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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-UH-60Lでの空間識失調

当該機は、IFR(instrument flight rules, 計器飛行方式)で飛行中、燃料補給のため、ある飛行場の進入管制空域に入ろうとしていた。当該UH-60Lの搭乗員は、ILS(計器着陸装置)によるRWY 18Lへのレーダー誘導を要求し承諾された。

ILS進入のため高度を下げ始めた時点では、まだIMC(instrument meteorological condition, 計器気象状態 )とはなっていなかった。搭乗員は、進入管制官から、平均海面高度(mean sea level, MSL) 4,000 フィートから 3,000 フィートまで降下するように指示された。進入管制官が降下しながら左に270度旋回するように指示した時、当該機は雲に突入した。

管制官のディスプレイに低高度警報が表示されたのは、その直後のことであった。無線連絡を複数回試みたが応答がなく、当該機は、そのまま飛行場北東の地上に墜落した。

飛行の経過

事故発生当日、搭乗員は、予定されていたIFR飛行訓練のため0530時に集合を完了した。その後、飛行計画の最終確認および機体の飛行前点検を実施した。飛行前点検において、整備員に対して何か異状があったとの通報はなかった。事故機の訓練任務は、任務担当指揮官(mission briefing officer, MBO)から電話で低リスクとして説明を受け、指揮官からの口頭命令により最終任務承認権者の承認を得た。

機長は左側の座席に搭乗し、副操縦士は右側の座席に搭乗した。クルーチーフは、搭乗していなかった。0721、搭乗員は運航指揮所に離陸したことを報告した。0841、予定されていた最初の燃料補給点で給油を行ったのち、再度離陸した。1036、経由地として計画されていた飛行場に着陸し、約3時間地上で待機したのち、1335に離陸して所属駐屯地への帰投を開始した。1434、運航指揮所への最後の通報を実施した。その時点では、帰投経路上の燃料補給予定地点だった当該飛行場の南50マイルを飛行中であった。

搭乗員の練度

事故機の機長の飛行時間は1,287時間で、そのうち1,188時間がUH-60Lによる飛行、554時間が機長としての飛行であった。副操縦士の飛行時間は1,120時間で、そのうち1,020時間がUH-60Lによる飛行であった。

考 察

事故機の搭乗員は、降下しながら左旋回を行っていた最中に雲に突入し、空間識失調に陥って機体姿勢を回復できなくなったものと推定される。

TC3-04.93によれば、空間識失調とは、パイロットが垂直方向および地表面に対する位置、姿勢、または運動を誤認識することと定義されている。また、空間識失調のリスクを軽減するためには、任務開始前の総合的な計画の立案および徹底的な搭乗員ブリーフィングの実施により、危険を回避し、または迅速かつ連携された是正措置を行えるようにすることが重要であると述べられている。任務前の計画は、タスク飽和のリスクを軽減すること、有視界飛行から計器飛行への移行点を予測すること、および経路間の気象条件の変化に関する気象予報を分析することなどを重視して行わなければならない。

また、機種別の搭乗員訓練マニュアル (aircrew training manuals, ATM)に記載されている異常姿勢からの回復要領を理解し、実行することが重要である。UH60の搭乗員訓練マニュアルのタスク1182には、航空機の状態を把握したうえで、次の回復手順を遅滞なく実施するように示されている。

(1) 姿勢 – 姿勢指示器を水平に保つ

(2) 機首方位 – 機首方位を維持する(方向変換は、既知の障害物を避ける場合のみに限定する)

(3) トルク – 必要に応じてトルクを調整する

(4) トリム – 必要に応じて機体姿勢をトリムする

(5) 対気速度 – 必要に応じて対気速度を調整する

機体の制御は、他のいかなる操作よりも優先することを忘れてはならない。墜落を回避するためには、上記の手順を直ちに開始することが何よりも重要である。練成訓練においては、シミュレーターおよび定期的な実機による訓練により、本タスクおよびその他の計器飛行関連タスクへの習熟度の維持に努めなければならない。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2023年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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