AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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航空事故回顧:CH-47DのIIMCにおけるブラウンアウト

事故機は、イラクの自由作戦を支援するため、兵士86名の空中機動を支援していた3機のCH-47Dのうちの2番機であった。自由隊形で飛行していた2番機は、視程が急速に悪化する地域に進入した。編隊の飛行速度低下に伴い、2番機は、編隊からの離脱を余儀なくされた。他の2機がIIMC(inadvertent instrument meteorological conditions, 予期していなかった天候急変等による計器飛行状態)に伴い編隊をブレークしている間に、2番機は、高度を下げ、着陸しようとした。
対地高度50フィート、対気速度ほぼゼロの状態の中、操縦していた機長は、地上の視覚的補助目標を失っていたにもかかわらず、進入を継続した。機体は地面に衝突して、右に横転し、右側面を下にして静止した。機体は大破し、アメリカ空軍機による爆撃で破壊された。搭乗員は、軽傷で済んだ。

飛行の経過

当該任務は、イラクでの作戦の一環として、3機のCH-47Dにより、86名の隊員を搭乗させて夜間の空中移動を実施するものであった。兵站支援地域(logistics support area, LSA)を出発し、搭載地域(Pickup Zone, PZ)に向かう途中で給油し、PZに移動して空中機動部隊を搭乗させることになっていた。任務終了後は、元のPZに戻り、空中機動部隊を降機させ、LSAに帰投する予定であった。この任務は、4月14日に受領され、当初は4月15日に実施される予定であったが、悪天候のため延期となり、4月16日に実施されることになった。その後、任務部隊のS3の承認を受け、下令されたものであった。

4月16日、事故機の搭乗員たちは、1500に集合し、飛行前点検を完了し、任務ブリーフィングを行って、最終的な実施要領を確認した。事故機の機長は、この任務の空中部隊指揮官を兼ねていた。中隊の訓練担当操縦士から気象情報が提供されたが、天候は良好であるとのことであった。ただし、月照度の関係から、任務のリスクは「高」であるとされていた。旅団長は、リスクを「中」まで緩和・低減するため、当該訓練担当操縦士の長機への搭乗を指示した。

2055、3機のCH-47D編隊は、LSAを離陸し、PZに向かった。編隊は、速度約130ノットで高度約300フィートを自由隊形で南東に向けて飛行した。LSAの南東約50マイルにおいて、砂嵐に遭遇し、視程が悪化し始めた。長機は、編隊に対し、90ノットまで速度を落とすと連絡した。3番機は、速度の変更を了解したが、2番機には伝わっていなかった。編隊が飛行速度を低下させたため、2番機は、1番機を追い越してしまった。2番機は、1番機との空中衝突を避け、それを見失わないようにするため、右旋回を行った。旋回中に機長に操縦を代わった。右旋回中に上昇したため、2番機の高度は600フィートになっていた。それに伴い、機上整備員(flisht engineer, FE)および機付長は、地面や飛行中の他の機体を見失ってしまった。機長は、機体を安定させつつ、対地高度200フィートまで降下した。視程がさらに悪化し続けたため、まだ地上を確認できていた機長は、着陸して、天候の回復を待つことに決心した。

対地高度約50フィートで前進速度がほぼ0の状態で、機体は、塵雲に包み込まれてしまった。機長は、地上が全く見えていなかったにもかかわらず、着陸復行を行おうとせず、降下を継続した。右後方の降着装置が地面に接触し、取付部位から脱落した。その最初の衝撃により、機体は上方に跳ね上がり、後方にドリフトした。機長は、後退を止めようとしたが、そのことにより、右側方へのドリフトが誘発された。左右のガナー・ウィンドに位置していた機付長とFEは、横にドリフトしていることを発唱したが、操縦士はそれに応答せず、それに反応することもなかった。機体は、ランプ・ドア付近から再び地面に接触した。この衝撃により、ランプ・ドアの射手が機外に落下し、ハーネス・ベルトにより機体に引きずられた。他の乗員は、全員、機内に残っていた。機体は、右に横転し始め、右側面を下にして停止し、機体構造に重大な損傷が生じた。搭乗員は、軽傷を負った。

搭乗員

機長の総飛行時間は788時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は565時間であった。副操縦士の総飛行時間は955時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は206時間であった。

考 察

機長の対応は、安全に着陸できる能力に対する自信過剰、計器飛行状態で飛行する能力に対する自信の欠如、そして、環境に対応する訓練の不足から生じたものであった。機長は、派遣先準備飛行場(initial staging airfield)において必要最小限の訓練を受けただけで、LSAに到着した際に環境慣熟訓練(environmental orientation training )を受けてはいなかった。また、過去において、年次計器飛行技量評価試験に臨んだ際に、適切に対応できなかったことがあったことも明らかになった。加えて、訓練担当操縦士は、離陸前の気象情報の更新を怠り、当該任務の実施間に天候が標準最低条件を下回ることを把握できていなかった。

新しい作戦地域において、複数機による作戦を実施するためには、搭乗員たちに環境対応訓練を実施できる訓練時間を最大限に与えることが何よりも重要である。所属駐屯地には、航空機の耐環境性を把握するために必要な環境が完全には整っていない。指揮官は、シミュレーターを活用したSTX(situational training exercises, 状況下における訓練)を含んだ訓練を統合的に実施するように努めなければならない。また、可能な場合には、交代で実施される戦闘訓練センターでの訓練を通じて、または、所属駐屯地では経験できない環境状況(砂塵や降雪など)を有する地域に航空機を派遣することによって、搭乗員たちに実環境下での飛行を経験させなければならない。航空機を使用した実践的訓練の実施に取って代われるものはないのである。

搭乗員は、基準を把握していなければならず、このことはあらゆるレベルの指揮官によって徹底されなければならない。部隊が、その無関心またはリーダーシップの欠如によって自らの基準を低下させてしまうと、この任務の場合のような結果を生み出す状況が形成されてしまうのである。指揮官は、環境訓練に関し、自ら訓練プログラムを設定・実行するとともに、搭乗員たちが任務計画の立案に積極的に関与し、その練度向上にSTXを活用していることを確認する必要がある。部隊の航空安全担当将校および教官操縦士は、指揮官の訓練プログラムを把握し、その地域においてパイロットが不得意とする分野に関し部隊独自の基準を設定するとともに、必要な訓練を実施して部隊の搭乗員たちを完全な任務可能状態に維持しなければならないのである。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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