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航空事故回顧:UH-60の夜間有視界飛行中のIIMC遭遇

UH-60 night unaided IIMC

当該UH-60Aは、夜間に、ある民間飛行場から、有視界飛行で離陸している最中に、予期していなかった天候急変等によるIMC(instrument meteorological condition, 計器飛行気象状態)に遭遇した。 滑走路に戻ろうとしたところ、高度が低下して地面に墜落し、機体が大破するとともに搭乗員が軽傷を負った。

飛行の経過

訓練飛行計画によれば、当該機は、その日の午後に離陸し、ある地方空港までIFR(計器飛行方式)で飛行して、燃料補給を行ったのちにVFR(有視界飛行方式)で駐屯地に帰投し、機付長を搭乗させてからNVG訓練を行う予定であった。搭乗員は、現地時間1000に出勤し、飛行計画の作成および飛行準備を行った。そして、現地時間1130、飛行前点検を実施した。しかしながら、天候不良のため、離陸時刻を1時間遅らせることになった。当該任務は、中程度の危険を伴うものとしてブリーフィングが行われ、適切な指揮官により承認された。

当該機は、現地時間1452に駐屯地を離陸し、現地時間1554に事故の発生した地方空港に異状なく着陸した。この最初の飛行の間、機体や搭乗員に何も問題はなかった。エンジンを停止し、燃料補給を行った。現地時間1746、エンジンを再始動した搭乗員は、タクシーを要求し、駐屯地までのVFR(有視界飛行方式)による飛行を開始した。出発時の天候は、風向310度、風速6ノット、霧のため視程が2.5マイルに制限されていた。また、雲高1,400フィートで、雲量はほとんどなく、気温11度、露天温度10度、気圧29.94インチであった。日没時間は、現地時間1708であり、月齢はゼロであった。

現地時間1752、離陸許可を得た当該機は、駐屯地までの夜間の有視界飛行を開始した。当該機は、まだ滑走路上を上昇している間に、霧の層に不意に突入してしまった。操縦していたパイロットは、サイクリックを後方に引き、機体を30度の機首上げ姿勢にしながらコレクティブを下げ、機体の速度を減じた。飛行場に戻ろうとしたパイロットは、降下しながら右に急旋回した。離陸から22秒後、当該機は、機首を30度上げて右に30度傾いた状態で横方向にドリフトしながら地面に激突し、右側方を下にして停止した。搭乗員たちは、軽傷を負った。

搭乗員の練度

左席に搭乗していたPC(機長)の総飛行時間は2,100時間であり、そのうち1,000時間がUH-60L、109時間がフードの使用または悪天候下の飛行、44時間が夜間の有視界飛行であった。また、右席で操縦していたPI(副操縦士)の総飛行時間は800時間であり、そのうち750時間近くがUH-60、64時間がフードの使用または悪天候下の飛行、15時間が夜間の有視界飛行であった。パイロット以外の搭乗者はなかった。

考 察

事故調査委員会は、操縦していた左席のPCは、ランディング・ライトがONの状態で霧の層に突入し、機外の視覚的補助目標を見失ったため、IIMC(inadvertent instrument meteorological conditions, 予期していなかった天候急変等による計器飛行状態)に対する適切な対応ができなかった、と結論付けた。また、パイロット間の意思疎通が不十分であり、PCが飛行場に戻ろうとした際にIIMCに入ったことを宣言しなかったため、PIは事態の深刻さを認識できていなかった、と付け加えた。

出典:Flightfax, No.47 March 2015, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    少し古い記事ですが、離陸直後にIIMCに遭遇するというのは珍しいのではないかと思いましたので、翻訳してみました。考察に記載されている「ランディング・ライトがONの状態」であった理由がわからないのですが、霧の中で空間識失調に陥りやすくなった要因になったかも知れません。