AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

航空不安全発生状況

不安全報告ツールによる報告に基づく情報(2024年3月現在)

53777(コックピット内での煙の発生)

AH-64が実弾射撃を実施中、両搭乗員がコックピット内の煙に気づいた。ECSをオフにし、管制塔の東200メートルに予防着陸し、エンジンを緊急停止した。

53779(エンジン火災警報灯の点灯)

当該機(UH-60)は、燃料補給後、後段の飛行を開始し、NVGを使用した夜間の戦闘機動飛行を実行するため制限区域に戻った。飛行中、マスター・コーション・パネルの火災表示灯が点灯し、No2エンジンの「T」ハンドルも点灯した。後席のクルー・チーフと連携し、FADECF(緊急時の対応要領)を行った。火災やその兆候は確認されなかった。火災警報灯は、約30秒後に消えた。最寄りの空港へ向かうことが決定された。降機したクルー・チーフは、目視検査を実施した。臭いや視覚的な異常は見つからなかった。夜間の訓練を中止して、所属駐屯地に帰投した。帰投中、火災警報灯がさらに2回点灯した。

53780(操縦桿への意図しない入力)

当該機は、計器飛行を開始するためにコレクティブを引いた際に、サイクリックに意図しない後方への入力が感じられた。

53892(整備作業中の転倒)

当該機(UH-60)の定期整備を実施中、整備員がキャットウォーク・エリアで作業中につまずいて転倒した。後部左側の折りたたみ式ドアが弱い風のために閉じてしまっていた。これは屋外で整備や飛行前点検を行っている最中によくあることである。当該整備員は、閉じていたパネルに気づかず、つまずいてしまった。体を支えようとして、APU収納部に手をつき、パネルに修復可能な軽微な損傷を発生させた。

53950(氷結した池への着陸)

2機のCH-47Fが航空支援要求に基づき、応急空中機動を実施していた。搭乗員が、侵入・離脱地点の座標とともに、その週の3回目の任務を受領したのは、その日の朝のことであった。降着地域の画像分析を実施し、各機の着陸地点を決定した。被支援部隊とブリーフィングを実施し、降着地域への進入順序および機体間隔について話し合った。CH-47編隊は、侵入降着地域に向けて出発し、侵入経路沿いに飛行した。降着地域に、編隊でのDVE(ホワイトアウト)着陸を行った。過去72時間で18インチ以上の積雪があった降着地は、新雪で完全に覆われていた。2番機の搭乗員は、着陸地点を特定し、進入を開始した。着陸に際しては、当初は降着装置に荷重を掛けないように接地し、じ後、徐々に出力を下げることにしていた。ショート・ファイナルにおいて、当該機の機長は、降着地域が小さな池のように見えるとアナウンスし、潜在的な危険を警告した。機体を接地させ、ゆっくりと出力を下げると、機体が深い雪の中に沈み始めた。その時、大きな衝撃音とともに、機体が急激に沈み込んだ。機長と機上整備員は「上昇、上昇、上昇」とアナウンスし、パワーを増加して、機体をホバリング状態に戻そうとした。「ゴー・アラウンド」を実施し、着陸地点をさらに視認したところ、氷の層を突き破ったことを確認した。近傍の飛行場に戻り、機体の損傷を確認した。機体下部のFM無線アンテナに軽微な損傷があっただけであった。当該アンテナはまだ機能していたため、適切なチャンネルに警告を発し、任務を続行した。

53970(不適切なタクシー・アウト)

当該機は、地上滑走によるタクシー・アウトが許可されていないスポットに駐機していた。地上管制官に連絡した後、当該機は、タクシー・アウトを開始した。当該スポットからのタクシー・アウトが許可されていなかったのは、他の航空機とのクリアランスが不十分だったためであった。当該機は、停止するよりも安全であると判断され、移動エリアまでタクシーを継続した。飛行終了後、当該機の駐機場所は別のスポットに変更された。

54067(消火ボトルの圧力低下)

HH-60Mの搭乗員が、両方の消火ボトルのPSI値が0PSIであることを発見した。故障探求および整備作業の結果、消火システムの制御回路が主消火ボトルと副消火ボトルの両方で作動し、消火システムが完全に放出されていたことが判明した。現時点では、当該システムがいつ作動したのか、またその後航空機が飛行したかどうか不明である。この状態で飛行していたら、エンジンやAPUの消火能力が欠如した状態であった。

54111(飛行中の着氷)

