U.S. Army Aviation Center of Excellenceをどう訳すか
はじめに
最近は、Wikipediaの翻訳にも力を入れているのですが、U.S. Army Aviation Center of Excellenceをどう訳すかでかなり悩んだ(実は、今も悩んでいる)ので、そのことについて書いておきたいと思います。
いつからCenter of Excellenceになったんだ
元々はAviation Schoolと呼ばれていた米陸軍の航空学校がAviation Centerと呼ばれるようになったのは知っていましたが、Aviation Center of Excellenceに変わったのは、つい最近まで知りませんでした。
WikipediaのU.S. Army Aviation Center of Excellenceの記事には書かれていませんが、GlobalSecurity.orgの記事によれば、この改称が行われたのは、2006年6月26日のことのようです。
Center of Excellenceってなんだ
愛用している英辞郎によれば、Center of Excellenceは「卓越した研究拠点、優秀な頭脳と最先端設備から成る中核的研究拠点」と説明されています。また、コモ辞書では「最先端組織」となっています。なるほど、とは思いますが、どちらも組織名の訳語としてはしっくりこない感じです。一方、ネットで検索すると「中核的研究拠点」という訳語が一般的になっているようです。ただし、この用語は、文部科学省の定義によれば「創造性豊かな世界の最先端の学術研究を推進する卓越した研究拠点」(なるほど!訳語発見 ~英語翻訳の現場から +)を指すものとされており、Aviation Schoolから進化したU.S. Army Aviation Center of Excellenceとは、ちょっとニュアンスが違うような気がします。
こうなったら、U.S. Aviation Center of Excellenceの中身をとらえて、それを言い表す言葉を当てはめるしかありません。The U.S. Aviation Center of Excellenceのウェブサイトには、その任務について「U.S. Army Aviation Center of Excellence trains, educates and develops Army Aviation professionals and integrates indispensable Aviation capabilities across warfighting functions in support of commanders and Soldiers on the ground.」と記載されています。一言で言うならば「航空に関する教育と研究を行う組織だ」と考え、「米陸軍航空教育研究本部」という訳語を案出し、Aviation Assetsの記事の中でも使用していました。(ちなみに、AR310-25 Dictionary of United States Army Termsには、center of excellenceに関する説明はありませんでした。)
Wikipediaを翻訳してみて
ところが、今回、Wikipediaの記事を翻訳していて、「Centre Student」という言葉に出くわしたのです。直訳すれば、「センターの学生」です。「本部」で学ぶ学生たちが「センター」の学生と呼ばれるのは、違和感がありますので、Center of Excellenceの訳語にもセンターという言葉を残した方がよさそうな気がしてきました。
そこで、Wikipediaでは「米陸軍航空教育研究センター」という訳語を用いることにしました。Aviation School(航空学校)→Aviation Center(航空センター)→Aviation Center of Excellence(航空教育研究センター)という名前の変遷から考えても、この方がしっくり来るような感じがします。
おわりに
Aviation AssetsにおけるU.S. Aviation Center of Excellenceの訳語は、「米陸軍航空教育研究センター」に統一しようと思っています。ただし、Wikipediaでは、米陸軍よりもアメリカ陸軍という用語を使用するのが一般的になっていますので、「アメリカ陸軍航空教育研究センター」という訳語を用いています。
とはいえ、実際のところは、まだ迷っているというのが本音です。もし、定訳と言えるような訳語やもっと適切な訳語があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
発行:Aviation Assets 2018年04月
アクセス回数:2,841
コメント投稿フォーム
5件のコメント
なるほどですね。陸自の幹部学校に勤務しているときに研究本部と一体になって「教育訓練研究本部」となる時に、「本部」という組織に「指揮幕僚課程」などの学校の教育課程が存在していることに違和感を覚えていましたが、「センター」とすればそれは解消されたかもしれません。しかし、「〇〇センター」の呼称は陸自の偉い方には受け入れられないでしょうね。「陸将がセンター長か!」とか言われて…(笑)
コメントありがとうございます。恥ずかしながら、「教育訓練研究本部」に「指揮幕僚課程」が存在しているということを知りませんでした。だったら「教育研究センター」よりも「教育訓練研究センター」の方が良いかもしれませんね。それに「米陸軍航空」をくっつけると、「米陸軍航空教育訓練研究センター」になります。ちょっと長いけれど、こっちの方が語呂が良いかも…また、悩んできちゃいました。
「excellence」を使った次のような文章に出くわしました。V-280バローに関する記事の中の一文です。
Only those who are vigilant, willing to break the mold, adopt new ideas, and retain a commitment to excellence can survive.
(慎重かつ大胆に新たなアイデアを採用し、先端技術の獲得をいとわない者だけが生き残れるのである。)
「excellence=先端技術」としてみました。Center of Excellenceの訳語にも、何かこういったニュアンスが必要なのかもしれません。
また、悩んじゃいました。
大変参考になりました。
自衛隊は米軍の公文書やジャーナルを大量に翻訳しているので、 Center of Excellenceの定訳は絶対にあるはずですが、ネットでは探しきれませんでした(笑)
管理人さんの翻訳が一番うまい訳と思います。
コメントありがとうございます!
コメントを頂いたのを機会に記事を読み直したところ、記事の発行年月日が表示されていませんでしたので修正しました。
なんと、6年前の記事でした。
試しにChatGPTに「和訳せよ」と命じてみたところ、「アメリカ陸軍航空センター・オブ・エクセレンス」という回答が返ってきました。
さらに「なぜ、Center of Excellenceを訳さないのか?」と聞いたところ、次のように返答がありました。
「『Center of Excellence』を訳さずにカタカナ表記にする理由は、日本語では『センター・オブ・エクセレンス』という概念が専門性や卓越性を示す際にそのまま使われることが多いからです。この表現は特定の専門分野で優れたリソースや教育機関を意味するため、日本語に訳すとニュアンスが変わることもあります。」
また、悩んできちゃいました...