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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-CH-47Fの超低空減速訓練中の事故

当該CH-47Fは、単機での夜間練成訓練のため、所在する駐屯地から離陸した。ブリーフィングで承認されていたのは、DVE(degraded visual environment, 悪視程環境)を想定した進入、ピナクル・ランディング(狭隘な山頂、家屋の屋根等への着陸)、超低空飛行および計器進入訓練であった。

事故発生前の状況

1700頃、当該機の搭乗員は機体に集合し、搭乗員ブリーフィングを完了した。1750、当該機は所在する駐屯地を離陸し、近郊の飛行場へと向かった。当該飛行場に到着後、そこにある芝生の滑走路を利用して、DVEを想定した進入訓練を複数回実施した。予定していた訓練を終了すると、近郊の演習場に向かった。1837頃、承認済みのピナクル・ランディング訓練場において、着陸訓練を開始した。複数回のピナクル・ランディングを実施した後、超低空飛行のため、演習場の南側境界に移動した。飛行訓練を開始してから約1.3時間後、機長は超低空減速訓練を実施するとの企図を示し、クルー・チーフ(ランプ位置)に障害物がないことを確認するように指示した。クルー・チーフは「テール・クリア」と応答した。

事故発生の状況

機長が操作を開始した。超低空減速操作を開始した後、前方の樹木に衝突しそうになったため、32°までのピッチアップ姿勢をとろうとしたが失敗し、後方ローターが地面に接触した。機体は機首を左に約120° 振った状態で泥地に落着した。機体に発生した激しい振動を止めるため、エンジンを停止した。機体の損傷状況を把握した後、副操縦士はUHFを使用して付近を飛行中の航空機に事故の発生を通報した。通報を受けた航空機の搭乗員は、飛行指揮所に事故の発生を報告し、対応処置を開始した。負傷者は発生しなかった。機体損傷の程度はクラスAと見積られた。

搭乗員の練度

機長の飛行時間は合計995時間で、そのうち機長としての飛行時間は176.8時間、CH-47Fの飛行時間は941.3時間、NVG飛行時間は480.4時間であった。副操縦士の飛行時間は合計270.9時間で、そのうちCH-47Fでの飛行時間は174.5 時間、NVG飛行時間は78時間であった。

関連する規定

タスク2036 超低空減速

実施要領:

一般的手順に従うほか、次の追加または変更手順を実施すること。

RCM(Rated Crewmember, 操縦資格保有搭乗員)

・ 選択した飛行経路に合わせて機首方位を維持すること。
・後方ローターをあらゆる障害物から遠ざけること。
・希望する対気速度まで減速するか、または完全に停止すること。

NRCM(Nonrated Crewmember, 非操縦資格保有搭乗員)

・機体の尾部をあらゆる障害物から遠ざけること。

細部実施要領:

a) 操縦士はスラスト・コントロールを引き、後方着陸装置の高さを維持する。(速い対気速度で機動を開始する場合は、スラスト・コントロールの操作が不要の場合もある。)
b) 操縦士は地形や障害物の状況を考慮しつつ、後方ローターのクリアランスを確保する。操縦士は、後方着陸装置の高さを維持するため、サイクリックを後方に引くとともにスラスト・コントロールを調整し、希望する対気速度まで減速 (または完全に停止)する。
c)操縦士はペダルで機首方位を維持しながら、スムーズな減速操作を行う。減速中に後方着陸装置が高くなりすぎた場合には、スラスト・コントロールを下げて目標高度に戻す必要がある。
d) 機体姿勢が過度にまたは急激に変化した場合には、水平姿勢に戻すことが困難になり、オーバー・コントロールとなる危険性がある。

夜間またはNVG(night vision goggle, 暗視眼鏡)に関する考慮事項

NVGにより視野が限定されるため、操縦士は機体姿勢の急激な変化を回避する必要がある。極端な機首上げ姿勢になった場合には、前方の視界が阻害され、方向感覚を失う可能性がある。障害物とのクリアランスを確保し衝突を回避するため、操縦士は機体周辺の状況を適切に把握する必要がある。 (出典: FAAヘリコプター・ハンドブック)

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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