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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧:AH-64Dの地上旋転

AH-64Dアパッチ

エンジン始動中、メイン・ローター・ブレードが近傍に駐機していたAH-64Dのメイン・ローター・システムに接触した。地上運転を行っていた方の機体は、テール・ブームが大破し、2枚のメイン・ローター・ブレードが損壊した。また、駐機していた機体にも損傷が生じた。また、機体周辺にいた2名の兵士が、事故で生じた飛散物により負傷した。

飛行の経過

事故機の搭乗員は、現地時間0330に飛行場に到着し、勤務を開始した。予定では、現地時間0700から1100の間、演習支援を任務とするAH-64チームの一部として飛行することになっていたが、現地時間0900、その任務は中止になった。

次の支援は、現地時間1000に離陸を予定していた。AH-64Dチームのうち1機は、エンジン始動およびHIT(Health Indicator Test, エンジン性能確認試験)を既に終了していたが、事故機はまだ終了していなかった。事故機の搭乗員は、飛行前点検、エンジン始動およびHITチェックの実施について、攻撃偵察大隊長から口頭で承認を受けた。そして、中隊の試験飛行操縦士および機付長の支援を受けながら、飛行前点検を完了した。

事故機の搭乗員は、機体に搭乗し、現地時間0950にAPUを始動した。エンジンは、異状なく始動できた。機長がパワー・レバーをFLY(飛行)位置まで進めた時、機付整備員が「テール・ホィールがロックされておらず、まっすぐになっていない」ことを報告した。機長は、「機体を一旦後退させた後、前進させて、テール・ホィールをロックする」と言った。機体を後退させようとして操縦桿を引いたところ、機体が左方向に旋転した。その後、他の機体と衝突し、当該機および9機の他の機体を損傷させた。飛散した破片により2名の兵士が負傷した。

搭乗員の練度

機長の総飛行時間は628時間であり、部隊での飛行時間は537時間であった。
副操縦士の総飛行時間は287時間であり、部隊での飛行時間は202時間であった。

考 察

機長は、AH-64ロングボウ・アパッチを後方に移動し、その後、前方に移動させて、テール・ホィールをロックしようとした際に、操縦かんを過剰に操作してしまったものと推定される。TC 3-04.42のタスク1034「グランド・タクシーの実施」に従わず、不適切な順番で過剰な操舵を行ってしまったため、機首方位を維持できなくなった。その結果、機体は、制御不能な135度の左旋転に入り、洗機場の縁石に衝突した後、駐機中の他の機体と接触した。また、事故発生前に実施された飛行前点検には、搭乗員として搭乗する予定のない人員(試験飛行操縦士)が関与していた。その試験飛行操縦士は、飛行前点検を完了せずに現場を離れてしまい、機長はチェックリストに示されたすべての点検区域の確認や最終的な全般点検の完了を確認できないままエンジンを始動してしまった。

陸軍航空の運用頻度が高まる中、毎日の業務の実施にチーム・ワークは欠かせない。しかし、特定の業務においては、そのことが逆効果を生み出す場合もある。標準的な手順およびチェックリストの項目を確実に実施しなければ、空いてしまった穴の位置が揃ってしまい、事故への事象の連鎖が始まるのである。さらに、航空科隊員は、事故の前兆を見逃さないように、常に注意を払わなければならない。その前兆とは、トゥ・バーを用いて機体を移動させる際の正しい手順のように、単純なものである場合も多い。テール・ホィールをまっすぐにして、ロック・ピンを挿入するのを忘れるという単純なミスが、運用頻度が高まる中で、多人数での飛行前点検が行われ、機長が適切な操作手順を行わなかった場合、本件のように搭乗員、地上勤務員および機体に破壊的な損害をもたらす可能性があるのだ。

機長である貴官は、自分の機体が規定どおりに取り扱われていることを確実に確認しなければならない。次の事故を防止する最後の砦は、貴官自身なのである。チェックリストに従って正しく判断すること。決して「いつもどおり」に判断してはならない。常に模範を示し、適時適切な指導を行って、自分の搭乗員および機体を事故から護り、任務を遂行してもらいたい。

出典:FLIGHTFAX, No.74 Februaryr 2019, U.S. Army Combat Readiness Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    この事故は、FLIGHTFAX, No.55 March-May 2017に「AH-64D地上運転中の事故」として、紹介されていたものです。「テール・ホイールがアンロック状態で駐機されていた」ことも含めて、事故の原因について、さらに掘り下げられた内容が記載されています。