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陸軍航空の情報センター

航空事故発生状況ーUH-60MのDVE関連事故

砂塵環境下、VMC(visual meteorological condition, 有視界気象状態)で着陸しようとしていたUH-60Mが、横方向にドリフトしながら接地し、ダイナミック・ロールオーバーに陥った。機体は大破し、搭乗員は軽症を負った。

飛行の経過

事故機のパイロットたちは、0600に勤務を開始した。

その日予定されていた任務は、複数のLZ(landing zone, 降着地域)で人員を搭乗させ、ある目的地まで空輸する部隊移動支援であった。ブリーフィングにおいて、VMC状態の昼間に行われるこの任務は、リスクの低い作戦であると説明された。任務開始は0900に予定されていたが、開始が遅れ、1450にようやく離陸した。最初の人員を卸下した後、任務の変更に関する命令を受領し、もう一つ別の場所で人員を搭乗させて目的地まで空輸することになった。人員を搭乗させた後、卸下地点への進入を行っていたところ、DVE(Degraded Visual Environment, 悪視程環境)に遭遇し、尾脚が接地した状態で、機体が右横にドリフトし、主脚が接地して機体が傾いた。このため、ダイナミック・ロール・オーバーが生じ、右側面を下にして横転した。機体は大破し、搭乗員は軽症を負った。

搭乗員

機長の総飛行時間は979時間であり、部隊での飛行時間は506時間であった。副操縦士の総飛行時間は213時間であり、部隊での飛行時間は100時間であった。

考 察

当該機のパイロットは、砂漠環境下におけるVMC飛行を行い、卸下地域に2回目の進入を行い接地するまでの間、ATM(Aricrew Training Manual. 搭乗員訓練マニュアル)に従った操作を実施していた。しかしながら、その着陸の最終段階で、操縦していたパイロットが機体を横にドリフトさせたため、接地した主脚を中心として機体が傾き、横転してしまった。

DVE状況における着陸には、日常的に行われている視程障害がない状態での昼間の着陸と比較して、非常に大きな困難が伴う。DVE状況下で飛行する場合には、フライト・ディレクターを使用するのが基本であるが、ATMの共通規定に記載された警告によれば、ブラウンアウト状態での航空機の進入および着陸は、パイロットの「実践的」経験によらざるを得ない。さらに、このような状態、特にブラウンアウトまたはホワイトアウト状態にあるLZに進入する場合においては、パイロットのエラーがほとんど許容されないのである。

砂漠または降雪環境下において作戦を遂行するパイロットたちには、その地理的な位置(砂漠/北緯)のため、「実践的」経験による方法以外に着陸する手段がない。このため、部隊は、確固たる訓練計画を確立し、DVE状況での着陸を「追求」するために必要なパイロットの能力維持に努めなければならない。事故調査の結果から、当該機のパイロットは、最後まで着陸を追求していたことが分かる。この着陸を追求しなければならないという状況がDVE運用における緊張感を増大させているのである。

このような状況を踏まえ、指揮官は、SFTS(synthetic flight training simulator, 合成飛行訓練シミュレータ)を用いた効果的な訓練の実施を図るべきである。STFSを用い、状況下における訓練を実施することにより、パイロットに機体の性能と自らの操縦能力に対する自信を与え、様々なシナリオ(定点着陸、滑走着陸、貨物の懸吊など)における教官による展示を可能にし、任務遂行を確実にすることができる。その上で、訓練地域の状況を踏まえ、可能ならば、SFTSの段階から、実機を用いたDVE進入、着陸、貨物懸吊および離陸訓練の段階へと移行すべきである。

DVE環境下での着陸に、容易な方法は存在しない。訓練せよ!

出典:FLIGHTFAX, No.77 May 2019, U.S. Army Combat Readiness Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    「DVE状態に遭遇しないようにせよ!」ではなく、「DVE状態でも着陸を追求できるように訓練せよ!」というのが、米軍のすごいところです。