Mに関し、2017年度から新たな5ヵ年間の複数年度製造契約を締結するために必要なすべての手続きを完了した。単年度契約を5年間締結した場合に比べて、約11パーセントの経費節減となる。

将来にむけた焦点

航空PEOは、前述の近代化事業と並行して、老朽化した航空機に代わる新たなシステムを開発するためのいくつかの重要なプログラムを推進し、将来の戦場における兵士たちに対する卓越した支援の継続を図っている。これらのプログラムには、ITE(Improved Turbine Engine, 改善型タービン・エンジン)とFVL(Improved Turbine Engine, 将来型回転翼機)が含まれている。実行可能な技術方式が何であるのかを明らかにし、企業との緊密な協力を早期に開始することが、これらのプログラムを成功させるカギとなっている。

ITE/FVL(改善型タービン・エンジン/将来型回転翼機)プロジェクト・オフィスは、双方のプログラムに関し、重要なマイルストーンを達成した。昨年6月、ITL/FVLプロジェクト・オフィスは、AAE(Improved Turbine Engine, 陸軍調達管理官)およびASARC(Army System Acquisition Review Council, 陸軍システム取得審査評議会)に対し、ITEマイルストーンA取得決定通達の判断基準についての同意、ならびに技術成熟およびリスク軽減の調達段階への移行についての承認が得られたことを説明した。ITEプロジェクトのマイルストーンAの達成に続き、ITE/FVLプロジェクト・オフィスの支援を受けたレッドストーンの陸軍契約コマンドは、8月22日、2件の技術成熟およびリスク軽減に関する個別契約を締結した。その契約相手方は、GE(General Electric, ゼネラル・エレクトリック)のATEC(Aviation and the Advanced Turbine Engine Company, 航空および先進タービン・エンジン・カンパニーであり、その総額は、2億5600百万ドルである。この契約は、2018年度第2四半期に予定されている各ベンダーによる基本設計評価をもって完結する。その後、マイルストーンBが達成されたならば、EMD(技術および製造開発)段階へと移行し、ベンダーは、ひとつに絞られることになる。

プロジェクト・オフィス・チームは、また、10月、国防調達官によるFVL能力特性指定第3号のMDD(Materiel Development Decision, 装備開発決定)に関し、DAB(国防調達委員会)における決定への道を切り開いた。このことにより、FVL能力特性指定第3号事業は、陸軍が主導し、複数の軍種が参加する準主要国防調達プログラムとして位置づけられることになった。MDDのマイルストーン達成は、国防省が次世代FVL機プログラムを公式に開始することを意味する。FVLは、代替案分析の結果、複数軍種の参加、原材料調達の指示を経て、2019年にマイルストーンAに到達するものと見積もられている。

結 論

陸軍航空は、陸軍の様々な任務の遂行において、常に重要な役割を担ってゆくことになろう。そのために必要なのは、地上の兵士たちを支援できる運用能力および柔軟性を維持することに重点を置くことである。同時に、老朽化した航空機の近代化および維持ならびに新装備の導入に関する決定については、財政的責任を負うことを認識しなければならない。

陸軍航空の75周年を迎えるにあたり、この偉大なコミュニティの一員である者は誰でも、自らが米国の国防に貢献していることを誇りとすべきである。オクラホマ州フォート・シルでの創世期から今日まで、顕著な貢献を続けてきた陸軍航空は、地上指揮官にとって、任務を要求する対象であるだけではなく、勝利を得るために頼りにしなければならない決定的な考慮事項となっている。この勝利は、その先見的かつ革新的な発想および忍耐力をもって陸軍航空に今日の地位を与えた、多くの献身的な人々の働きによるものなのである。

私は、このたび航空PEOに戻れたことを誇りに思うとともに、その責任を痛感している。我々には、組織全体のすべての兵士、軍属および支援企業により日々強化され続け、高い評価を受けている一流のチームがある。司令官の企図に従い、兵器システムの設計、開発および納入を確実に継続し、戦闘における万能工具を陸軍航空に保有させるために必要な指導力を発揮してゆくことを約束するものである。多くの課題が待ち受けていることだろう。しかし、将来に我々が保有するものや兵士たちが勝ち取るものをこの目で確かめたいとも思っている。

 陸軍准将トーマス・H・ドッド3世は、アラバマ州レッドストーン工廠の米陸軍航空担当プログラム・エクゼクティブ・オフィサーである。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2017年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

     経費節減の鍵は、やはり複数年度契約のようですね。