AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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UH-60Lの悪天候(マイクロバースト)による墜落

教官操縦士が操縦するUH-60Lが駐機位置までホバリングでタクシー移動中、予報されていなかった、降雨を伴うマイクロバーストに遭遇した。当該機は、降下しながら左に旋転し、制御不能となって墜落した。機体は大破し、搭乗員が軽傷を負った。

飛行の経過

事故機は、教育開始直後の学生に対する訓練を実施中であった。パイロットは、POI(program of instruction, 教授計画)に示された手順に従い、訓練飛行ブリーフィング、戦闘予行および学生による日々ブリーフィングなどを実施した。その後、飛行前ブリーフィングが適切に実施され、降雨環境下における訓練の実施が承認された。パイロットが機体の位置に前進し、飛行前点検を行っている間に、飛行場から15海マイル(約28キロメートル)圏内での落雷に関する気象警報が発せられた。

訓練飛行の前半は、問題なく終了した。副操縦士は、事故発生時に副操縦士として操縦していたパイロットに交代した。ホバリングおよび傾斜地着陸を訓練するため、飛行場に帰投していたところ、最大38ノット(毎秒20メートル)の風を伴う雷雨に関し、新たな気象警報が発せられた。その後まもなくして、当該警報を反映した気象予報の修正が行われた。

飛行場でホバリングおよび傾斜地着陸訓練を行っていた事故機は、激しい雨のため、着陸待機を余儀なくされた。激しい雨が過ぎ去ったため、駐機位置までホバリングして移動を開始したが、マイクロバーストが発生しやすい気象条件が生じていた。激しい下降気流により、急激に降下しながら旋転に入り、パイロットがペダルを完全に踏み込んでも旋転を止めることができなかった。機体は地面に激突してクラスAの損傷が発生し、搭乗員は軽傷を負った。

搭乗員

操縦教官の総飛行時間は6,900時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は337時間であった。副操縦士の総飛行時間は101時間であり、そのうち当該機種での飛行時間は1時間であった。

考 察

当該機は、降雨環境下における飛行を予測したブリーフィングを行っていた。飛行訓練を開始した後、天候がさらに悪化した。駐機位置に戻る最中に、マイクロバーストが発生して、その突風が機体に大きく作用した。操縦していた教官操縦士は、ペダルを一杯に踏み込んだものの、機体の制御を回復することができなかった。

任務遂行中の天候急変に遭遇したことのある、いかに経験豊富なパイロットであっても、その状況判断能力には限界がある。事故機のパイロットは、降雨環境下における飛行に関して承認を受けていたものの、気象が「ただの雨」から劇的に変化した場合においても任務を継続できるという裁量権を与えられていたわけではない。(学校教育および部隊訓練のいずれにおいても)教官操縦士は、飛行訓練を積極的に実施して、学生の技量向上に努めなければならないが、だからと言って、飛行前ブリーフィングにおいて想定されていた範囲を逸脱することが許されるわけではない。事故発生当時は、降雨から激しい雷雨へと気象が変化し、マイクロバーストが発生しやすくなっていたのである。

部隊における安全教育においては、ダイナミック・リブリーフィング(弾力的な再ブリーフィング)の必要性を認識させることが重要である。教育機関および飛行部隊の教官操縦士および機長は、ブリーフィングで想定していた飛行、飛行環境および任務から変化が生じた場合には、このダイナミック・リブリーフィングを活用するように着意しなければならない。本事故の場合、気象の変化に応じたダイナミック・リブリーフィングを行っていれば、指揮官によるリスクの再認識、もしくは教官操縦士に対する任務の修正、中止または継続に関する決心の援助ができたはずなのである。

ブリーフィング終了後に状況が変化した場合には、ダイナミック・リブリーフィングを活用し、じ後の行動に関する状況判断および決心を、それらの権限を有する指揮官が行えるようにしなければならない。 これは、機長、副操縦士および教官操縦士の誰もが共通して認識すべき事項である。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年02月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    ダイナミック・リブリーフィング(dynamic re-briefing)の訳語に適切なものが思いつきませんでした。もし、ご存じの方がいらっしゃいましたら教えていただけると助かります。

  2. 管理人 より:

    「当該機種での飛行時間」という訳語の原文は、「MTDS」です。
    この頭字語は、「Mission, Type, Design, Series」である、とFlightfax編集部から回答を得ていました。
    この記事を翻訳するまでは、この用語を「部隊における飛行時間」と訳していました。
    ところが、今回の教官操縦士のそれがあまりにも少ないため、ひょっとすると「Mission Training through Distributed Simulation」の意味ではないかと思い、あらためてFlightfax編集部に確認をしました。
    その結果、次のような回答を得ました。
    「The pilot probably switched aircraft he was flying, so in the one in the mishap he would have fewer hours. Possibly he also may of flown multiple aircraft. For instance maybe he had 337 in the helicopter H-60, and the other 6,000 and some in a fixed wing and/or other helicopters.」
    ということで、「MTDS」は、「当該機種での飛行時間」と訳すことにし、過去の記事も修正しました。