AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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航空事故回顧-CH-47Dの特殊懸吊物スリング中の事故

CH-47Dによるシー・キングの胴体(特殊懸吊物)の機外懸吊訓練を実施中、飛行教官の命令指示の不適切(緊急事態宣言)により、懸吊物の緊急切り離しが行われた。搭乗員が懸吊物を切り離し、ブリーフィング時に取り決めていた緊急操作手順に従い機体を右に移動させたところ、機体のダウン・ウォッシュにより、懸吊物が不安定になり、横転した。懸吊物が横転する間に、その上部に乗っていた地上要員が地面に落下し、懸吊物の下敷きとなって死亡した。

飛行の経過

事故機の任務は、同盟国軍に対する支援の一環として行われた機外搭載空輸であった。当該CH-47Dは、シー・キング・ヘリコプターの胴体(特殊懸吊物)を飛行場から場外の訓練場まで機外に懸吊して空輸しようとしていた。その空輸は、戦場における戦闘捜索救難および墜落機回収支援任務を想定したものであり、2番機には、その任務を取材中のディスカバリー社の撮影要員が搭乗していた。

搭乗員は、吊り上げ器材の取り付けを適切に行うため、数回にわたって当該懸吊物を確認していた。その際、適切なマニュアルに従った吊り上げ器材取付手順の確認がなされていなかった(当該懸吊物は、懸吊中に直立状態を保つように数本のベルトで支える必要があったが、その取付要領が適切な手順に従ったものではなかった)。適切なブリーフィングの後、2機編隊で離陸した。2番機には、部隊の航空安全担当将校が空中部隊指揮官として搭乗していた。当該機は、飛行場に到着し、特殊懸吊物の後方に着陸した。飛行教官は、機体から降りて、懸吊作業を担任する地上要員の下士官と会合し、懸吊物の再確認を行った。

離陸した事故機は、当該特殊懸吊物の吊り上げを開始した。機体に懸吊物が接続されると、地上要員は、特殊懸吊物の右側に取り付けられていた安定用ベルトのうちの2本を取り外してしまった。その途端、懸吊物が揺れ始めた。飛行教官は、搭乗員に対し状況を周知したうえで、通常の切り離しを指示すべきであったのだが、不用意に緊急事態を宣言してしまったため、搭乗員は緊急切り離しを行い、ブリーフィングで指示されていたとおりに右に機体を移動させてしまった。CH-47Dが懸吊物の上空から離れた途端、懸吊物がダウンウォッシュを受けて横転し始めた。まだ、懸吊物の上に乗ったままであった地上要員たちが投げ出され、そのうちの1名が横転した懸吊物の下敷きになった。懸吊物は、左側面を下にして停止し、下敷きになった隊員が死亡した。

搭乗員

機長の総飛行時間は2,651時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は2,309時間であった。副操縦士の総飛行時間は3,955時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は1,302時間であった。飛行教官の総飛行時間は1,293時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は1,293時間であった。

考 察

指揮官および搭乗員は、この任務の遂行に必要な安全管理を適切に実施できていなかった。この種の懸吊物を吊り上げたことがなかった当該部隊にとって、この特殊懸吊物は、重大な危険をもたらす可能性があった。にもかかわらず、この任務の遂行に搭乗員を習熟させるために必要な訓練や予行が実施されていなかったのである。さらに、当該懸吊物へのスリング器材の取付要領が不適切であり、そのスリング器材自体もこの任務の実施に適当なものではなかった。また、搭乗員は、自分たちの能力を過信し、特殊懸吊物を変則的な方法で吊り上げようとしてしまった。

スリングの実施に際しては、訓練および戦闘予行を適切にして、すべての危険要因をあらかじめ認識しておくことが不可欠なのである。その訓練等は、地上要員、搭乗員および部隊指揮官が参加して行わなければならない。地上要員、搭乗員および機上任務指揮官は、任務ブリーフィングや懸吊物の確認を行っていたにもかかわらず、この特殊懸吊物に存在する危険を認識し、それを排除することができなかった。適切なクルー・コーディネーションは、任務受領から任務終了のブリーフィングまでのすべての過程において必要なのである。指揮官は、各任務が適切に分析され、危険見積が適切に実施され、かつ、危険管理が適切に実行されていることを確認しなければならない。任務を遂行する搭乗員は、危険見積を継続し、事故防止に必要な追加処置を行って、危険要因の低減に努めなけれればならない。安全管理において、地上要員の存在を忘れてはならない。地上要員は、危険要因の低減に関し、搭乗員や指揮官と同じように重要な要素なのである。地上要員が、危険の存在を認識し、それを回避する方法を理解していることを確認しなければならない。陸軍における作戦の遂行には、訓練、予行および安全管理をおろそかにできるような余裕は存在しないことを決して忘れてはならない。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    個人的には、部外者による取材が行われていたことによる「失敗できない」という無言の圧力が、最悪の事態を招いてしまった大きな要因となった気がします。もちろん実戦もそうですが、展示などを行う場合にも、けっして「いいところを見せる」ためではなく、事故を防止する観点から十分な予行を行うべきなのです。自分の過去を振り返っても、予行をせずに展示を行って、失敗したことがありました。こういう観点が欠如していたと反省しています。