AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

航空機用自己防護装置の現況

ブロック・A・ジマーマン大佐

アラスカ州で飛行訓練を行うCH-47F

PM ASE(Project Management Office, Aircraft Survivability Equipment, 航空機用自己防護装置プロジェクト管理室) プロジェクト・マネージャーに着任して、1年を迎えようとしている。PM ASE は、いつ、どこにでも、兵士達に最高の自己防護装置およびそれに関する支援を提供するため、日々努力している。陸軍指導部は、将来のマルチドメイン戦場における優位性を確保するため、ASE能力の重要性を認識し、そのための予算を投入し続けている。この記事では、各プロダクト・オフィスの最新情報を提供するとともに、PM ASEの将来を簡単に説明する。

赤外線妨害装置(Infrared Countermeasure, IRCM)

 陸軍は、長年の開発および試験を経て、携帯型地対空ミサイル(Man-Portable Air-Defense Systems, MANPADS) から搭乗員や航空機を守るCIRCM(Common Infrared Countermeasure, 共通対赤外線装置)システムの実用化に成功した。CIRCMは、回転翼機、ティルトローター機および小型固定翼機用の、次世代のレーザー利用した軽量型赤外線式妨害システムである。このシステムは、2022年9月に初期作戦能力を達成し、すでに一部の機体への搭載が始まっている。オープン・システム・アーキテクチャを利用するこのシステムは、敵の技術および脅威の進化に対し、すみやかに適応できる柔軟性を有している。その一例となるのは、現在の基本設計概念の範ちゅうでプラグ・アンド・プレイを実現した、ジュピター社製次世代型レーザーの開発である。このレーザーを使用することにより、ほぼ同等の脅威を有する敵に対し、卓越した能力を維持できる。このプログラムにおいては、機体の統合および任務システムによる操用性を確保するため、FVL(Future Vertical Lift, 将来型垂直離着陸機)との連携も進められている。

 CIRCMシステムは、2009 年以降、CH-47Fの搭乗員および機体を高度な脅威から防護し、過酷な環境下において300,000時間以上の飛行を重ねてきたATIRCM(Advanced Threat Infrared Countermeasures, 改良型対赤外線装置)システムの後継装備品である。CIRCMへの移行に伴い、2024年度からは、ATIRCMシステムの機体からの取り下ろしおよび破棄が開始される。

ミサイル警報装置 (Missile Warning, MW)

CMWS(Common Missile Warning System, 共通ミサイル警報システム)は、回転翼および固定翼機に搭載され、ミサイルを警報するシステムである。CMWSは、これまで、約20年間使用されてきた。現在、このシステムは、敵の脅威に対し、高い信頼性および優れた性能を発揮している。すでに完全充足(Full Materiel Release, FMR) を完了し、本年中に新型の「Kilo-A」ソフトウェア・バージョンの供給を開始する予定である。CMWSは、今後も、ASEにおける重要な地位を維持するであろう。LIMWS (Limited Interim Missile Warning System,暫定ミサイル警報システム) の緊急装備化 (Quick Reaction Capability, QRC)は、現行の旧型CMWSと将来のミサイル警報システムの間のギャップを埋めるプログラムである。このプログラムは、約1年前から急速なペースで進められてきたものであり、AH-64EおよびHH/UH-60Mへの緊急器材支給を実現している。これらの航空機は、LIMWSを用いた飛行を4,600時間以上行い、さまざまな作戦を支援してきたが、器材の故障による任務への影響はなかった。

PM ASEはまた、ITDS(Improved Threat Detection System, 改良型脅威検出システム)による、将来の戦場で陸軍航空を支援するための高度なミサイル警戒能力の開発にも力を注いでいる。ITDSは、陸軍の次世代型航空機用ミサイル警報および脅威検出システムである。検出範囲を拡大し、クラッター環境での検出を向上させ、新たな脅威に迅速に対応するための能力の向上が期待されている。ITDSには、モジュラー・オープン・システム・アプローチおよび将来型空中能力環境(Future Airborne Capability Environment, FACE)手法が用いられ、将来の技術改善を促進することにより、ライフ・サイクル全体を通じ、ほぼ同等の敵の脅威に対する優位性を維持することが可能となっている。ITDSは、陸軍の調達形成委員会 (Acquisition Shaping Panel , ASP) で審議中であり、今年はそのパート1および2を完了した。

脅威警報装置 (Threat Warning, TW)

