航空関連事故
訳者注:以下は、アメリカ陸軍が発行するFlightfax誌に掲載されたアメリカ陸軍に関する記事です。
航空関連事故(aircraft flight-related mishap)とは、飛行を目的とした行動において、航空機自体には報告義務のある損傷が生じなかったものの、それ以外の物の損傷または搭乗員もしくはその他の人員の負傷が発生した航空事故(aviation mishap)をいう。(例:ホイスト・ケーブルの不時切断、ホイスト。システムまたは関連機器の故障または誤動作、ダウン・ウォッシュによる地上要員の負傷、カーゴ・フック懸吊物の不時切り離し、機外搭載物の不時投棄など)
問題および回答
1 当該機は、対地高度約150フィートを計器速度約40ノットで上昇中に3個のカーゴ・フックすべてを開放させ、懸吊していたM777榴弾砲を落下させた。落下したM777は、大破した。これは、航空関連事故だろうか?
答えは「Yes」である。クラスAの航空関連事故に該当する。
2 NVGを使用した潜入任務を実施中、ゴーアラウンドを行ってまだ飛行している機体から1名の兵士が飛び降りてしまった。当該隊員は、墜落により死亡した。これは、航空関連事故だろうか?
答えは「Yes」である。クラスAの航空関連事故に該当する。
3 機外懸吊を実施中、兵士が吹き飛ばされたパレットに接触し、1日間の休務が必要な傷害を負った。これは、航空関連事故だろうか?
答えは「Yes」である。クラスCの航空関連事故に該当する。
4 当該機は、機外搭載任務を実施中であった。懸吊物は、重量約4,500ポンド(約2041キログラム)の長方形の仮設住宅であった。対地高度約1,000フィート(約305メートル)を降下中、懸吊物が大きく揺れ、左側胴体と左側エンジン・ナセルに接触した。搭乗員は、直ちに懸吊物を切り離そうとしたが、完全に切り離すことができなかった。当該機は、懸吊物を卸下するため、着陸地点への進入を継続した。地上要員からは、チェーンおよびストラップが機体構成品に巻き付き、懸吊物が機体に絡みついたままになっているのが見えた。駐機場でエンジン停止して確認したところ、2枚の後部ローターブレードが根元近くで破損および湾曲しており、左側の胴体およびエンジン・カウリングの複数箇所に外板および構造部材の損傷が発生していた。懸吊物から伸びたストラップは、後部ローターヘッドにも巻き付いていた。損傷の度合いは、クラスAに該当すると見積もられた。これは、航空関連事故だろうか?
答えは「No」である。機体に重大な損傷が発生しているため、クラスAの航空事故に該当する。
5 対地高度100フィートからホイストで降下中の兵士が、地面に接地した際に静電気で感電し、負傷した。当該兵士は、1日間の休務が必要な傷害を負った。これは、航空関連事故だろうか?
答えは「Yes」である。クラスCの航空関連事故に該当する。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2021年09月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
「aircraft flight-related mishap」を「航空関連事故」と翻訳しました。陸上自衛隊でも、「航空関連事故」という用語を使っていましたが、「航空事故」ではなく「訓練事故」として扱われていたと記憶しています。米陸軍の「航空関連事故」は「航空事故」として扱われているようです。
本記事に記載されているような事例が陸上自衛隊で発生した場合、どのように扱われるのでしょうか? 案外難しい問題かもしれません。