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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧:NVGを使用した部隊回収

ゼロ・イルミネーション(完全な暗闇)の状況下でNVG(Night Vision Goggle, 暗視ゴーグル)を使用した部隊回収を実施中、CH-47Dが未整備で埃の多いHLZ(Helicopter Landing Zone, ヘリコプター降着地域)にハード・ランディングし、機体に重大な損傷が生じ、搭乗員が軽傷を負った。

飛行の経緯

当該機の任務は、駐屯地から約38マイル(約61km)離れたHLZから、NVGを使用した2機編隊で地上部隊を回収することであった。2機のCH-47Dには、2機のAH-64DからなるAWT(Aerial Weapons Team, 航空戦闘チーム)が護衛として割り当てられた。搭乗員は1800L(現地時間)に勤務を開始した。飛行前点検は1830に実施され、1900Lにゴー/ノーゴー・ブリーフィングが行われた。この任務は、低照度、任務の複雑さ、および搭乗員の経験から、ハイリスクであると判断された。リスクの軽減策には、IR(Infrared, 赤外線)照明ロケットを使用可能とし、HLZへの着陸時にはPC(Pilot in Command, 機長)が操縦するという要件が含まれていた。任務はDCG-O(Deputy Commanding General – Operations, 作戦担当副司令官)にブリーフィングされ、承認された。気象予報は、快晴、視程制限なし、290度の風は5ノットであった。気温はプラス12℃、PA(Pressure Altitude, 気圧高度)はプラス5900フィートであった。飛行中の照度は0%であった。

編隊は2000Lに事故機が先頭で離陸した。ピックアップ・ポイントへ向かう途中、当初の場所では2機が同時着陸できないと判断され、地上部隊から新しいHLZの場所が連絡された。2030L、編隊は指定されたHLZに到着し、進入を実施したが、傾斜地であったためゴー・アラウンド(着陸復行)を実行した。AMC(Air Mission Commander, 航空任務指揮官)は新しいHLZを要求した。AWTによって場所が決定され、地上部隊は新しいピックアップ・ポイントに再配置された。2050L、編隊は最初の上空通過を行い、場所が適切であると判断した後、着陸を試みた。1番機は砂塵のためゴー・アラウンドを実行した。2番機はHLZに着陸し、pax(passengers, 乗客)を搭乗させ、離陸した。2番機の離陸後、砂塵が収まるのを待ってから、1番機は再度進入を試みたが、再びゴー・アラウンドとなった。その後、1番機は地上部隊に、より砂塵の少ない別の着陸地点へ移動するよう要請した。AWTによって代替地が決定され、地上部隊がそこに移動した。2120、新しいHLZへの進入中に、機体はハード・ランディングし、広範囲にわたる機体損傷と4名の搭乗員の軽傷が生じる結果となった。

搭乗員の経験

PCは総飛行時間1770時間以上、PCとして1289時間、うち233時間はNG(夜間ゴーグル)飛行であった。PI(Copilot, 副操縦士)は総飛行時間648時間、うち81時間はNG飛行であった。右側キャビン入口ドアにいたFE(Flight Engineer, フライト・エンジニア)は1400時間以上、うち523時間はNG、ランプにいたCE(Crew Chief, クルー・チーフ)は99時間、うち33時間はNG、そして左側キャビン・ドアのガンナー席にいたドア・ガンナーは総飛行時間64時間、うち10時間はNGであった。

考察

事故調査委員会は、LZ(Landing Zone, 着陸地帯)への進入中、PCが降下率と対地速度を大きくしすぎたため、推定400~800fpm(フィート毎分)の降下率と22~26ノットの対地速度で、固く締まった上り坂の段差があるLZに接地したと断定した。加えて、操縦していなかったPIは、進入中に降下率と対気速度が過大になっていることをPCに通報することを怠った。その結果、機体は地面に衝突し、後方降着装置、後部キャビン区画、および後部パイロン区画に損傷が生じた。

この報告書に含まれるすべての情報は、事故防止の目的以外で使用してはならない。USACRC(U.S. Army Combat Readiness Center, 米国陸軍戦闘即応センター)からの事前の承認なしにDOD(Department of Defense, 国防総省)外に配布してはならない。完全な事故速報は、CRC RMIS(https://rmis.army.mil/rmis/asmis.main1)からアクセスできる(AKOのパスワードとRMISの許可が必要)。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2012年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    2012年の記事です。