LDS(Laser Detection System, レーザー検知システム)AN/AVR-2Bは、既存の複数の機体への装備化が進められている。PM ASEは、PM VPS(車両防護システム・プロジェクト管理室)と共に、空地の共同事業に着手した。この事業により、現在のLDSよりも多くの機能が提供され、そのプロセッサはソフトウェア・アプリケーションによって取って代わられる。

RWW(Radar Warning Receiver, レーダー警戒装置)の最新バージョンであるAN/APR-39E(V)2MRWR(Modernized RWR, 近代化RWR)は、完全にデジタル化されたシステムであり、既存の陸軍機向けのRWRである。MRWRは、2023年に主要なテストを完了し、2024年に最終評価を予定している。すでに生産準備を完了しており、試験が完了したならば部隊配備が開始される。性能向上型の暫定RWRであるAN/APR-39D(V)2は、すでに部隊配備を完了している。このシステムは、従来のRWRと将来のRWRとの間のギャップを埋めることになる。

共通システム統合 (Common Systems Integration, CSI)

共通システム統合プロダクト・オフィスは、統合緊急業計要望(Joint Urgent Operational Needs Statement, JUONS) およびCIRCMの緊急装備化、PM ASEのFMS関連事業、教材・シミュレーター(Training Aids, Devices, Simulators, and Simulations, TADSS)、および ASE近代化とFVLとの統合など、さまざまなプログラムを管理している。

統合緊急業計要望に関しては、作戦上の緊急のニーズに応えるため、海軍のATW(Advanced Threat Warner, 改良型脅威警告装置)である大型航空機用対赤外線装置を一部の機体に搭載した。このプログラムは、2022年9月に完了し、敵ミサイルによる航空機の損失を伴わずに、51,780時間を超える戦闘飛行時間を記録した。CIRCMの緊急装備化プログラムについても、CMWSとCIRCMとの連携を加速し、CIRCMおよびLIMWSとATWとの統合を図った。

FMSについては、複数の国への輸出が承認されたCMWS、LDSおよびRWRを装備する19か国に対する支援を行っている。世界情勢の変化に伴い、PM ASE装備品に対するニーズはさらに高まっており、FMSの重要性が増している。PM ASEは、現在、LIMWS、CIRCM、MRWR、ABE(Aircraft Survivability Equipment B-Kit Emulator, 航空機用自己防護装置B-Kitエミュレーター)などにFMSを拡大している。FMS提供国に対する支援は、引き続き、PM ASEの最優先事項となっている。

教材・シミュレーターについては、IADS(Integrated Air Defense System, 統合防空システム)訓練能力に関する緊急業計要望に対応するため、各種訓練センターへのABEの供給を完了した。また、パイロットおよび搭乗員に対し、敵のIADSに対する現実的なASE訓練を提供するため、部隊シミュレーター装置用の組み込み型ABEの開発も進めている。このことは、陸軍航空による新しいシミュレーター訓練環境の開発、および運用・整備訓練方法の書面方式からシミュレーション方式への移行にも貢献している。

将来

陸軍航空の将来を支援するために必要なのは、ASE装備品の近代化を担う基礎の構築である。PM ASEは、ASE能力の統合を図り、ASE装備品の設計および開発手法に変革をもたらそうとしている。ASEの近代化には、将来型空中能力環境の基本設計概念に適合する モジュラー・オープン・システム・アプローチが欠かせない。近代化されたASEシステムは、進化する敵の脅威への迅速な対応を可能とし、FVLおよび現行機種双方における機体サイズ、重量および出力への影響の軽減に貢献するであろう。

最後に、元副マネージャーのダグ・バーンズの退職についてお知らせしたい。バーンズ氏は、3月25日にPM ASEを退職した。ASE PMOに23年間在籍し、そのうち8年間は副マネージャーとして勤務した。退官後のご多幸を祈念する。後任のスティーブ・オーブリアンは、IRCM PMOで5年間副マネージャーを務めてきた。陸軍、そして特にPM ASEがスティーブの優れたリーダーシップの恩恵を受けられることに感謝したい。今年は、PM ASEにとって多忙な1年であった。来年度は、さらに多くのイベントが予定されており、今年以上に充実した年になると予想している。

ブロック・A・ジマーマン大佐は、アラバマ州ハンツビルに所在する情報・電子戦・センサープログラム・オフィスの航空機用自己防護装置担当プロジェクト・マネージャーである。

July 31, 2023

ARMY AVIATION Magazine

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2023年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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