UH-60Lは、V航路を13,000フィートで帰投中であった。経路上では、軽い着氷が予報されていた。搭乗員は有効かつ最新の気象情報を入手しており、すべての防氷装置は離陸前に作動点検が行われていた。飛行中、軽度から中程度の着氷に数回遭遇したが、防氷装置が作動していた。雲底は約11,000フィートで、雲頂は12,000から13,000フィートであった。利用可能最大トルクは88%であり、飛行中は60%から64%の間で巡航していたため、ENG防氷装置を作動させることができると分かっていた。1830頃、高度13,000フィートの雲頂付近において、北西へ飛行するにつれて雲が増加したため、すべての防氷装置を作動させた。計器飛行気象状態となり、雲層に入った瞬間、アイス・レート・メーターが重度の着氷を示す値を示した。ローター回転数が、NP1およびNP2とともに、90%まで低下した。機長は、素早くクロスチェックを行い、他の計器はすべてグリーンであることを確認した。そのうえで、選択肢は上昇するか降下するかのどちらかだと判断した。操縦を交代すると、コレクティブ・レバーを下げながら機首を上げて70ノットまで増速すると、ゆっくりと上昇を開始した。それから副操縦士に、高度14,000フィートまで上昇中であることを航空管制官に通報し、アイシングに関するPIREP(機上気象報告)を出すように指示した。湿度の高い領域から抜けると、約10秒ほどでローターとエンジンの回転数が元に戻った。機長は、高度13,900フィートで水平飛行に移行し、搭乗員全員に異状がないことを確認した。航空管制官からは5分以内に降下するように指示があったが、機長は不可能であると回答した。航空管制官からのその高度にどれくらい留まる必要があるかという質問に対しては、できるだけ長くと答えた。航空管制官は、直ちに降下するか、それができない理由を説明するように指示した。機長は、それまでの兆候から考えると、深刻なアイシング領域は雲の上部数百フィートに存在する薄い層である可能性が高いと判断した。航空管制官は、雲中から脱出できる高度を伝え、IMCになるのは高度2,000フィートから3,000フィートだけであるという情報を提供した。機長は、最上層の雲を通過して、速やかに下降するのが最善の解決策であると判断した。そして、航空管制官に対し、高度10,000フィートまで降下すると通報した。その後、機体を2500FPMで降下させ、IMCに入った。アイス・レート・メーターは、最大値に戻ったが、ローターとエンジンの表示は正常のままであった。1,000フィート以内でアイス・レートが軽度/中程度に戻り、11,000フィート付近で雲を通り抜けることができた。

54115(霧によるIIMC)

渓谷でNVS(夜間暗視システム)を使用した戦術飛行を実施中、低高度の霧の層に突入し、IIMC(予期していなかった天候急変等による計器飛行状態)に陥った。搭乗員が上昇をアナウンスして開始すると、上昇開始から数秒以内でVMCに戻った。

54119(スキーによるランプの損傷)

搭乗員は(CH-47を)後部スキーを180度回転させた状態で格納庫から搬出しはじめた。航空機の搬出が完了した後、ホイールは「フェーズ」ポジションまで回転して戻された。搭乗員は、スキーが完全に調整されておらず、スキーのドラッグ・ホイールがランプに近すぎることに気付いていなかった。ランプを下ろすと、ランプのストレーキがドラッグ・ホイールの上部に接触し、ストレーキに穴が開いた。搭乗員は、これに気付かないまま飛行し、飛行後に損傷を発見した。

54156(タイラップの外し忘れ)

前部トランスミッション・オイル・クーラー・ファンのインプット・シャフト・アダプタ領域にタイラップが緩く取り付けられた。それは、STRATAIR(戦略空輸)による移動間、インプット・アダプタを前部トランスミッションに固定するため、整備手順に従って用いられたものであった。当該タイラップは、航空機の組み立て時に取り外されず、技術検査および搭乗員による検査においても発見されなかった。当該機は、そのままの状態で15回、41.3時間の飛行を行っていた。技術検査員によるFOD検査が実施されたが、損傷は発見されなかった。

54211(航空機搬出中の機体接触)

9名の整備員が航空機を整備格納庫から移動させようとしていた。別のヘリコプターと格納庫の間にぴったりと駐機していたヘリコプター1機を搬出しようと8回試みたが、失敗した。最後の試みにおいて、移動中のヘリコプターのメイン・ローターのスライディング・パイロンが駐機中のヘリコプターのメイン・ローター・ブレードに接触した。整備員は停止し、安全・品質管理部門に連絡して損害状況を調査した。損害は事故レベルには達しなかったが、整備員は適切な手順について再度教育を受けた。当該ヘリコプターの整備用格納庫からの搬出は、別の整備員によって無事に実施された。

54244(機外タンク取り付け中の落下)

5名の整備員が、メンテナンス・レベル(ML)1に指定されたシステム操作員の監督の下、右翼のエジェクター・ラックへのCEFS(耐クラッシュ・外部燃料システム)のタンク取付作業を実施していた。通常、メンテナンス・レベル(ML)3の整備員が監督することになっていたが、全員が飛行を予定していた。CEFSタンク・リフターが壊れて使用できなかったため、タンクを手で持ち上げて取り付けることにした。タンクをエジェクター・ラックの下に配置し、エジェクター・ラックのフックがカチッという音を立てるまでタンクを持ち上げた。ところが安全レバーが前部ではロックされていたが、後部ではロックされていなかった。タンクを持ち上げる力が緩められると、後部が落下し、前部の安全ロックが解除され、タンクの前部も落下した。CEFSタンクの前部を誘導していたシステム操作員は、落下しないように支えようとしたが失敗し、タンクを左足の上に落下させた。当該システム操作員は検査のため病院に搬送されたが外傷はなかった。

54285(吸気口カバーの外し忘れ)

当該CH-47Fは、No.1エンジン・トランスミッションの交換を完了した。地上試運転およびNo.1トランスミッションの点検を行うため、当該機はエプロンに搬出された。搭乗員は、飛行前点検を実施し、地上試運転手順を開始した。試験飛行操縦士がNo.1エンジンの始動シーケンスを開始し、エンジン計器を監視していと、エンジン・コンプレッサー・セクション回転数(Ng)の異常な上昇を確認した。このため、エンジンを緊急停止した。搭乗員は、No.1エンジンを開け、損傷や異常を検査した。エンジン下部のFODスクリーン・カウリングを開けると、黒いエンジン吸気口カバー(ドーナツ)がメンテナンス完了後も取り外されていなかったことを発見した。ドーナツおよびコンプレッサー・ブレードならびにその周辺を検査した。ドーナツやコンプレッサー・ブレードに損傷は見られなかった。その後は、No.1エンジンの2回目の始動を異状なく実施し、整備終了にともなう地上試運転を完了した。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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