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陸軍航空の情報センター

緊急脱出:間違いが許されない状況での生死にかかわる問題

アラバマ州フォート・ラッカー米国陸軍航空医学研究所搭乗員防護部
 軍属 ジョセフ・リシナ(国防省電話交換網 558-6893)
 上級准尉5 ロバート・スコッティ・ジョンソン(国防省電話交換網 558-6881)

あなたが同乗しているブラックホークが墜落した場合を考えてみてください。真っ黒な、刺激臭のある煙に突然包まれます。オレンジ色の炎が激しさを増し、機体の右下方向からの熱が強くなっていきます。

これから説明するのは、墜落した機体のキャビンに搭乗していたある同乗者の経験です。陸軍に入隊してから15年以上が経っていたその同乗者は、なんでも分かっているつもりでしたが、左側のキャビン・ドアを開けることができませんでした。

火災による熱は、急速に強くなってきました。その同乗者は、気持ちを落ち着け、緊急脱出窓を開けようとしました。煙が充満していて良く見えませんでしたが、窓の場所は分かりました。

しかし、緊急窓を放出するハンドルがありませんでした(写真1)。その同乗者は、墜落の衝撃でハンドルが取れてしまったのだと思いました。

幸運なことに、別の兵士が操縦席ドアから脱出できました。その兵士は、燃え上がる機体を振り返りました。窓の内側で必死に動いている手が見えました。

勇敢なその兵士は、炎に包まれた機体へと戻り、大やけどを負いながらキャビン・ドアをこじ開け、その同乗者と他の数人の兵士を救出しました。機体は、その後、完全に焼失してしまいました。

事故調査委員会は、キャビン・ドアが火災で完全に破壊されてしまったため、緊急脱出窓の不具合を確認できないでいました。事情聴取において、緊急脱出窓から脱出しようとしていた同乗者は、ハンドルが取れてしまっていたと証言しました。その同乗者は、カーゴ・ドアの窓の下側の縁を手で触って、ハンドルを探したのでした。そのハンドルを引き上げ、後方に倒せば窓を放出できると思っていたのです(写真2)。

何が間違っていたのでしょうか?

搭乗員の皆さん、あなたへの質問ですよ。何が間違っていたのでしょうか?

この同乗者の行動に間違いはなかったのです。ただし、慣れ親しんでいたUH-1であれば! 問題は、彼が搭乗していたのはUH-60だったということです。UH-60のカーゴ・ドアに設けられている緊急脱出ハンドルは、窓の縁よりも下側にあります。(写真3)このハンドルを後方に引くと窓が外れ(写真4)、キャビン・ドアから放出されるのです。

事情聴取を受けた同乗者は、軍団の幕僚として勤務していましたが、軍団長と同乗する際にも細部の同乗者ブリーフィングを受けたことがありませんでした。緊急脱出ハンドルを見たことは何回もありましたが、実際の緊急事態に遭遇すると、何年も前にUH-1で訓練を受けた時の記憶に戻ってしまったのです。

さて、あなたへの問題です。この飛行部隊を批判する前に、あなた自身に質問をさせてください。
あなたが最後に緊急脱出の訓練を受けたのはいつですか?
自分の部隊の航空機の緊急脱出ハンドルを実際に引いて、窓を放出したのはいつのことですか?
1か月前ですか?
1年前ですか?
1度もやったことがないのですか?
あなたの機体の同乗者はどうですか?
同乗者に対するあなたのブリーフィングは、徹底したものとなっていますか?
緊急脱出窓がどこにあって、どのように機能するかを説明していますか?

あなたの部隊における安全教育において、この訓練を計画してみてはいかがでしょうか? この訓練に必要な費用はいくらでしょうか? 必要なのは、2、3フィートの銅製セーフティー・ワイヤー、窓が解放された際にそれを受け取る人員(写真5)、および訓練終了後に緊急脱出窓の放出ハンドルを復旧・検査するための整備班との僅かな調整だけです。

あなたが日頃、周りの環境に注意を払っているかを確認するため、もう一つの質問をさせてください。ここまで、緊急脱出ハンドルは後方に引くと述べてきました。本当ですか? そうです。ただし、後方に引くのは左側のキャビン・ドアの場合だけです。右側のキャビン・ドアの場合は前方に引かなければなりません。写真1には、UH-1の両側のハンドルが写っています。

最後の質問は、あなたが細かいことに注意を払っているかどうかを試す質問です。写真1と写真2を見てください。これまで述べられていない、問題点に気づきませんか?(答えは、最後にあります。)

何事も馬鹿にしてはいけません。確実に身に着けることが重要なのです。訓練は、毎日の運用のために必要なものなのです。しっかりやりましょう。

答え:緊急脱出ハンドルが黄色と黒色の縞模様に塗装されていない(UH-1取扱書第9章を参照)。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2002年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    最近、Flightfaxの発行が滞っているので、古い記事を翻訳してみました。
    陸上自衛隊には、現在でもUH-1とUH-60が混在しています。大事なことだと思います。